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【ライブレポ】BLUES DRIVERS IN LEMON SOUR DAYS 【堀越颯太 宍戸翼 菊池遼】_20221212

宍戸翼(The Cheserasera)と堀越颯太(KAKASHI)による弾き語りCDリリースイベント「BLUES DRIVERS IN LEMON SOUR DAYS」千葉公演が、12月12日、千葉LOOKにて開催された。

本イベントは千葉公演と群馬公演(高崎RK LOOF)の2公演の開催であったが、今回は初日の千葉LOOKでの公演をレポートする。

◆菊池遼 (the quiet room)

まず一番手は、GUESTとして迎えられたthe quiet roomの菊池からスタート。
思っていたよりもダークというかマイナーコードな感じの「アイロニー」から、普段のバンドの明るい雰囲気とは少し異なる印象で始まった。

続く2曲目「東京」も落ち着いたトーンの楽曲ながらも、途中に刻むリズムが良いアクセントになっていて、寂しさだけでなく、あたたかさがあるのが良い。赤い照明が曲に合っていた。

最初のMCでは、菊池はすごくにこやかに今日楽しみにしてたことが溢れるような笑顔で、「リリースおめでとうございます!」と2人の音源リリースを祝福。「颯太のは先にもらっていて、宍戸さんのは今日もらった」とのこと。仲の良さが序盤から漏れ、ほっこり。

カバー曲「海へ行かないか」(Fozztone)では、菊池の新たな歌声を聴けた気がして、またクワルーの曲とは別の深さを感じる。
リバーブも前の曲より深めにかかってる気がして、とても心地よかった。
好きな曲だと言っていたから、普段からよくカバーしてるのだろう。歌い込んで、自分なりの表現にするまで持ってきていた。もう一回聴きたい。

「最近バンドでたくさんのライブをしていて、ありがたいけれど、ときに歌うのがしんどいこともある。でも、みんなが仕事行きたくない時に背中を押してくれる曲になれば良いなと思って作った曲です。颯太がこの曲1番好きって言ってくれたので、今日は颯太に捧げます。」と言って始まった「You」は、とても明るくリズミカルで元気をもらえた。
〈考えなくていいよ 君は風を追って 風を追って〉という歌詞が、そのまま走り続けてOKだよと、自然体の自分を応援してもらえている感じ。
イエローやグリーンの照明が、エネルギッシュでここまでの曲とは系統が違くてライブにメリハリが出ていた。

「クワルーのお客さんはカップルが多いみたいと楽屋で話したら、KAKASHIもカップルで来てもらいたいって言ってた。カップルで手繋ぎながら観てほしいらしいよ。」という話があって、想像するとなかなか面白い光景なのでこれからKAKASHIのライブ観るときは、周りにカップルがいないか注視しようと思う。

SNSでアンケート募った中で最近やれていない曲をやるということで選曲されたのは「夜中の電話」で、とても切ない歌詞と菊池の甘さのある少し語尾が掠れるような歌い方がマッチして、よりしんみりとした。

気の利いたこと言いたいけど…と一瞬不安そうにつぶやきながらも、「明日は寒いみたいなので、冷え性なのでしっかり防寒していきます!皆さんも今日も寒いので気をつけてくださいね。と観客を気遣いながらも、続く2人のために最後会場をあたためたいと思います」というなんとも完璧なコメントで締めくくり、最後の曲へ。

観客の手拍子付きで、アップテンポな「シュガータイム」披露し、途中でテンポを上げながら優しくも芯のある歌で会場をぽかぽかにして終了。

◆堀越颯太(KAKASHI)

サウンドチェックを「最後の恋」(The Cheserasera)でやってくれる時点でもう愛に溢れている堀越。

出だしは自身のバンドKAKASHIのライブ定番曲「違うんじゃないか」のワンコーラスで、そのままずっと聴いていたいくらいに熱い歌声。3人の中で唯一スタンディングで弾き語りなので、歌声が勢いよく響き渡る。

「ゆっくりでもなんでも好きなように楽しんで、でもモッシュとダイブは禁止でお願いします!」というジョークで明るくスタート。

弾き語りCDに入っている「home town」では、初めて聴く人がおそらく多い中でも、観客みんなで手拍子しながら楽しめるのはまさにハッピーの権化という感じで、聴きながら自然と笑顔になれる。

「新しいよりも、懐かしい感覚で作りました。紙のジャケットにCDを詰める作業していて、バンド始めた頃を思い出してさ。自力で作って、自力で売るところに美しさを感じます。」という堀越のMCの言葉には、彼の魅力であるその泥臭さが出ていてよかった。

続く「風景」では、歩くリズムのような素朴さのあるギター演奏で始まり、だんだんと盛り上がるのが、景色の移り変わりを感じる。〈当たり前じゃないこの毎日が 誰かのおかげである事を忘れないでいよう〉普段自分が思っていたとしても、なかなか言えないようなストレートな言葉たちを、こうして音楽にのせて届けてくれる意味はとても大きい。

「られる」の歌詞も不器用ながらも懸命に、目の前の大切なものを抱きしめようというメッセージが、それを体現しているような堀越から歌われていくことによりスッと染み込んでいく。

すごく良いお話をしてる中で、カタコトになってしまう様子がとてもチャーミングで、真剣な時にも笑いも忘れないところが優しさだ。いま自分からは離れてしまった人もどこかで元気でいたらいいなって、純粋に思えることがまっすぐで眩しい。「会えなくても思えるように、思えなくても感じられるように、なるべくそこに音楽があればいいな。」という言葉が素敵で、彼が言うからこそ素直に受け取れる部分が大きいと思った。

語り口調の楽曲「くだらない話」は新鮮で、ゆっくり話しかけながら、あたたかい毛布をかけてくれているようで、なんだかすごく安心感がある。

「俺友達が少なくて、宍戸も菊池も本気で友達だと思ってるけど、そう思うほど、向こうはどう思っているんだろうって。友達だけじゃなくて色んな人に俺は好きだけど向こうはどうだろうって思っちゃう。なるべく俺のこと信じてもらえるよう、なるべくあなたのこと信じていられるように。」という本音のMCは、私にすごく刺さった。

自分語りになってしまうが、10代の頃、友達とうまく付き合うことがすごく苦手で、今でもその時の記憶が蘇ってしまって不安になることがある。今は周りの人に恵まれていると自分は思っているけど、じゃあ相手はどう思っているんだろう、その思考に陥るとこわくなって止まらなくなってしまう。結局、自分自身が信じて生きていくしか解決策は無いと分かっていても、時に不安になる。そんな感情に、「愛なんて」という楽曲は寄り添ってくれる。

アルペジオが滑らかで、ギターとなめらかで優しい歌声が混ざり合って、心に深く響き、悩みながらも、まっすぐ伝えること、信じることをあきらめない堀越らしさの溢れたステージに目頭が熱くなった。

◆宍戸翼 (The Cheserasera)

トイレに行っているお客さんも気遣いながら、「最近寒すぎて身体がガチガチだから変な動きするかも」と愉快な一言でスタート。

「ひとりごと」は今回リリースされた弾き語りCDにも入っている曲で、2020年12月1日にリリースされた『Mouth to Mouth ep.』のリード曲でもあったから、この季節に聴くのがとてもしっくりくる。

「菊池くんが好きだと言ってくれた曲」ということで、2曲目は弾き語りのアレンジが光る「ファンファーレ」が、披露された。
ステージ袖で菊池が嬉しそうな表情で演奏を聴いている姿も、これまたエモい。

「ぼくの残高が四桁を切っていたころの歌です」と始まる「ロスタイムボーイ」はなんだか生々しさがあった。こちらも弾き語りCDに入っている楽曲。
この曲はギターが聴いてるだけで楽しくて忙しくて、独特の焦燥感を持って迫り来る感じが堪らない。

宍戸は今年を振り返りながら、「今年の初めに(ケセラを)活動休止したけど、来年の予定が立ってきて一月から練習を始めます。」という具体的な言葉を伝えた。まだそんなこと分からないような、活動休止した直後の時期からずっと弾き語りライブをするたびに「絶対またやりますんで」とファンに伝えてくれたことを思い出す。ファンとの約束は守るという覚悟、それを声に出してくれることでどれほどの安心をくれただろうか。こういうところが本当に魅力的で、応援したくなるというより、勝手にたくさん救われてしまうのだ。私は彼の生み出す音楽から一生離れられないなと、ライブに行くたびに思い知らされる。

「1人になって戦車から降りて戦う兵士みたいな気持ちになった。自分のスタンスをどうしていこうか、考えざるを得なくて、一年間集中して自分に向き合った。その中でひとつ、まる(。)を置こうと節目として音源を作りたかった。弾き語りの中で出会った人が持って帰れるよう、名詞のような一枚を作りました。」と、初の弾き語りCDへの思いを語り、ソロで作ってる曲もやりますと「LONLEY TOWN」に紡がれていく。

普段から音源でこの曲を聴いていても、ライブに慣れることはない。音源をライブハウスの最上のスピーカーで流した音と生歌で聴くとその迫力と、切実さとで自分の心も開放されていく。なんだか、こう、生きていると感情のままいることをセーブしてしまいがちなので、私には彼のライブに来て、感情的になってもいい瞬間があるということがすごく特別で必要なのだ。

「菊池くんはコーヒーが好きで、さっきもミルク入りのコーヒーをライブ中も飲んでいたみたいです。最近すごくがんばってるので菊池くんに向けて歌います。」ということでの「コーヒー」は、またまた愛情こもった選曲で、仲の良さを感じさせてほっこり。擦れるような裏声の響きが、ささくれだった心を宥めていく。

イントロに合わせて「今日は2人と一緒にいて優しい歌を歌いたいと思いました。」と言いながら「all my love」が始まるころには、しっとり優しい空気が千葉LOOKに充満していて、あぁ良い夜だなって思った。

一曲弾き語りを挟んでソロの曲やるのは、普段はソロ曲を連続でやることが多いから、新鮮さもあったし、3曲とも優しく沁みる楽曲なので、良い意味でマシマシのダメージくらった。

今日一緒にやった2人と自分を“不器用でも自分のできることを最大限にやっているいいメンバー”と嬉しそうに話す姿が素敵だし、やっぱりとても安心する。

本編最後は「Youth」というのも、これからの3人とお客さんの未来に対してのメッセージだろうなと思うとグッとくる。

アンコールでは、出てくるやいなや、小さいスケッチブックのようなものを持ってきて2/6の追加公演を発表。今度はゲストとしてPOETASTERの高橋大樹が一緒ということで、仲良しメンバーなのは同じだが、また雰囲気が少し変わるだろうからそこに注目して楽しみたい。

最後の曲は、ライブハウスに向けた歌ということで「物語はいつも」をギターを軽快なリズムでかき鳴らす。裏拍の手拍子がなかなか難しいので観客があきらめてフェードアウトしていくと「手拍子あきらめんなぁ~」と宍戸から喝が入り、再び大きな手拍子になるのが愉快だった。

この日はクリスマスの方が日程的には近かったが、ライブ全体的を通して年の瀬感というか、「みんな!今年一年ありがとう!マジでお疲れさま!」というようなお互いを労う優しい雰囲気が漂っていた気がする。この3人だから出せた空気なのだろう。少し早めの「よいお年を」が聞こえてくるライブハウスが、なんとも愛しくなる夜だった。

セットリスト

菊池遼

01. アイロニー
02. 東京
03. 海へ行かないか (Fozztone)
04.You
05.夜中の電話
06.シュガータイム

堀越颯太

01. 違うんじゃないか
02. home town
03. 風景
04. られる
05. くだらない話
06. 愛なんて

宍戸翼

01. ひとりごと
02. ファンファーレ
03. ロスタイムボーイ
04. LONELY TOWN
05. all my love
06. Youth
en. 物語はいつも

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