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短歌05:「孤独の泣き場所」 30首




その中に私は多分含まない「誰か遊ぼう」「皆大好き」

幸せなあの子のインスタ見ながら温めている冷凍食品

頑張った今日もなんとか生き延びたホールケーキはひとりで食べる

百均で必要のないものを買うそんな余裕が今は足りない

音楽を続ける彼等、観客の何者にもなれなかった僕

誰にも守られないから私は今日も1人で傘をさしている

君だけは許してあげて君だけは無様な僕をどうか許して

この場所で待っているからさよならと(手首を隠しながら)ごめんね

運命は案外近くにあるらしい例えばエンターキーの向こう

天国に行ってもきっと朝起きて「生きたくない」と泣いてしまうな

ちぎっては捨てるをずっと繰り返す花占いに似た廃棄処理

人生に続きはあるか知らないが、この結末は分かりきってる

傷跡を笑われたってかまわない新たな傷が増えなきゃいいよ

ダメージ1を受ける日々勝ち負けや回復はなくいずれ死ぬだけ

公園の遊具撤去の張り紙「楽しい」は危ないに負けたのか

この海に飛び込んでみてもう二度と泣かなくて済むように紛れて

薄暗い部屋で待ってたひとりきり不確かなものだけを信じて

不揃いのカトラリーが映す不安穏やかだった日々はほどけて

さよならが消えてしまったあの夜に繰り返し聞くピアノレッスン

タイムマシンあっても壊す過去も未来も今も私、見たくない

目玉焼きぐちゃぐちゃにした失敗という名のスクランブルエッグです

8月が音も立てずに死んでいくラムネの中のビー玉を見る

孤独=一人で家具を組み立てること死にたさだけが完成される

空っぽの胃の中落ちる悲しみを吐きだしたくて向かう泣き場所

人混みを俯いて歩くこんな生き方がしたかったわけじゃない

閉ざされた部屋の向こうで泣いているあの子は今も春が好きかな

何度目の帰省だろうか変わらない景色に抱く嫌気と安堵

その仮面外してみせて? ごめんもうどれが自分が分からないんだ

頬杖とため息をつくこの窓の行きつく先がパレードであれ

いつかまたどこかで君に会える日を夢見て踊る最期のワルツ







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