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スマホを拾って届けるという今年最後の善行

長男と夕食の買い出しに行った帰り道、スマホを拾った。行きの道中では見当たらなかったので、戻ってくるまでの間に誰かが落としたのだろう。

白いタイルの小道に黒いスマホが堂々と転がっている。明らかな落し物だが、通行人は誰一人としてスマホに目もくれない。
僕も一度はスマホの存在を無視して帰ろうとした。抱っこを求める長男はいるし、荷物が予定より重くなってしまったし。親切心で下手なことをすると痛い目に遭うかもしれない。触らぬ神に祟りなしだ。

それに現代の必需品であるスマホを落としたのだ。持ち主もすぐに気づいて取りに来るかもしれない。せめてもの思いでスマホを踏まれない位置に置くことにした。

しかし、触ったが最後、色々なことが気になり始める。
「年末年始で色んな人から連絡が来るんじゃないだろうか?」
「家族や友人との連絡はどうするのだろう?」
「スマホを落として最悪の年末になったら、新年早々悲しいよな」
まったくの想像でしかないが、年の瀬にスマホを落としたことが気の毒でならなかった。どうしたって家族や友人からの連絡が増えるタイミングだ。スマホが気になってきっと正月休みどころじゃないだろう。

それに大晦日は天気が崩れるという予報もあった気がする。雨風にさらされたらスマホが壊れるだろう。せっかく見つけても使い物にならなくては意味がない。

落ちたスマホを片手にしばらくあれこれ考えていたが、持ち主が血相を変えて探しに来る気配もないので帰る前に警察署に届けに行くことにした。自宅から警察署が近いので寄り道したって問題ないだろう。

警察署の窓口でスマホを拾った旨を伝え、必要な手続きをする。
「持ち主がお礼をしたいと言ったら連絡先を教えますか?」
どうやら拾ってくれたお礼をする人が一定数いるらしい。連絡先を教えるも辞退するもどっちでもいいですよだそうだ。

親切心から届けたとはいえ、僕も人間なのでもらえるものはいただきたい。見返りがないよりはある方が嬉しい。
しかし、ここで「じゃあお願いします」と伝えたらなんだか図々しくがめつい人だと思われないだろうか?

警察官からしたら手続き上の確認事項でしかないわけだが、余計なことを考えてしまい一瞬フリーズしてしまった。結局、しどろもどろになりながら「結構です」と答えた。無事届いたら連絡だけくれるようにお願いし、警察署を去る。

自分にも落とし主にも良い年末年始が訪れますようにと柄にもないことを思った12月30日の夕方。

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