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サーキュレーター 2024/09/10

今日は午後から展示作品の撮影が予定されていた。出社してからカメラマンが到着するまで中途半端に時間が空いていたが、上司と同僚の前で本意気で営業をするのは恥ずかしく、かといって堂々とサボるわけにもいかず、なんとなく忙しそうなフリをして過ごした。職場はいま、私の「フリ」を注意できないほど忙しく、私は注意されなかった。

途中で上司が「あっ!」と気づき、今日俺誕生日だ、と声を上げた。私たちは互いの誕生日にプレゼントを渡し合う約束だったが、忙しさで全員すっかり忘れていた。おめでとーございます、いい一年になるといいっすねー、と祝った。

予定の13時より20分ほど早くカメラマンは会社に到着した。撮影場所は倉庫室で、クーラーの無い倉庫内は覚悟はしていたが蒸し暑かった。上司は自宅からサーキュレーターをわざわざ持ってきていて、小さな達磨型の機械が床で首を振っていた。マスクと手袋でベトベトになりながら作品を運んだ。

撮影終了後、誕生日だからと上司が先に帰宅し、追って同僚も退社したが、私は月の売上目標が危ういので罪滅ぼしに残業することにした。19:30を回ったところで退勤報告を入れて、帰ろうとエレベーターに乗ろうとしたら、扉の奥に上司が乗っていた。サーキュレーターを忘れて、家族に取りに戻らされたらしい。

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