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大掃除(エッセイ)

駅前のサンジェルマンのビルが取り壊されるようで、閉店を惜しむ客達がコの字型にレジへと長い列を作っていた。常連客というわけでもない私は、悲しんでよいのか惑いながら最後尾に付ける。待っている最中にちょうど塩パンが焼き上がったので、盛られた中から聖なるひとつを取り上げてトレイに載せた。レジでコーヒーを頼んで、普段通りに年賀状を書いた。

買ってから5年ほど経つカーテンをはじめて洗って、カーテンレールで干す。エアコンはフィルターだけ流水で流して諦める。ユニットバスはカビハイターを撒いてこちらもシャワーで流す。問題は換気扇で、ファン自体は外して洗えるものの、埃が溜まっている「ガワ」をどう処理するか。もしくはしないか。

来年の上半期には引っ越したいと思っているが、実現できるか否か。この部屋にはあとどれくらい棲むのだろう。宙吊りの状態だから、当然大掃除に身も入らない。すぐに去る部屋を丁寧に磨くような趣味もない。

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