見出し画像

向いていない 2024/05/20

仕事の成果がなかなか出ない状況が続くと、だんだん「この仕事向いていないかもしれない」という気持ちに浸食されていく。この仕事向いていないと思えば、次に思うのは「じゃあ向いている仕事って何だろう」で、結局「自分には何も向いていない」という悲しい結論にたどり着く。もう30なのに、働き始めた頃から何も抜け出せていない。

久しぶりに再読した田中和将の『群れず集まる』に、こんな一節があった。

自ら望んでこの業界に来たはずなのに、どうりで居心地の悪さといたたまれなさを感じ続けていたわけである。向いていないなと幾度となく思いながら現在に至る。

https://books.bunshun.jp/articles/-/5659

前に読んだときには読み流していたが、今読むと心に留まるものがあった。これほど充実した表現活動をしているGRAPEVINEですら「向いていない」と思うなら、誰が音楽に向いているのだろう。本人の孤独というのは、傍からはほんとうにわからない。

「向いていない」という気持ちは、本当の向いていなさから来ているのではなく、ある種の向上心が変態したものであるように思える。別の見方をすれば、人に「もっと向いている仕事がある」とでも囁きかけるような、強迫観念的なものがはびこっているのではないか。囁きに真面目に取り合うか受け流すかの問題だというのは、簡単に片づけすぎだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?