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【インタビューVo.2】「私には書くための特別な才能はない」人気ライター・佐藤友美さんが語る、チャンスを掴みとってきた理由とは

ライター、コラムニストとして活躍し、昨年『書く仕事がしたい』を上梓した佐藤友美(さとゆみ)さん。著書で「私自身には、書くための特別な才能はない」と語るさとゆみさんは、いかにして仕事が途切れない書き手になったのか。チャンスを掴みとるための行動や失敗したときの考え方について伺った。

佐藤友美さんプロフィール
ライター、コラムニスト。日本初のヘアライターとして人気を集め、現在ではビジネス書や実用書、ノンフィクションなどの執筆・構成を手掛ける書籍ライターとしても活躍中。また、書評・ライフスタイル分野のコラムも多数執筆している。自著に『書く仕事がしたい』のほか、『女の運命は髪で変わる』『道を継ぐ』など。近年は「さとゆみライティングゼミ」で専任講師を務め、受講希望者が殺到する人気講座となっている。
公式サイトTwitternote

入社3年目の転機。番組ADから念願のライターに転身

さとゆみさんは大学卒業後、テレビ制作会社に入社した。

「もともと新聞社と出版社を志望していたのですが、思うような結果が出なくて。あるときテレビ業界にも脚本やナレーション原稿を書く仕事があると知り、テレビの世界に飛び込むことにしたんです。でも、いざ入社してみたら仕事のほとんどが番組ADの業務でした」

書く仕事以外の任務に忙殺される日々。それでも必死に仕事に取り組んだ。しかし、そのうち体の変調を感じ始め、ついに体を壊し退職を決意する。 

「『今度こそ書く仕事に就こう!』と心に決め、ライターに転身することにしました」

入社3年目に訪れた転機だった。

 自分がしたいことを積極的に宣言してチャンスを掴んだ

「ライターになりたい」。退職後、さとゆみさんは周囲にそう宣言する。

「大学時代の友人が何人か出版社に勤めていたので、連絡を取り『ライターになるにはどうしたらいい?』と相談しました。すると、そのうちの1人から『売れっ子のライターさんがアシスタントを探しているから、そこで働いてみない?』と誘われたんです。すぐに会いに行き、そのライターさんの元で働くことになりました」

ここから、さとゆみさんのライターとしてのキャリアが始まった。ライターデビューを果たしてからも、ことあるごとに周囲に「仕事を増やしたい」と宣言している。

「撮影現場では編集者さんだけでなく、美容師さんやメイクさん、カメラマンさんなど、たくさんの人と会います。そこでいつも『ライターになったばかりなので、何か仕事があればよろしくお願いします』と話しかけていました。それがきっかけで『あの媒体でライターを探しているよ』『同期の子が別の雑誌をやっているからそこで書いてみない?』などと声がかかるようになったんです」

さとゆみさんは、自分がしたいことを周囲に積極的に宣言し、実現させてきた。このときに大きな力となったのが「知り合いの伝手」だ。

「仕事は常に『人』からやってきます。今すでに知っている人たちと誠実に関わることが、結果的に新たな仕事につながるのだと思います」と語る。

 「おせっかい」が思わぬ仕事を呼び込む

意図せずして仕事につながることも多いそうだ。さとゆみさんいわく、その理由は「おせっかいな性格にある」という。 

「昔、ある会社から、株主向けの報告書に載せる社長コメントを書いてほしいと頼まれました。インタビューに備えて過去の資料をすべて読んだのですが、その中に『この表現では株主にうまく伝わらないな』と思う部分があったんですよね。それが非常にもったいないと感じて。だからインタビューに行った際、広報の方に『社長コメント以外の部分もプロのライターに書いてもらったらどうでしょう?伝えたい内容が株主さんに、今以上に伝わるようになると思いますよ』とお話ししました」

希望があればライターを紹介すると伝え 、そのまま帰宅。しばらくすると、担当者から「さとゆみさんにお願いします」と連絡が来たのだという。

さとゆみさんは「自分を売り込んでいるという感覚はなくて、こうしたらもっと良くなるのにと思うことを伝えているだけ。私、おせっかいなんでしょうね」 と笑う。 

「文章の改善点に気がついたのに、それを相手に伝えないのは書くプロとして失礼だと思うんです。相手にとってプラスになるなら、私ではなくほかのライターさんが書いても構いません」

こうした行動を取れるのは、さとゆみさんの中に「仕事のゴールは好かれることではない」という考えがあるからだ。だからこそ、ライター以外の仕事にもおせっかいを焼くという。

「『こちらの写真を使用したほうがわかりやすいと思います』 『ほかの出版社でこんな事例があるらしいのでやってみませんか』と、こうすれば良いのにと思ったことはどんどん言っちゃうんですよ」

落ち込むことと反省することは別。因数分解して過去フォルダへ

良い仕事をするため、プロとして求められている以上の内容にも全力でぶつかるさとゆみさんだが、それゆえに「しょっちゅう失敗している」と明るく話す。

たとえば取材先で「ホームページのこの部分は、こう変えたほうが良いと思う」と社長に伝えたところ、ホームページを作った担当者が目の前にいた、なんてことがあるそうだ。相手のプライドを傷つけてしまったことは「完全に私の不徳の致すところ」と振り返る。

しかし、仕事の失敗はいつまでも引きずらない。 

「仕事の失敗は仕事が解決してくれると思っています。失敗をして落ち込んでも次の仕事は待ってくれません。 たとえ泣きそうでも、取材先で相手と言葉を交わすうちに自然と頭が切り替わっていることが多いですね」

とはいえ、落ち込むことと反省することは別。まずは「何がダメだったのかを書き出し、反省すべき点を1つずつ明らかにすることが大事」だという。

「必要以上に落ち込んでしまうのは、失敗の原因が漠然としているから。もしかしたら自分では解決できないことで落ち込んでいるかもしれませんよね。だからダメだった点を因数分解し、自分の失敗に対して反省したら、沈んだ気持ちは過去フォルダに入れてしまえばOK」とアドバイスする。

次なる目標は、世界中を飛び回るライターになること

ライター、コラムニスト、ライター講座の講師など、すごいスピードで仕事の幅を広げているさとゆみさん。そんなさとゆみさんの次なる目標は、世界を飛び回れるトラベルライターになることだという。

「とにかく自由になりたいんです。場所や時間に縛られず自由に仕事がしたくて。どうすれば世界中を転々としながら安定した収入を得られるのかとずっと考えています。その手段のひとつとして、トラベルライターという道があるのではないかと思い至りました 」

そして今、ライターになった頃と同じように「トラベルライターになりたい」と宣言した。「私は書く仕事以外にライター講座で講師もしているのですが、卒業生の中に トラベルライターとして活躍している人が何人かいるんです。その人たちにアポを取り、どうやって仕事を取っているのか、誰に企画書を出せばいいのかなどを教えてもらっている最中」だそうだ。 

さとゆみさんは海外で働く将来を見据え、忙しい仕事の合間をぬって英会話教室に通っている。地方での移動には自動車が欠かせないことから、夏休み中にペーパードライバー講習を受けた。 目標に向かって突き進むさとゆみさんの原動力は、一体何なのだろうか。 

「私、自分に甘いんです。やりたいと思ったことは自分に全部やらせてあげたい。みなさんも、そんなに難しく考える必要はないと思いますよ。仮に失敗したとしても、それほど大きな問題にならない場合がほとんどですから。それなら、やらずに諦めるより思い切ってチャレンジしてみたほうがいいですよね。

たとえば、好きなことをやりながらライターとして食べていく。そんな働き方に憧れる人は多いと思いますが、それを実現するのは宇宙飛行士になろうとするより遥かに簡単なことだと思うんです。だから何かやりたいことがあるのなら、まず『これは譲れない』『これはやりたくない』などと思いつく望みを全部書き出してみましょう。そうすれば、目標を実現するために何をすべきかが見えてきますよ」 

(取材・文 / 山本洋子)



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