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留置所日記 2020/6/2(3)

部屋の畳は畳のフリをしたゴム?の様な何か。い草ではない。色は緑でい草っぽくざらざらしているが、編み目はない。いろんな理由が想像できるが、果たしてこいつは畳のフリをする必要があったのだろうか。フローリングは冷たい?カーペットは汚れる?埋め込み式のマットは?なぜ和室風なのか…謎。
鉄格子に内側から金網。ものを投げたりできないように?足や手をかけたり何かを挟んだりできるような隙は作らないようにしている様子。なのにトイレにドアがついているのは個人的に謎。
少年室は部屋の電気にアクリルがはめられていたが、一般室にはない。何かを投げて当てれば割れてしまうだろう。

ふと、ペンを持つ自分の手を見た。ペンの持ち方が酷い。いつからこんなに崩れてしまったのか。昔はよく怒られていたな、とか。
ノートを書くことに多少気が済んだので、本を読むことにする。

「限りなく透明に近いブルー」を20ページ程読んで、置いた。覚せい剤取締法違反で逮捕されているのに、こんな本を読んでいては世話ないな、という感じの出だし。前に読んだのは何だったか覚えていないが、村上龍はセリフの書きだし方に癖があったということだけはハッキリと思い出した。見える物の表現の仕方も割と好き。
今パラパラと終わりまで目を通したが、かなり面白そうだったのでここを出たら買いたい。ただ、塀の中で読むにはあまりにも「日常」すぎるジャンルかと。
読み物を書く人は、どんな風に文章を書くのだろうか。一度しっかりと読み物を書き込んでみたいと、小学校の頃から思い続けている。思い浮かびすぎて、興味も、好奇心も、知識も散らかる。難しいな、と思い続けて今に至っている。こうやって思ったことを思った時に書き記すことにセンスや才能は必要ないが、読み手がいるとなると全くの別物。物書きは凄い。

借金玉のツイートで「A4の紙1枚に書き出せたら8割は解決している」というような内容のものがあったが、悩んでいるわけではないにしろ、今日はこれで9ページ目。まとまらず、落ち着かず、散らかった頭であることに間違いはないだろう。ミスリードも少ない様に書いているつもりが、文字数だけがかさんで、この前読んだ「心理術」の本と同じようなことになっていたりするのだろうか。ただ、今これを読み返しても振り返りにしかならないし、とりあえず「書ける間」はずっと書き続けて、土産にするつもりだ。

留置所に着いて初めに考えた、思いついたこと。
「記録して土産にしよう」「これを材料に誰かの”面白い”を作ってやろう」

心配したことは、突然消えた自分を、死んだと思っている人がいるのではないかということ。そして、それに頭を使わせてしまっていないかということ。死んだと思われることがどうということではなく、不安にさせてしまっていたら申し訳ないという話。

実際、捕まった日は調べに今後なんて答えていくかしか考えてなかったし、翌日も同じ感じで寝不足のおかげでよく眠れた。ほぼ毎日弱い部分が出てきては泣いてしまうけれど、これは捕まってなかろうとよくあったこと。
自分は、何も弱ってない。心配されることはないです。
全然普通に、なんならこれを書くことが楽しくて、早く出たいとか、つらいとか、思いつめることも少ないです。

あ、でも、最近始めた仕事のこととかはめちゃくちゃ考えた。へとへとになるまで考えた。捕まっている間にもできることがあるんじゃないか。接禁でも、いろんなことを考えてアイデアを沢山持っておくぐらいはできるんじゃないか。それを外に伝えられたとき、何かの役に立ててもらえないだろうか、とか。
上司怒るかな、とか、マネージャー心配してないかな、とか、代表と二人で伝えるべき人にちゃんと伝えてくれるかな、とか。

ここでの出来事その他いろいろとこうやって記録しておいて、noteにあげたらだれか面白がってくれねえかな、とか。配信のネタにするとして、どうやって話せばみんな楽しんでくれるかな、とか。出所して一番にしたいことは、推しに連絡。歌いながらコンビニ行って、煙草買うんだ。一服しながら、配信をつける。仕事関係の人たちに連絡して、そのあとは実家と自分の保護者達。全部終わったら久しぶりに、大好きなあのお店でお酒が飲みたいかな。

保釈金の借り入れを誰かに頼まなきゃいけなくて、仕事仲間の名前を出した。こういう場面で冷静でいてくれそうな人をとっさに考えたときにその人しか思いつかなかった。シンプルに。そして半分冗談でもある。「なんで俺に頼むんだよ」と笑ってくれないかな、なんて。

今回自分が捕まったのはある人に罪をうたわれたからだが、その人がしばらく消息不明になってからしばらくして、「実はパクられてて」と職場の上司に報告の電話を入れたのを知っている。自分はその時、その上司の隣にいたのだ。
「あーこれ、そのうち自分も持ってかれるな」と思った。そうなった時どうしてくれとか、周りに行っといたほうがいいのかなと思った。でもそれを前もって言っておくと、それを聞いた側は気が気でないのでは?とか、そんなことも考えるじゃん?

で、結局どうだったかって言うと、忘れてた。
自分が逮捕される未来がくることも、その時どうするか託しておくことも、全部忘れてた。

だから逮捕状を見せられた時、「あー忘れてた…」って小声で言っちゃった。忘れてたんだもん。自分の罪をうたったその人は確かにバカだし、そんなことは頭からわかっていたつもりだったが、ここまでバカとも思っていなかった。ただ、「まぁそうなるよなぁ」と納得は出来てしまうから、完全に自業自得である。次に会うことがあったら、あの人はどんな顔をするのだろう。なんて言うんだろう。

お茶をもらった。おそらく今は15:00。弁面はまだ無い。

窓の青が、午前よりも深い気がする。午後の空なんだろうか。
空が見たい。

留置所に来てから今日で5日目。いや、6日目か。
やっと看守への返事で声が出るようになった。どのトラウマかはわからないが、うまく声が出せなかったのだ。
10日勾留が決まって今日で4日目。「次はあれをしよう」「明日はこれをしよう」と考えていると、案外1日もそこまで長くない。特に昨日はやっとノートを受け取り、読書と運動以外のやることが出来たので、今日の今もしかり、かなり落ち着いていられる。

文章を書いている時は前向きな気持ちになれる。話をしている時も。
書いた文字が目に入るし、発した言葉は耳に入る。1つポジティブポイントを見つけられたら、自分のために、そこから無意識の内に前向きな方向に進めていく様だ。
とは言ったって、自分だけがポジティブでいても仕方ない。と言うか、なんと言うか、自分という体をもう少し大事にするべき、と言うか。思考の軸が1つに絞られていない分難しい。

確認できる限りでボールペンのインクは5mm以上減っただろうか。鉛筆も消しゴムも、ボールペンなんて使い切るまでなくさなかったためしはない。当たり前のことだし知ってもいたけれど、「はえー、ボールペンのインクって減るんだなぁ」という気持ち。

今日はこうやって書いていられるだろうけど、明日はどうかな。書くことなくなったりすんのかな。調べには持っていけないし、忘れちゃうんだよな、内容とか。

そういやストゼロ配信するって言って居候先を出たところで捕まったんだったな。最近ついてくれたリスナーさんが「俺も飲む」って言ってくれてたっけ。最近であった仲間だから、もう忘れられてたりして。
元気にしてるかな。

推しは枠を頑張っているのだろうか。仕事が忙しかったりするのだろうか。
つーさんはまだ配信を続けられているのだろうか。ノンの調子はどうだろうか。ふーちゃん、泣いてないかな。むーちゃん友達増えたかな。るうと早く話したい事全部話したいな。なみの枠の空気はどうなっているのだろうか。態度のでかいあいつは、そろそろ良い位置に上ったかな。りいは沢山相談してたみたいだけど、ちょっとずつでも前に進めているだろうか。みきは5月の配信、どこまで頑張れたのかな。けーちゃんの枠、早く遊びに行きたいな。ゆう、配信嫌いになってないかな。
俺も、早くみんなの仲間に入りたいな。

明日はオレンジジュースの日かな。水曜日。
水曜日って、昔なんか好きだった気がする。なんでだっけ、思い出せないけど。

弁護士が来るのをとても楽しみにしていることに気が付く。唯一、外とつながっていることを実感できるからかもしれない。見方をしてくれるからかも?わからないけれど、待ち遠しい。
来て欲しいとこちらから連絡してもらうことは出来るが、向こうだって別に自分を放置して得をする立場なわけではないから、不用意に呼びつけて時間を奪わず、弁面のタイミングに合わせて聞きたい事や伝えたいことを用意しておくのがベストなのではないかと。
ただ、まぁ、仕事仲間に自分が捕まったことがもう伝わったのかどうかだけ、今すぐにでも確認したい。とても気になる。気になったところで何ができるわけではないから、大人しく待つんですけど。

暇をつぶすためにいろんなことを考えるけど、ノートがないと頭がパンクする。脳みそが泣き始める。そしたら不安になった弱い自分は涙を零し、過呼吸を起こす。負の連鎖。
その為にもノートは必要。わかってたはずなのに初日に買い忘れ、地獄を見た。

今回逮捕された理由は、薬物を他人に渡した罪。
担当刑事は「お前だけが悪いとは思っていない。お前に売るやつがいなければこうはならなかっただろう。」とかほざいていらっしゃった。
でも実際、それを買うか買わないか、そして他人に渡すか渡さないかは自分が決めることだ。そんなことを言い始めたら、「人間という生き物が」とかそんな話が始まるだろう。
たらればは今は良い。自分「だけ」が悪いかどうかはここでは問題ではなく、自分が「悪いことをしたかどうか」が問題な訳だ。法律を守らないとか、逮捕されるとか、そこに善悪つけることは自分には出来ないのだけれど、まぁそれは良いとして。

実際に捕まってみて思ったことは、「タイミングが悪い」。
2018年、もっと言えば2019年の3月。ここまでの24年間ならいつでもよかった。大事にしたいものが増えすぎた今、そのころまでの様に手放しで「パクられたらパクられたで良い」とは、正直言えないなと今になって思う。

パクられている間の過ごし方的な意味では変わらないのだけれど、もし増えすぎた大事にしたいものを、外に出てもまた大事にさせてもらえるのであれば、2度とへまはしたくないしリスクはすべて一掃したいと本気で思っている。
こぼしたもの、手放したもの、遠ざかったものは、今まで全部ゴミ袋に入れてきた。その時は寂しくても、どうせまたその内、気づいたら別の場所で、別の人と、別のことに興味を持って、楽しくやる日が来るって知ってるから。そんなに何かにこだわる必要がない。なくなったら、また違うものを探せばいい。

でも実は、よくよく考えてみると、「全部」ではない。

手放さなかったもの、零さないように必死に持ち続けたもの、物理距離ができてもずっと忘れられないようにしてきたもの。
今ほどは多くはなかったけど、1つずつ、自分なりに大切にしてきた。今と違うのは、俺が必死にならなくても、いつもそばにあってくれたこと。
恵まれて、愛されて、大事にされてきた側だった。自分が。

2019年の4月から1年ちょっとで見つけたものは、たとえ愛してくれなくても、大事にしてくれなくても、遠ざかったとしても、必死になって大切にしたいと思えるものが多いと思うから。
だから、次また一人ぼっちになってしまって、人目から隠れて生きるしかなくなるまで、今まで生きてきたどのタイミングより、最低限逮捕されるリスクなんかを避けるのは忘れないようにするつもり。
当たり前のことなんだろうけど、「一般社会」がここまで人生に影響することは今までになかったから。ね。

夕飯の支度が始まった。今日は弁護士は来ないみたいです。
大丈夫、明日は来るかもしれない。

少年室と一般室では、少しルールが違う。
少年室は基本、部屋の中は自由だった。寝る時は頭を廊下側に向けて寝る。布団で顔を隠さない。別室に声をかけない。ぐらいかな。
一般室は、全員が飯を食い終わるまでは本を読んではいけない。食後、全員の投薬が終わるまでは、持ち込み用の小窓の前に座っていなければいけない。洗面中も、全員が終わるまではじっとしていること。「集団生活」だそうだ。どこら辺が「集団」なのかわからない、単に「個」を「集めた」だけにしか思えない。
なんにしても、少年室より自由が少ないとは感じる。2人以上の部屋は原則一般室であるべき、な様(推測)なので、相部屋で人とコミュニケーションをとることが楽しみの1つなのであれば、一般室のほうが気は楽かもしれない。

1号~12号まで現在入室ありで、5~8号は1人部屋だ様子。
隣の8-1は筋肉が働かなくなっていく病気らしく、いちいち動くのが大変そう。
あまり他の部屋の人を見たり観察したりはしないが、老人の2人部屋があることを確認している。
洗面で一緒になったお姉さんは、左腕がタトゥーで埋まっていた。足首にもあったかな。茶髪、ロングヘア、顔は見ていない。
少年室にいたときの少1は、弱弱しいおばさんだったと思う。あまり若そうな人は見かけていない。若そうとは、自分より年下、という意味で。

一般室7号の目の前は事務スペース。小さく「ピーーーー」という音が鳴ったらそれは、場内への内線。「調べ」→取り調べ。「弁面」→弁護士面会。看守が内線をとるたびに、自分ではないかと聞き耳を立てています。

ラジオから昔好きだった曲が流れてきた。カバーなようだが。

今日はここまで。

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