見出し画像

魔法のかかったメロンソーダ

炭酸が苦手だ。
「パチパチッ」とはじける炭酸の痛みに、どうしても口の中が耐えられない。

小さいときからずっとそうだった。
地元の公民館にある自動販売機でカルピスに似たジュースがあり、炭酸入りと炭酸ナシの2種類が売ってあった。
ある日、いつもどおり炭酸ナシを買ったのだが、ひとくち飲むと口の中いっぱいに「パチパチッ」と炭酸がはじけた。おそらく業者の手違いで、逆に補充されていたのだろう。
突然の痛みにびっくりして、思わず車の中にジュースをこぼしてしまった。遅れて涙が出る。そして「どうして!!」と怒りがこみ上げた。

それ以来、公民館の自販機には近寄っていない。もはやトラウマのようなものなので、コーラも三ツ矢サイダーも怖くて飲んだことがない。
炭酸とは無縁の生活を送っているのである。

では普段どんな生活を送っているのかというと、もっぱらお茶かコーヒーを飲みながらYouTubeでゲーム実況を見ている。
最近はナポリの男たちという4人組グループが特に好きで、彼らのゲーム実況が毎日の楽しみだ。仕事が終わって家に帰り、ユーモアあふれる4人の動画を見ている時間が、なによりの至福である。
そんなナポリが、昨年の9月半ばから10月にかけて「喫茶ナポリ店」を開催してくれた。

「さよなら絶望先生」でおなじみ、久米田康治先生の描きおろしイラスト

これがまた驚くほどチケットが取れなかった。有料会員なのに最速先行に落ち、その次も、さらにその次も落選。後半はもう当たる気がしなかった。
ラストチャンスで兄が奇跡的にチケットを取ってくれたおかげで、初めてイベントに参加することができた。ちなみに兄もナポリファンである。兄よ、本当にありがとう。

オタクメモ:どの界隈もチケットは争奪戦

メニューはメンバー考案のものになっており、話し合いの末、注文するものをある程度選んでおくことになった。
わたしが食べたかったのはhacchi満足サラダと野タオルケーキ。メンバーのひとり、hacchiさんに関するメニューだ。好き嫌いの多いわたしにとって、このふたつだけは食べられる確証のあるメニューだった。

おむすびみたいなお皿がもうかわいいね。
友達から「これナニ?!」と散々言われたけどそんなにおかしいですか?


お次は飲み物。かわいいメニューがありまして。

メンバーカラーが決まっています。

メンバーモチーフのキャラがアイスになって乗っかってる!かわいい!これは絶対に頼みたい!!写真も撮りたい!!!

ソーダ。炭酸入り。


最悪である。

いい具合にhacchiさんメニューになったのでhacchiさんのを飲みたいが、なんせメロン味。果物そのものも、メロン味の食べ物も苦手だ。
ニガテ×ニガテ=ニガテの二乗。そんな二乗もしている飲み物なんか、手もつけたことがない。頼むのやめるか……と諦めていたそのとき、”心の中のわたし”が異議を申し立てる。

これだけhacchiさんでメニューそろえておいて頼まないなんて、そんなことしていいの?

いやでも炭酸苦手だし、それにサラダにメロンソーダなんて合わない。湯吞みウーロン茶にしよう。

これです。
それでいいの?湯吞みはグッズで売ってるし、家でいつだってできるよ?

でも炭酸苦手だし!!!なんならさくらんぼも食べられない!!!!!

意外と美味しいかもしれないよ?

でもさ~~~~!!!!

ここまできたらhacchiさんメニューで揃えたいやろがい!!!!!

というわけで、人生で初めてメロンソーダを飲みました。
さくらんぼは兄が食べてくれました。チケットも取ってくれるし、苦手なものも食べてくれるし、救世主である。

ラバーマスコット:兄私物  撮影:兄

なんと飲み切りました。一口目なんて「あ、意外とおいしい」と言ってしまうほど。想像していたよりは微炭酸だったし、そこまでメロンが強くなかったような気がする。本当によかった。

あんなに苦手で飲みたくない、飲めるわけないと思っていたのに。
たぶん、推しの魔法がかかっていたんだろうな。
推しマジックで補正されて、想像していたより飲みやすくなっていたのだろう。

それ以来炭酸は飲んでいない。
意外とおいしかったけれど、やっぱり「パチパチッ」は好きではなかった。
でもあの日、メロンソーダを頼んでよかった。子供のころの痛々しい思い出が、少し浄化されたような気がする。
嫌いなものって、たいていは思い込みなのかもしれない。相変わらず苦手なものが多い私だけど、少しの勇気を持って「えいっ!」とチャレンジしてみようかなと思えた、そんな出来事でした。

ありがとう、ナポリの男たち。

この記事が参加している募集

#イベントレポ

26,323件

#最近の学び

181,973件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?