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【大阪街歩き】~第8回・靭公園~

はじめに


大阪検定2級も取った「大阪地理マニア」の僕が、大阪の街について解説する企画。
第8回目は、うつぼ 公園」です。

いや~この企画、めちゃくちゃ久しぶりです。
会う人何人かに、「おもしろかったわ~」「大正の回良かったわ~」などのお言葉を頂いていたので、「また書かなあかんな~」と思いながら、なんやかんや半年の月日が経ってしまいました。

調べ始めるとなかなかの労力を要するので、若干腰が重くなっていましたが、ここからまたちょこちょこ書いていけたらと思います。
街歩きファンの方、お待たせしました。お待たせしすぎたかも知れまへん(大阪出身の村西とおる)。


以前知り合いがDMで、「引っ越しを考えてるねんけど、靭公園ってどんな感じ?よかったら記事書いてほしい!」と送ってきました。
靭公園は、今の仕事場の通り道ですし、公園付近のお店も何軒か知っているので、次書くなら靭公園だと決めていました。

僕が思うに靭公園は、大都市・大阪の中では、一番都会にある公園です。
今回はそんな、地図で見ると一目瞭然な違和感を感じる靭公園の歴史や、おすすめポイントなどを紹介していけたらと思います!


靭公園の歴史、地名の由来


靭公園という名前やその存在は、他府県の観光客には馴染みがあまりないと思います。
僕も大阪に住んでしばらくは、難波周辺しか行動範囲ではなかったので、一体どの辺にあるのかもわかっていませんでした。

まあそれもそのはず。ずばり観光地ではないからです。
大阪市西区の北側に位置する靭公園は、東西に長細くまたがっていて、東はオフィス街の四ツ橋筋からはじまり、西に行くにつれ住宅地に囲まれ、なにわ筋をはさんで、あみだ池筋にぶち当たる全長約800mの都市公園です。

周辺地図


電車での最寄りは、大阪メトロ・四つ橋線「肥後橋」駅か、「本町」駅。
もしくは中央線、千日前線の「阿波座」駅です。
徒歩だと駅からは若干歩く印象ですが、観光客やインバウンドは全くいません。
子供連れのママや、昼休みのサラリーマン、健康志向のランナーなどが思い思いに利用している、落ち着いた空間です。

落ち着いた空間


公園周辺は西区の中でも、堀江や新町と同じくらい家賃の相場が高いです。
やはり都会のど真ん中にあるオアシスを求めてなのか、それなりのクラスのファミリー層が多く住む印象です。
なので街全体もきれいで、治安もいいです。
DMを送ってきた知り合いに対しての、「ええとこ住むやん」という返事も、市内に長く住んでいる者からしたら当然の反応です。


靭公園が大阪市に管理され、公園として正式に開園したのは、1955年(昭和30年)。
ではそれ以前、この土地には一体何があったのでしょうか。


遡ること江戸時代。
現在の靭公園付近には、塩漬けした魚や干物、鰹節などを扱う「靭海産物市場」がありました。
他の地域から船で運ばれてきた海産物がここに集まり、町の人々に売られていたわけです。
そのため、現在はほぼほぼ埋め立てられましたが、周辺には人工の運河、いわゆる「堀川」がたくさんありました。
今も地名として、「京町堀」や「江戸堀」などが残っていますが、これはここに川があったことを意味しているんですね。おもろい。

改正摂州大坂之図。1836年(天保7年)。
京町堀川と海部堀かいふほり川の間が今の靭公園。
http://kouwan.pa.kkr.mlit.go.jp/kankyo-db/intro/detail/rekishi/detail_p07.aspx

1931年(昭和6年)に、大阪市中央卸売市場が出来るまで存在していた靭海産物市場ですが(ちなみに作ったのは第7代大阪市長關一せきはじめこちらでも紹介してます)、ここで気になるのは「靭(うつぼ)」という地名。
江戸時代より前の16世紀にはもう地名として存在していたようですが、なぜそう呼ぶようになったのでしょうか。


その昔、豊臣秀吉が家来を従えてこの周辺を巡回していた時に、市場で元気よく「やすい、やすい」という掛け声で魚を売る商人たちを見ました。
それに対し秀吉は、

「“やす”って、矢巣(矢を入れる道具。別名・靭)のことちゃうん?『うつぼ、うつぼ』って言うてるやんww」

と言ったそうです。

つまり秀吉のダジャレから生まれた地名なんですね。
当時の家来たちも「バリおもろいっすやん!」とかヨイショしてもうたんでしょうね。それからこの地を「靭」と言うようになったそうです。

矢を入れる道具。靭。
https://aucview.aucfan.com/yahoo/r1030939999/


先ほど書いたように、昭和になると中央卸売市場の開場があり、靭からは市場が無くなる訳ですが、その後起こるのが第二次世界大戦。
大阪大空襲により、一帯は焼け野原になりました。

戦後アメリカに占領され、GHQがこの土地を接収。そこから数年間は米軍専用の飛行場になるのです。
大阪の中心部に飛行場があれば、使い勝手もよく便利だったんでしょうね。
靭公園の特徴でもある長細さは、飛行場の敷地の名残です。

1948(昭和23)年の航空写真。
https://saiseiojisan.blog.fc2.com/blog-entry-1862.html

1952年(昭和27年)にサンフランシスコ平和条約が発効された後、この土地は晴れて大阪市の持ち物になります。
区画整理を終えた1955年(昭和30年)にようやく、靭公園が開園するのです。

時系列順にまとめると、

市場→飛行場→公園

という流れですね。

市民から愛される憩いの場は、かつては活気ある魚市場と、戦闘機が発着する飛行場でした。
今と比べると想像もつかない歴史を歩んできたんですね。そう考えるとおもしろいです。


靭公園のおすすめポイント

◎自然を感じられる

当たり前っちゃ当たり前ですよね。
でも、緑豊かで木々にあふれた公園は、オフィス街や高層マンションが立ち並ぶエリアに突如あらわれるので、どこかお得感があります。

東園内。飛行場の滑走路だった場所
有名なリアルすぎる銅像

靭公園は、間をなにわ筋が通っていて、そこを中心に東園と西園に分かれています。
四ツ橋筋となにわ筋とあみだ池筋の3本の道が公園に通っているので、入る場所によって、それぞれ違う印象を与えられるのも魅力の一つです。

公園真ん中を縦断するなにわ筋

東園にはバラ園があり、シーズンにはたくさんの家族連れなどでにぎわいます。
あと行ったことはないですが、大阪科学技術館も東園に隣接しています。明治に活躍した実業家・五代友厚の屋敷跡に建つこの施設は、無料で展示や体験を楽しめるので興味のある方はぜひ。

バラ園
大阪科学技術館


◎テニスの聖地

西園には、靭テニスセンターがあります。

うつぼテニスセンター

センターコートは収容人数5000人の国際試合にも使われる立派な会場です。もちろん一般の方も利用できるエリアもあり、コートは14面もあります。
大坂なおみ選手が大阪に住んでいた幼少期に、お父さんお姉さんとここで練習していたそうです。

一般利用可能なテニスコート

世界的プレイヤーともゆかりのある靭テニスセンターは、まさに「大阪テニス界の聖地」です。

僕テニスやったことないんですよね。一回やってみたいです。
ちなみにマリオテニスはめっちゃ強いです。ワルイージ使います。

西園の入り口
楠がご神体の楠永神社


◎お洒落な飲食店が多い

このエリアも飲食店が多く、カフェ、レストラン、パン屋とあらゆる業態が揃っています。
会社や営業所も多いので、ビジネスパーソン向けにランチも強いです。

公園の近く、そして閑静な住宅街なので、インバウンドは全然いません。
この辺は本当に落ち着いた雰囲気なので、ゆっくり回れると思います。

そんな靭公園周辺で、僕が行ったことのある飲食店を紹介します!



●あきらカレー

京町堀にあるスパイス炒飯と出汁カレーのお店です。
もともと日本酒居酒屋を間借りしていた店舗で出されるカレーは、週替わりの一種類のみ。カツオやホタテなどの魚介を使った創作感あふれるカレーは絶品です。


ON THE STREET CORNER SANDWICHSTORE

こちらも京町堀にあるサンドイッチ屋さん。
アメリカンなフードだけではなく、かわいい古着や雑貨なども店内に陳列されていたり、店名の「ON THE STREET CORNER」は、山下達郎のアルバムの名前から引用されているなど、シティボーイにはたまらない遊び心満載のお店です。ちなみにペットの入店可だそうです。


●真怡記

本当に目の前が靭公園の真怡記(しんたいき)は、地元に根付いた街中華。
一般的な中華料理だけではなく、割と台湾寄りの雰囲気で、中でもルーロー飯は、ちょうどいい甘さのお肉で美味しかったことを記憶しています。
他にも、炒飯やあんかけ焼きそばも名物だそう。ランチでがっつりお腹を満たしたい方におススメです。


●ciucate

靭公園の少し北側に位置する西船場公園の目の前にある、カジュアルなビストロ、ciucate(チュカテ)。
お洒落な店内で楽しめる、種類が豊富なイタリア料理はどれも絶品で、生ハムやパスタも美味しかったですし、個人的にはミートパイが最高でした。
気軽に友達とでもいいですし、大切な人とディナーで訪れてみてはいかがでしょうか。


おわりに


ということで、今回は靭公園の紹介をしました。
前回が大正で、「区」全体の解説でしたが、こういうスポットに絞って紹介するのも調べてみて楽しかったです。

個人的には、「靭」という名前の由来は、ウツボの形からきているものだと思い込んでいたので、秀吉きっかけということを知れて勉強になりました。

大阪観光はガヤガヤしたところが多いので、そっちに疲れた方は、落ち着いた雰囲気の靭公園まで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


気が向いたらまた他の街も書きます!
それでは、また!


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