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7月23日(土)晴

朝、いつもと変わらず、電車で会社に向かう。会社について、鍵を開けようとしたら、間違って車の鍵を持ってきたことに気づく。
他の社員が出勤するまで待ちぼうけ。
無事に開錠し、午前の仕事を終え、昼食を食べて公園を散歩してたら、親父が入院している病院から携帯に電話。血圧が低下してきて、手足も冷たくなってきているので、来れたらすぐに来て欲しいとのこと。

いよいよ、その時が来た、ということらしいが、認めたくない私は、どうせまた少し調子が悪くなっても、また回復し、まだまだ逝くはずはない、と思い込んでいた、というか、思い込みたかった。
だから、あえて急ぐこともせず、会社に一旦戻って早退を申請し、電車で一旦自宅に戻った。電車を待ってる間、「ひよっとしてタクシーで飛ばす方がいいのか?」とも考えたが、実家のお袋を迎えにいくことを考えて、あえて一度自宅に戻ることにした。幸い、妻と娘の会社が休みだったので二人を乗せて実家に向かった。
車を運転しようと乗り込んだ時、ひょっとして今朝、間違えて車の鍵をもたせたのは親父だったのかなぁと思い至った。今日は体調悪いから会社じゃなく俺に会いに来いと、会社の鍵の代わりに車の鍵をもたせたのだと思った。

そして自宅で不安そうにしていた母親と落ち合い、病院に急いだ。
蝉が鳴き乱れる病院の駐車場に車を停めて入る。検温システムに娘が異常反応。炎天下の中、受付に来たばかりの人は体温が上昇し、異常を示すそうだ。あらためて手首で検温したら正常だったので、4人とも病院に入れた。

親父の容体は変わらずで、好ましくない状況らしい。面会できるのは2人だけとのことで、母親と私が父親が入院している南向きの明るい病室に通される。消毒、フェイスガードも装着して親父と対面。目線はすでに虚で、呼吸もわずか。血圧が低すぎて機械からエラー音が断続的に流れる。それでも温もりが残る親父の手を取り、目を覗き込みながら話かける。親父の右目に涙があふれている。意識がありながら、話すことも、体を動かすことも、目玉を動かすことすらできない中で、最低限の意思表現が落涙だと知る。

看護師さんから、後数日しか残されていない、と聞かされる。コロナ感染予防のため、ほんの数分だけだったがリスクを冒してでも生きている親父に合わせてくれた病院には感謝してもしきれない。

その日は、娘の発熱がやまず、帰りに別の病院の発熱外来を受けさせようとしたが、すでに15時を回っており、検査ができない状態に悶々としつつ帰宅した。


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