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揺さぶられ・3選

最近読んだ本・観た映画・ドラマの中から、がつんときた作品の記録。

悶々と考えたり、我が身をふり返ってみたり、ただただショックを受けたり・・・とにかく揺さぶられました。以下、その3作です。


直木賞とちがって芥川賞受賞作にはあんまり惹かれることはないけど(どうせ読んでもよくわからんやろなと思ってしまう)、これは読まずにおれませんでした。買ったのは文藝春秋9月号ですが。
多くの人が抱くだろう感想と、まあ一緒です。自分はあまりに無知で無自覚だったし、恥は承知で「マチズモ」って言葉も知りませんでした。
想像力が足りなさすぎる。つまりは思いやりに欠けていて、思考回路が傲慢そのもの。それでいて得意気に「読書好き」を自認して「紙媒体こそ至高」とほざいていたものだから、著者にとってまさに憎悪の対象だったと思います。だからといってこれからも紙の本を好んで読むことは変わらないけど、電子書籍やオーディオブックの利便性や需要、読書するにはその選択肢しかない人がいることを理解できてよかった。「気づきを得た」って表現も薄っぺらくはありますが、実際そんなかんじ。
主人公の抱える感情のほか、その行動や願望についても足りない想像力をめぐらせてみたけど、理解するには及ばず。理解する必要もないし、理解できるようなことでもないし、理解しようとすることさえおこがましいのかもしれませんが。
それでも読んでよかったし、知れてよかったです。



WOWOWで放送してたのを録画したっきり、HDDで放置してた話題作。
録画したものの、重そうな内容から観るタイミングを図ってたら2023年10月になってました。
思い立って観てみると、想像してたよりもテンポよくストーリーは進み、途中少しも眠くなることもないまま観終えることができました。
努力でもお金でも気の持ちようでもどうにもできない、圧倒的な無力感と絶望に打ちひしがれる主人公の姿がつらかったです。
ただ、「マイノリティ」「LGBTQ」「社会的弱者」といったカテゴリーに主人公を当てはめて同情することは簡単だし、実際わたしも同情したけど、この映画が伝えたいことの本質はそこじゃないんだろうなってことはわかる。
人と人が心を近づけていくことの過程が美しかったです。
悲しさも苦しさも、バレエの踊りとなって昇華されていくような希望が感じられました。



もう何回観たことか。20回は優に観てるな。
この夏、関西テレビで再放送されてたのを全話録画してて、ひさしぶりに一気に観ました。
もう名作が過ぎる。名作中の名作。キングオブ名作。
再放送なもんでカットされてるシーンが多いのが残念でしたが、それでもなお揺るがない名作っぷり。
羨望、嫉妬、打算、欲望、親愛、憎悪が渦巻くどろっどろな人間模様が繰り広げられた後、最後の最後に見せられた揺るぎない信頼関係。
善悪の二面性だけでは表せられない人間の感情や行動がほんとうによく散りばめられていて、こんなドラマをよくぞ作ってくれたと原作者の山崎豊子さんにもフジテレビにも感謝します。
原作にはなかった製薬会社の社員・林田加奈子のエピソードも、終末医療といった現代の問題として無理なくストーリーに落とし込まれていたし、木村多江さんの演技は圧巻。
アウシュビッツのシーンは、ちょっと言葉にできない。

大河内教授は、わたしの中で実写化忠実度ナンバーワン。

鶴のような痩躯、尖った鷲鼻、完璧です。
品川徹さんをキャスティングした人に拍手を送りたい。
忠実度では大河内教授がダントツですが、ほぼすべてのキャストがよかった。原作の財前に風貌が近いのは田宮次郎の方だけど、唐沢寿明が演じた財前だからこそここまで入り込めたと思う。最初に田宮版を観てたらまた違ったのかもしれないけど。。

エンディングの『アメイジング・グレイス』も、財前が鼻歌で歌う『タンホイザー序曲』も、不穏なBGMも、まさに「白い巨塔」が浮かび上がるタイトルバックも最高。

これから先、まだまだ何回も観返すことと思います。
実家にあるDVDも再放送の録画だから、ほぼ同じシーンがカットされてるのが悲しい。病床の財前と義父・又一のやり取りとか、すごく好きなシーンなのに削られてる。なんでや。
Amazonの欲しいものリストに長年鎮座してるDVD BOX、わたしはいつになったら購入できるのだろうか。。。



『白い巨塔』だけ明らかに熱量がちがってますが、3作品どれにも胸を打たれ、心も頭も揺さぶられ、何かの拍子にふっと思い出してはいろいろと自分なりに思考を巡らせてみたりしてます。

何かを考えるときも判断するときも、自分なりの基準や価値観をもつことは大切だけど、それだけに囚われない柔軟な思考回路や想像力を、これからもっともっと養っていきたいと思います。

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