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パンデミック対策における最大の敵は、科学界、公衆衛生、規制当局の主要な専門家たちの免疫学的無知である

Dr. Geert Vanden Bossche 2022年10月28日投稿
The greatest enemy in the control of the pandemic is the immunological ignorance of our leading scientific, public health and regulatory experts
の翻訳です。原文を参照の上ご利用ください。

まれに、メインストリームのジャーナリストが作成したワクチンに関する記事を読むことがある。彼らがまだ残っている批判的思考力をを使って、一連の期待はずれのワクチン人体実験の結果と、長い間彼らの見解を支配してきた主流派の物語とのバランスを慎重に取り始めているのを見るのは興味深い。最近の記事「 更新型Covid-19ワクチン(オミクロン対応2価ワクチン)は防御効果を高めるが、BA.4とBA.5に対するオリジナルのワクチン(単価ワクチン)に及ばないもしれない:初期の研究からの示唆」は、そのような素晴らしい例の一つである(https://edition.cnn.com/2022/10/26/health/updated-boosters-omicron-imprint/index.html)。

私は言葉よりも科学の方が得意なので、最初の二価ワクチンによるブースター試験で報告されたデータの免疫学的解釈における大きな欠陥に対して、科学に基づいて批判しようと思う。第一線の科学者や専門家の解釈に対する私のコメントを述べるが、しかし、私は彼らを嘲笑するつもりではないので、彼らの名前を挙げることは控えよう。私はただ、いまだ公式にこの分野の重要なオピニオンリーダーや意思決定者と呼ばれている人々の免疫学的無知を指摘したいだけである。彼らはその免疫学的無知によって、悪(集団ワクチン接種)と戦うために、より悪いもの(更新されたワクチンによる集団ワクチン接種)をもって戦おうとしているのだ——これは、パンデミックを「過酷な」方法で終わらせることになる最悪のレシピである。最終的には自然が免疫学の仕組みを教えてくれるだろう。しかし、残念ながら、それは集団ワクチン接種実験によって甚大な被害が出る前ではないだろう。この記事の中で引用されている、第一線の「専門家」たちが口にした具体的なコメントに触れる前に、私は、まず、この記事を執筆したジャーナリストの驚くべき発言を紹介して、第一線の「専門家」たちへの免疫学の「特別講義」始めることにしよう。


「しかし、ワクチンのレシピに手を加えて、現在流通しているオミクロン変異株を含めることで免疫の幅を広げ、それらの変異株に対して、おそらくより良く、より長く続く防御を提供できるだろうと期待されている。」

Geert : どうして、根拠のない「希望」だけで、人体実験ができるのだろうか? なぜ科学者は、報告された変異のパターンの背後にある免疫学的な駆動要因を調査することなく、詳細な変異に関するデータばかりを作成するのだろうか?それを調べさえすれば、ヒトでの経験的研究に希望を賭けるのではなく、豊富な科学的根拠があることにすぐに気がつくはずだ。

科学的な証拠は、いかなる更新された/適応されたワクチンによるブースター接種も、武漢株スパイクに基づくCOVID-19ワクチンによって与えられた一時的な保護効果を高めることはなく、むしろ免疫逃避を促進するのみであることを明確に示している。

なぜ?

SARS-CoV-2(SC-2)は着実に進化を続け、多くの論文が収束変異を示している。このことから、ワクチン接種後の増殖性のブレークスルー感染とmRNAワクチンによるブースター接種は、低親和性抗体を産生する未成熟な記憶B細胞を再活性化することにより、より保存され、免疫原性が比較的低いスパイク関連エピトープに免疫圧力を及ぼすことが明らかである。 これらの抗体は、当然、より保存された抗原領域に対して不十分な圧力をかけ、初めは、再び増加した広範な中和抗体(すなわち、バリアント非特異的中和抗体)から、次は、広範な感染抑制抗体からの免疫逃避を引き起こす。これは「免疫再集中」によるものである。「免疫再集中」とは、病原体に関連した標的エピトープに低い親和性で結合する抗体(SC-2の場合であれば、ウイルスを中和ができない抗体)が既に存在している場合に起こる現象である。最後の図を参照してほしい。このようにして、自由に循環する抗原(SC-2の場合はスパイク(S)タンパク質)上に発現している、以前は免疫原として優勢だったエピトープが宿主免疫系によって認識されなくなる一方で、マスキング効果によって、同じ抗原内に含まれるが、感染細胞またはワクチンを取り込んだ細胞上に発現する、以前は優勢ではなかった抗原決定基に対応する抗体が呼び出されて増えることになる。

ブレイクスルー感染の場合、以前にプライミングされた「適合しない」抗体があることは極めて明白であるが、mRNAブースターワクチンを接種した場合にはこれはどのように発生するのだろうか?

それに対しては、生体内で分泌された人工Sタンパク質が抗原提示細胞に取り込まれると、遊離して循環しているSタンパク質、あるいは、mRNAを取り込んだ細胞の表面に発現したSタンパク質上の免疫優勢エピトープに対して、それぞれ、コグネイト、またはノンコグネイトなTヘルプがもたらされ、抗体が産生されるようになることが理解できれば十分であろう。ノンコグネイトTヘルプでもたらされる抗体は親和性がはるかに低いが、mRNAワクチンのブースター接種の際に最初に増加してくるのはこれである。この抗体が、一旦、mRNA を取り込んだ細胞からSタンパク質が放出されて遊離すると、その免疫優勢抗原決定基に(低親和性で)結合してしまうため、(抗原提示細胞にSタンパク質が取り込まれた結果、呼戻される)ヘルパーT細胞は免疫優勢な抗原決定基ではなく、免疫劣勢な抗原決定基をヘルプするようになり、(免疫劣勢な抗原決定基に対応する)広範な交差性を持つメモリーB細胞を呼戻す。mRNAワクチンによってオリジナルの武漢型Sタンパク質が記憶されたことで呼戻される中和抗体は、低親和性で、保存されているがあまり抗原性が高くないS関連ドメインに向けられている(「”隠れた抗原原罪」)。つまり、mRNAワクチンによるブーストの繰り返しは、免疫系に「”隠れた”抗原原罪」を繰り返させるに過ぎない。結果として、mRNAブースター接種は、免疫再集中を繰り返させることによって、免疫逃避を促進する。下図に示すように、免疫再集中により、より保存されたドメインを標的とした低親和性の感染阻害抗体が誘導される。したがって、mRNAワクチンに含まれるSタンパク質のバージョンにかかわらず、mRNAワクチンブースターは、共通の(変異株非特異的な)、ウイルスの感染性と中和性に関わる抗原領域に対する体液性免疫圧力を促進する。大規模なmRNAブースター接種キャンペーンは、メモリーB細胞が胚中心で成熟するよりもずっと前の時期に、まだほとんど成熟していない状態のメモリーB細胞を呼び戻し、免疫逃避を促進する。(メモリーB細胞の胚中心での成熟に関しては、最近のいくつかの論文で報告されている)。

mRNAブースター(そして、ワクチン・ブレイクスルー感染)は変異株非特異的なドメインへの免疫圧を促進する。そのため、それらによって間接的に促進される免疫逃避は、もはや、主流として流行しているSC-2変異株に特徴的な性質によって決定されるものではなくなっている。これが、現在、ますます中和抗体に抵抗性、かつ、高感染性の複数の変異株が同時流行している理由である。最後に、免疫の再集中により、抗原特性が大きく異なる保存ドメインに免疫応答が移行するため、「突然変異探索家」たちが、それらの突然変異が「大規模な」免疫逃避の結果であると考えても不思議はない。

「特別講義」の終わりに

以下、専門家の解釈やコメントを引用した後に、私の批評を述べよう。

「免疫学者によれば、2つの株に対するワクチンは、インプリンティング(免疫刷り込み)と呼ばれる現象があるため、1つの株に対するワクチンよりも優れていないかもしれない」

Geert:これらの免疫学者は、「免疫刷り込み」または「抗原性罪」と「免疫再集中」を混同している。もし、免疫刷り込みが、観察されているワクチンの防御効果の原因であるならば、ブースター接種後には(たとえ短期間であっても)防御効果が向上するはずだ。しかし、新しくブースターが追加されるたびに、その効果が低下しているため、それはあてはまらない。

「科学者たちは、コロナウイルスが進化し続ける中、免疫刷り込みによって、新しい変異株に先んじるための努力が複雑になる可能性があり、ウイルスと戦うための新しいワクチン技術の開発が急がれると述べている。」あるいは、「ウイルスが大きく変化して我々の免疫を完全に凌駕するようになれば、異なる種類のワクチン技術が必要になるかも知れない。」

Geert:専門家や規制当局が、新たなmRNAワクチンを用いて人体実験を行うというのに、根拠となるのが、ほぼマウスのデータしかないということは、ただただ信じられない!何十年とこの分野で働いてきたというのに、まだ、マウスは当てにならない、ということを知らないのだろうか。ヒト集団とは全く異なる免疫学的背景を持つ動物に免疫をつける場合には特にそうなのだ。そして、計算科学者や数学者たちは、モデルはその前提条件次第であることを、いつになったら学ぶのだろうか?彼らは明らかに免疫学を理解していない。したがって、彼らの前提は常に間違っており、モデルの結果もまた同様である。


「数ヶ月後に差がないとは言い切れない。」「より長期間追跡しなければわからない。」
「ワクチンメーーカーであるファイザー社とモデルナ社が行っている臨床試験では、数百人が更新されたワクチンでブースター接種を受け、より長期間追跡調査されている。これらの試験のデータはまだ発表されていない。」

Geert:明らかに、この科学者/医師が示唆しているのは、ブレークスルー感染の繰り返しやワクチンの追加接種で誘導されたメモリーB細胞の成熟のことである。それについては今では多くの報告がある。しかし、その中に説得力を持って示されているのは、この成熟プロセスは、本格的な親和性成熟を達成するまでに数ヶ月(4-6ヶ月)かかるということである。繰り返すが、ウイルスは親和性成熟の達成まで待ってくれたりはしない。特に集団レベルで免疫圧力が及ぼされている場合には、そのころには、ウイルスはとっくに別の免疫逃避作戦を達成している。



「...研究者は、どちらの場合も接種後に中和抗体がほぼ同じ高いレベルまで急上昇することを確認した。これは良いニュースだ。」

Geert:そうだろうか?この抗体の唯一の効果は免疫再集中を引き起こし、大規模な免疫逃避の引き金になることだというのに、なぜこれが良い知らせなのだろうか?免疫学に当てはまらないルールがあるとすれば、それは「多ければ良い」というものではないということだ(実際には、その逆が普通である)。何度言えばわかるのだろう。


「残念ながら、どちらもT細胞応答をあまり増加させなかった。我々は、抗体反応に加えてT細胞応答が重症化からの保護に重要だと考えている。」

Geert:一部のトップ研究者は、ウイルスを制御し、パンデミックを手なずけるために、交差反応性T細胞の力が重要だと執拗に主張し続けている。彼らは、急性自己限定性ウイルス感染症に関わる病理生物学と免疫学についてほとんど理解していないようだ。もしかしたら、彼らの中にはHIVワクチン研究のし過ぎで混乱している人もいるのだろうか?

改めて、SARS-CoV-2感染や 疾患に対する防御におけるT細胞の重要な役割を論証するために、私が書いた多くの論考の一部を引用しておこう。

# When anti-S(pike) antibodies against Omicron can no longer sustain the narrative, why not resort to T cells? (日本語訳

# Q&A #09: Do cross-reactive T cells explain mild course of Omicron infection? (日本語訳

# To all those who continue to attribute abrogation of SARS-CoV-2 infection to pre-existing cross-reactive T cells rather than to innate immunity. The devil is in the detail of peer-reviewed publications. (日本語訳

# Cross-reactive memory T cells are associated with (but not responsible for) protection againstSARS-CoV-2 infection in COVID-19 contacts.

# ‘Killer’ immune cells still recognize Omicron variant.... oh really?



「ブースターは、そうでないと証明されるまでブースターであり、米国でより多くのブースター接種を行うことが非常に必要である」

Geert:そのとおり。そしてワクチンはそうでないと証明されるまではワクチンなのだ!本気だろうか??! この科学者/医師は、「多ければ多いほど良い」(すなわち、抗体価が高いほど、ブースターが多いほど良い)というコンセプトの狂信者のようだが、抗体がブースターされることで引き起こされる免疫学的メカニズムやその長期的影響について考えてみてもいない。


「来年の9月、10月までに、少なくとも人口の一部(おそらく高齢者)に対して、さらに追加のブースターの準備をしなければならない可能性があることを考えると、心配で夜も眠れないと言ったら嘘になるでしょう。」

Geert:規制当局の多くは、明白な疑問に答えられずに夜も眠れないと文句を言うより、免疫学のパズルのピースを組み立てることに眠れない夜を費やした方がいいようだろう…...(あるいは他人の意見に耳を傾けるか!)。


「どちらの研究も限界はあるが、それらを総合すると、免疫刷り込みが問題を引き起こしていることは間違いないだろう。」「インフルエンザが,系統によっては、特定の年齢層を強く襲うことがあるのもそのためだ。新たに感染したウイルスが、最初にかかったウイルスやワクチンと似ている場合、体はそれをよりうまく撃退できる。」

「おそらく、BA.4とBA.5に対する成分のみを含むものにワクチンを更新した方が良かっただろう。」「 私にとっては、オミクロンに対する防御効果を強化したいならば、ワクチンからオリジナル株の用を除く、ということが重要なポイントだと思う。」「 免疫刷り込みは、ウイルスに追いつくための努力を複雑にする」

Geert:「免疫刷り込み」または「抗原原罪」は、免疫学において最も古く、反論の余地のないパラダイムの1つであるという事実を考えると、そもそもなぜ、祖先型のスパイクタンパク質が2価ワクチン製剤の一部とされたのだろうか。しかし、先に説明したように、mRNAワクチンではスパイクタンパク質のどのバージョンであっても、他の(すなわち、免疫劣勢)エピトープへの免疫再集中を引き起こすことに違いはない。免疫再集中が免疫刷り込み(つまり、「”隠れた”抗原原罪」)を意味するのであって、その逆はない。


「免疫刷り込みを突破することは可能である。ある種のワクチン成分やアジュバント——免疫系を目覚めさせるもの——は、それを可能にする。」

Geert:この人は、ワクチン学の重要な原則を一つ忘れている: ワクチンの効果は抗原次第である!もちろん、アジュバントは免疫応答の大きさと幅を広げることができる。しかし、スパイクタンパク質に対する低親和性抗体の、ノンコグネイトTh依存性のプライミングには影響しない。なぜなら、低親和性抗体は膜上のスパイクタンパク質を標的としており、事実上、抗原提示細胞へ取り込まれない。つまり、アジュバントが機能する必要条件を満たさないのだ!


結論

科学、公衆衛生、規制機関の主要な専門家が免疫学的に無能であることを考えると、明晰な頭脳による計画よりも、はるかに多くの、経験主義に基づいた計画や、さらに別の実験的製剤の接種計画が立てられることは容易に予想される。しかし、人類がこのパンデミックをコントロールできていたことはなく、非合理的な実験が続けば続くほど、その可能性はさらに低くなることを忘れてはならない。実際、人間が科学的に非合理な免疫介入によってパンデミックの管理を誤れば誤るほど、ウイルスは免疫学の教訓としか言いようのない進化を(より急速に)遂げようとしている。せめて、将来世代の科学者にこれが記憶されることを祈る。しかし、歴史は、人間に対して行われた無分別で危険な実験から学ぼうと考えた人たちの言葉を私ほど穏やかに受け止めはしないだろう。


https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/the-greatest-enemy-in-the-control-of-the-pandemic-is-the-immunological-ignorance-of-our-leading-scientific-public-health-and-regulatory-experts

図: 免疫再集中(IR)は、既存の抗体と標的エピトープが低親和性で結合した場合に起こる(例:ワクチン・ブレイクスルー感染による発症や、既にmRNAワクチンでプライミングされた人がブースター接種された場合)。免疫優勢スパイク(S)関連エピトープが隠されることにより、免疫劣勢エピトープが、優勢エピトープに打ち勝って、メモリーTヘルパー細胞からの支援を得ることができる。これにより、免疫劣勢S関連エピトープに対する低親和性抗体が呼び戻される。これらの保存性の高い抗原性ドメインに不十分な免疫圧力がかかるため、呼び戻された抗体は大規模な免疫逃避を促進する。その結果、中和抗体耐性で高度に感染性の免疫逃避変異株が自然選択され優勢となって蔓延する。

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