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渋谷区道に於ける自転車利用の現状と課題

はじめに

10月15日(木)~26日(月)にかけて渋谷区内の3カ所の区道において、自転車の利用状況ならびに道路の通行環境について調査を行いました。これは、令和2年4月現在の「渋谷区自転車活用推進計画」の効果や課題を検証し、渋谷を「安心・快適に自転車を利用できる街」にするため実施しました。さらに、街の人にもお話を伺い、自転車利用の問題点についても考察しました。

調査概要

渋谷区道3地点で朝と夕方、自転車の通行量、通行方法、道路の状況や特徴を調査しました。通行量は、車道を通行している台数、歩道を通行している台数、子供乗せ自転車(チャイルドシートがある自転車)の台数をそれぞれカウントしました。

調査結果と提案

調査場所①渋谷区道865号 原宿外苑中学校西交差点付近

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原宿駅から北に300mほどの場所で、車道は2車線あり比較的道幅が広いです。区道865号は渋谷区道で初めて自転車専用通行帯が設置され、多くの自転車が通行帯を走行していました。しかし、通行帯内に駐停車をしている車が多く、自転車が通行帯からはみ出して車を避ける場面が多く見受けられました。駐車を取り締まるため、定期的に警察がパトロールをしていました。子供を乗せた自転車は主に歩道を通行していました。

調査結果:10月15日(木) 8:00~9:00 
     通行台数34(うち車道通行25、歩道通行9、子供乗せ6)
     10月16日(金) 16:00~17:00
     通行台数114(うち車道通行65、歩道通行49、子供乗せ22)

提案
自転車専用通行帯が設けられている区間は原則駐車禁止です。駐車の取り締まりを強化していく必要があります。また、スピードが速い自転車も多いため、ヘルメットの着用を促すことが重要です。

調査場所②渋谷区道853号(井の頭通り) NHKセンター西門前交差点付近

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代々木公園、NHK放送センターの西側を南北に走る道路です。代々木公園交番前交差点~NHKセンター西門前交差点の区間はパーキングメーターが設置されており、自動車の走行車線は事実上1車線、自転車は車道を通行しづらい状況です。バスの本数も多いです。朝出勤時間に重なったせいか、歩道はNHKに向かう人で混雑しており、自転車も多く通行するため、歩行者と自転車との接触する恐れがあります。

調査結果:10月15日(木) 9:20~10:20
     通行台数118(うち車道通行30、歩道通行88、子供乗せ11)
     10月22日(木) 17:00~18:00
     通行台数131(うち車道通行54、歩道通行77、子供乗せ40)
提案
現時点では、パーキングメーターがあるため、自転車専用通行帯やナビラインを設置することはできません。警察等関係機関と協議をしたり、駐車スペースを確保したりする必要があります。朝夕は車、歩行者ともに多いため「押し歩きゾーン」の設定や、山手通りの自転車道の利用を呼び掛けることで一時的に安全が確保されるかもしれません。パーキングメーターを撤去することができれば、片側のみであれば自転車専用通行帯が設置できる余地はあると思われます。

調査場所③渋谷区道872号 (八幡通り) 代官山駅入口交差点付近

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車道は片側1車線ずつで車の通行量も多いため、ゆっくりと走る自転車が車道を通行するのは少し怖いかもしれません。道路沿いに商店が多いことや、細い路地との交差点があることなどから、自転車や歩行者が道路を横断し危険な場面も見られました。子供乗せ自転車、ロードバイクどちらも多いのが特徴です。ヘルメットを着用した走行車も多かったです。歩道は駐輪禁止区域に指定されていますが、放置自転車を数多く確認できました。

調査結果:10月26日(月) 8:00~9:00
     通行台数213(うち車道通行132、歩道通行81、子供乗せ55)
     10月26日(月) 17:45~18:45
     通行台数206(うち車道走行117、歩道走行89、子供乗せ21)
提案
道路幅を考慮すると、自転車専用通行帯を設置することは難しいかもしれません。しかし八幡通りは路上駐車をしている車が少なかったため、ナビラインを設置することで、自転車が走りやすいスペースをある程度確保できると考えられます。ただし、交通量が多い道路を中心にナビライン走行中の自転車と車が接触する事故も起きている事例もあるため、事故防止対策の検討をする必要があります。

代官山に暮らす方の声

①小2、年中のお子様がいる40代女性
Q.普段車道と歩道どちらを走行しますか?
A.子供を乗せているときは歩道をゆっくりと走ります。急いでいても無理はしないように、時間に余裕をもって家を出るようにしています。
Q.自転車で走行中、何か怖い体験をされたことはありますか?
A. 車道を走行する時、停まっている車があるので怖いです。タクシーのドアがスライドして開くようになったので少し安心しています。
Q. 代官山に公共駐輪場は必要だと思いますか?
A.代官山プラザ(マンション)のガードレールに駐輪している人がとても多いです。習い事や病院に行く人が停めているようで、マンションの管理者側も困っています。「ここに停めて!」といえる場所がほしいです。ひまわりガーデンもアリだと思います。また、川崎のように自転車停めてOKな店舗を募る取り組みもおもしろいと思います。

②まちづくり協議会(建築家)
Q.まちづくり協議会として、これまでも違法駐輪や自転車と歩行者の関係性について研究されてきている中で、区道(八幡通り)における自転車専用通行帯はどのように考えてますか?
A.八幡通りは自転車、車両の通行が多いが、直線道による視界が広がる中で、速度のヒエラルキーを考慮しなければいけないです。
また歩道も狭い、片側一車線と道路幅も限定されている厳しい条件の上ですが、「自転車が安全に走行できる手段」は早々に対処する必要はあります。
その対策として、「停車帯」をつくるべきか、まずは「ナビライン」を引くことで段階的な検証につなげたいです。
Q.代官山に公共駐輪場がありません。現在、東京都内の違法駐輪が第3位といわれております。
(一位:恵比寿、5位:幡ヶ谷、渋谷が3箇所もラインクイン)
違法駐輪に対してはどう感じてますか?また地域の声として必要だと感じてますか?
A.駐輪する人がどのような人達なのか、働きにくる人は長時間停車、買い物をする人などは短時間停車、それぞれのニーズに応じて、場所の選定や確保を検討する必要があります。代官山は小規模店舗も多く、店舗の軒先など、細かく停車できる場所をつくってみてはどうでしょうか?
今後の道路計画の中で、50平米の店舗に1台停車する場所を設ける!など、大規模店舗への条例だけではなく、車両を分散させて停車することも検証してみたいです。

道路調査・インタビューを通して

渋谷区では「渋谷区自転車活用推進計画」のもと、自転車を安全、快適に利用できるようさまざまな施策が行われていますが、まだまだ完全な整備が進められているとは言えません。特に自転車専用通行帯は区内で数カ所しか設置されていません。子供乗せ自転車をはじめ、多くの自転車利用者が、車道を走ることに恐怖心を抱いています。歩行者、自転車、車がそれぞれが安心して通行するためには、自転車専用通行帯の整備が不可欠です。そのため、幅員1.0m(1.5m以上が望ましい)が確保でき、その他条件が合えば積極的に整備していくべきだと思いました。また、ナビラインについても効果を疑問視する声もありますが、設置により車道を走行する自転車が増えたというデータもあります。歩行者が多い道路ではナビラインも整備し、歩行者との接触事故を防ぐ必要があります。さらに、公共の駐輪場を設けることで、自転車の利用が促進され、放置自転車の減少により、歩行者の通行スペースが確保されます。また「ナビライン」の役割と「自転車専用通行帯」の違いなど、今一度自転車走行の定義を明確にしていく必要があります。

編集後記

毎日何気なく利用する自転車ですが、道路に立って観察してみると、さまざまな危険が潜んでいることに気が付きました。特に渋谷では子供を乗せている自転車が多くいことから、より安心して走行できる環境の整備が必須だと考えました。歩道に立って流れゆく交通を観察したことがなかったのでとても新鮮で、毎回の調査がとても楽しかったです。自転車の利用がさらに普及し、社会生活の中に快適に走る自転車が浸透する街づくりにつながればうれしいです。(学生インターン岡田学時)

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