見出し画像

短歌10:「憂鬱な帰り道」30首


なんとなく死にたくなった帰り道ネクターのない自販機に闇

まだ泣いてないから皆気づかないわたしがとっくに限界なこと

辛いなら頑張らなくていいなんて誰も教えてくれなかったよ

いつだって思ったことが顔に出る下手な生き方だけは上手くて

青春の抜け殻ばかり落ちている巣鴨駅前セブンイレブン

帰り道コンビニで買うロング缶1駅分の逃避行です

憂鬱と歩いて帰るこの街は今日も誰かの心を殺す

悲しみに不安な日々に高層ビルに潰されそうな夜でした

叶わない夢だと知ったあの時に大人になってしまったみんな

喫煙所煙草の煙より先に溜息を吐く大人の集い

果たせない約束ばかりまたねとか元気でねとか無理だよそんな

手羽先を綺麗に食べる丁寧な生き方まずはそのひとつかみ   

「生きるのが下手で苦しい」そう言って君は上手にさんまを食べる

生きづらさ、孤独を歌うボーカルが既婚者だって思うとなんか

ためらいがカッターよぎる部屋の中誰もいないのに手首を隠す

散らばってラメみたいだね傷跡は傷跡のまま増える傷あり

明日の朝隕石が降る夢の中皆が死んで私笑ってた

予期しないパレードの鐘聞こえた日バレないように盗んだ栞

生きるのを途中でやめてみたくなるそこの死神こっちへおいで

カランコロン/からっぽ/どうせいつだって教えてもらったこともできない

天使たちゴミ袋持ち「こんなことしたくないのに」というような目

図書館で『斜陽』を読んだ帰り道永遠なんてあるのかと問う

なにもないそれでも泣いてばかりいる涙の形すらも覚えた

音楽も本も見れないちっぽけな自分ばかりが見えている夜

カーテンを開ける余裕もない部屋で鏡が揺れる、涙を落とす

真夜中に会議だなんて脳内は死ぬか生きるか逃げか揉める

耳鳴りがうるさいやめてもういやだ自分ばかりがダメな気がする

何者にもなれないから天国の近道探すグーグルマップ

誰だろう泣いている子はなんとなく私に似てるような気がした

片道に絶望を乗せ、帰りには希望を持って帰りたい海

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?