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タキタの乳首をみた

みてしまった。おれはタキタの乳首をみてしまった。

しかし悪気はなかった。
それは小学校6年の夏、プールの着替えのときだった。

当時は男女の着替える場所が、多目的室と教室とで、なぜか毎週入れ替わる。
隔週で場所が決まっていたのかもしれないが、そんなこともすっかり忘れ、教室の隅のカーテンに絡まってくるくる回っていたおれは、今週の着替える場所が、どっちなのかを確認しそびれてしまったのだ。


総計23回転半、十分にくるくるを嗜みカーテンから出てきたおれは目を疑った。

教室に 女子しかいない


もしかしておれ、、、ToLoveってる!?

しかしまだ誰も着替え始めてはいなかった。
そしておれがここにいることに誰も気づいていないようだ。

この状況でおれがとれる選択肢は二つに一つ。
「このままじっとしている」か、「いますぐ逃げ出す」か。

しかし前者はかなりのハイリスクだ。
バレずにやり過ごせる見込みはゼロに近い。そしていざ女子が着替えるところをみてしまったら、その瞬間これからの学校生活でおれの居場所はなくなってしまう。

おれは決めた。

今すぐここから出よう。プールバックをもって駆け抜けよう。
そしてその走りをもって、自分の潔白を証明しよう。

急に走り出すおれに気づいてみんな驚くかもしれない。
だけどわかってくれるはずだ。ここにいることに「負い目を感じてるんだ」ってこ


「ボロン」




遅かった。





小麦色の地平に、二つの点。

それは、なんの恥じらいもなく、なんのためらいもなく、ただそこに現れた。


タキタは、プールが待ちきれんと言わんばかりに、オレンジ色のシャツを勢いよくたくし上げた。

そしておれはこの目でベールに包まれていた筈のそれを、しっかりと捉えてしまった。


いや、逆だ。

おれは、タキタの乳首に「捕らえられて」しまったのだ。

ここにいるということの罪を、しっかり精算させるべくタキタの乳首はおれを「捕らえた」のだ。




「えっ!?ちょっとカナタ、なんで教室にいんの!?」

「きゃっ!!ちょっとせんせーっ!」


もう、ここまでだった。
おれは重大な罪を犯してしまった。そしてタキタの乳首によって、それは確固たるものとなったのだ。

この罪は真摯に受け止めよう。もうおれは、どこにも逃げない。


ガラッ

おれは徐ろに教室の窓を開けた。


「えっ、ちょっとあんた何してんの!?」

おれは最後に、微かな笑みを浮かべ、後ろ向きに飛び降りた。


「ちょっ、カナタ!!!カナターーーーーーーッ!!」


ドサッ



ーー

あれから8年がたった今、そこには、あたり一面にヒガンバナが咲き乱れている

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