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短歌11:「ひとり彷徨う」30首



広告に「楽しもう!」とか書いてある電車でみんな死んだ目してる 

気づいたら死んでたくらいの感覚で生きてみたいし死んでもみたい

帰り道知らない道を曲がるもうどこにも行きたくないはずなのに  

丁寧な暮らしばかりが溢れてるタイムラインに殺される朝  

沸々と小さな怒り沈めてくいちごがジャムになるのを見てる  

悲しみは悲しみでしか救えない明るい歌は誰かの凶器 

吾輩は猫になり寝るだけでいい 生活求む 名前はいらぬ

虫、怖い、雷、怖い、死が怖い、なにもないこの末路が怖い

あははあははあははあははおかしいねみんなどうしてこんな世界で

大人ってつまんないって君が言う頷きながらサルトルを読む

目には目を歯には歯をだろ言葉には言葉で返せ好きって言って

生きづらさ語り合ってた友達が知らない顔で幸せ語る

私から連絡しないと遊べないあの子の日々に要らない私  

天国の近道探す部屋の中期限の切れたものばかりある

悪いのは誰かを決める多数決正しさなんて二の次にして 

喪失を抱えたままの僕達はひとりぼっちを認められない 

助けてと言ったところで神様はどうせ誰にも優しくないし

動けない部屋で秒針だけが鳴る今朝は燃えないゴミの日だった

突き刺さる言葉はナイフそれなのに君はなんにも怖くはないの?

何者にもなれなかった音楽も本も絶望与えるだけだ

死に至る前に失望する前に生まれる前にやり直したい 

感動や奇跡ばかりを見てないで誰にでもある絶望を見て

繕った仮面で笑うその下で泣いていること早く気づいて

行き先が分からないまま乗っている永遠なんてどこにもなくて

最初から知っていたんだ自分にはなにもないって逃げていること  

「可哀想」そのレッテルで愛された少女は冴えないラストシーンへ  

手首には傷跡 だって目に見える痛みは理屈よりも簡単

掻きむしる孤独の隙間いつだって閉じた心に銃を翳して

点滅と瞬き 速くなる鼓動 誤魔化すように白線を踏む

逃げ出した足跡前を向いているこれから先はどうだっていい

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