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「遅延も想定しろ」が初デートに喩えるとまあわからんでもない話

今朝、twitterを見ていると平穏なタイムラインにこんなツイートがまわってきた。



ニュース番組の一部だろうか。

新社会人に対して物申すと、いぶし銀の社会人が額に脂をギラギラたぎらせては興奮気味に言う


「初出勤早々遅刻し、遅延証明書を見せては何食わぬ顔でいる新社会人が許せない。

いかなる理由があろうとも遅刻は遅刻。

電車の遅延まで見越して行動するのは社会人として当たり前だ」







うむ……




ハナクソをホジホジホジホジしながらタイムラインを見ていた俺は、それを止めコーヒーを少々口に含み一服する。





そして一言、





穏やかじゃないな、と。



自分は社会人でもなんでもなく、その辺にいる大学生の一個体に過ぎない。

だけどそういえば高校の時、似たようなことを先生に言われた気がする。

当時の自分は、どんなことを思っただろうか。




遅延まで想定して行動しろだぁ??

遅延が起こるかなんてわかるわけねえだろオラオラ

おめえは予言者かよノストラダムスかよおおおお

そんなに言うなら係結びより先にその超能力教えてみやがれB★B★A yo チェケラ




そう、思ったに違いない。

確かに電車の遅延まで"予見すること"は困難だろう。

およそ予見できない事象まで見越して行動しろと言うのは、あまりに理不尽な気がする。



しかし、論点は果たしてそこなのだろうか?


彼らは我々にエスパーであることを求めているのだろうか?

はたまた気にくわない若者に対し、腹いせに無理な欲求を押し付けているのだろうか?



違う。


彼らがいわんとすることとはつまり、


パッションが足りないんだよお前たちは」ということ



とはいえこれでピンと来る人は少ないだろう。

これをそのまま高校生の自分に言い聞かせたところで、

「ン~~~ハイハイ要はバイブスね卍卍」と口で言うだけで全く心に響かない


そこである仮説のもと、こんな状況を考えてもらいたい





君は、ウブな男子高校生だ。


君はいままで恋人ができたことがない。

それも敢えて作らなかったのではなく、作りたくても作れないタイプの人間


挙げ句の果てにはできないのを拗らせて

「いやそもそも生きていく上で必要じゃねえし卍

基本的に一人で生きていけるし卍

なんなら極めるneat 俺だけのbeat卍

最後に笑うのはこのオレbuzzer beat卍卍」

と持論を展開しチンチンをいじりたおしている。困ったちゃんだ






しかしそんな彼にも春が来た。





そう、彼女ができたのだ



しかもこれがけっこうカワイイ


クールアンドビューティエキセントリックで、オリエンタルな空気もさることながらヨーロピアンな一面も併せ持つキューティーハニー


こうなったらもう昨日までの彼じゃない。
自分を固めていた持論のことなんかすっかり忘れ、ノロケを展開する始末




「やっぱり人間って一人じゃ生きていけないイキモノなんですよねーアッハッハ

二人三脚ではじめて人間として成り立つというかハハッ

子供ですか?

そうですねー将来は子供たちと一緒にサッカーがしたいから、11×2で22人はマストですよねアッハハハハハ」


この溺愛っぷり





そして、そんな彼女との初デートの約束をした。





彼女がそのデートスポットとして選んだのは、



若者の街・SHI★BU★YA





ほぅ...

初陣にしてはなかなか大きく出るじゃねえか…




ヨーカドーのフードコートあたりだとタカを括っていた青年

意表を突かれ身動ぎしたが、辛うじてその表情だけは崩さなかった



そして深く、ゆっくりと頷いた。

傍から見たそれは、頷いているのか項垂れているのか皆目見当がつかない。


彼が動じるのも無理はない。

人生初デートにしてはレベルが高い 高すぎるのだ




長年「いや彼女とかいらねえし」スタイルを貫いてきた為、勝負服はおろか私服というものをほとんど持ち合わせていない。

休日は体操服で生活している。

なんなら家では全裸だ



そんな彼にいきなり提示された渋谷。

多くのものが夢を見ては散ってゆく弱肉強食の街、渋谷。

体操服や彼のチンポじゃ到底太刀打ちできない。

なんなら太刀じゃない





身構えないほうがおかしい





それからというもの、彼はデートのことで頭がいっぱいだ。


一世一代のビックイベント。

この機を逃せばもう二度と、こんなチャンスはやってこないかもしれない。

ここで彼女の機嫌を損ね、チャンスを逃してしまってはならない。



「場所は渋谷」と告げられてからの1週間、彼は入念に準備を重ねた。


デートコースの下見はもう何度行ったことか。

お店のメニューまで一通り覚えた。

山手線全駅の情報は既にインプット済みだ。



そして彼のデートに捧げる情熱は、知的好奇心という新たな欲求へと昇華されるーーー


メンズノンノでファッションを学び、popeyeを熟読して粋な喫茶店を知り、SHIBUYA109の体積を区分求積法により算出することに成功した。

さらに彼は、渋谷という街の今を知り、過去を知り、そして全原子の位置と運動量を把握し、人は彼をラプラスの悪魔と呼んだ


ときに泣き、ときに笑い、試行錯誤を繰り返し、ついに森羅万象を知り尽くし、藤井六段をも凌ぐ先見の明を得た彼は、全知全能の神となったのだ





すべては、初めてのデートのために。










彼が、








そんな彼が、











電車の遅延も想定せず行動することがあるだろうか






こんな女性はいないであろうが、そしていないことを願うが、


もし初デートに電車の遅延で遅れたとして、

彼女が機嫌を損ねたとする


そのとき、君は鉄道会社を責めるだろうか。

はたまたこんなことで機嫌を損ねた彼女を責めるだろうか。


いずれにせよ、彼女は帰ってこない。


こうなれば責めるべきは他でもない、自分自身だ



年配社会人の言わんとするコトとはつまり、

初めてなら、起こりうるどんな事態も考慮して、絶対に失敗しないよう細心の注意を払いなさい

それでも失敗したというなら、他人に責任転嫁する前に自分の事だと思う、それくらいの情熱をもって出勤しなさい


そういうことなんだと思う。



なにも予見しろといってるんじゃない


毎日が、一世一代のビックイベントで自分自身のことだと思ってかかれ

失敗を他人のせいにしたところで意味がないのだから、

自分としては失敗しないようにできることはやれ


それくらい、



アツくなれよと






ってここまで書いといて、これ受験当日とかで例えた方が話シンプルになったなとか思うヤマギシでした

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