昔話「だからおばあちゃんじゃないって笑」
これは私が小学校に上がる前の
4、5歳の頃の話。
兄は、小学生の頃。
母が兄に、おばあちゃんちに電話するように頼んだ。
あの頃は、ほぼ毎日、おばあちゃんちに電話していた。
なので、兄も私もおばあちゃんちの電話番号は覚えていた。
兄が受話器を取り番号を押し、電話をかけた。
数十秒して、いつも通りに
「もしもし、おばあちゃん」と話し始めた。
そして「今日は何してたの?」
などと、2、3言しゃべってから
「じゃあ、〇〇ちゃん(私)にかわるね」
と言い、受話器をこちらに渡してきた。
あれ、いつももうちょっと喋るのに、今日は早く回ってきたな
と思いつつ、受話器を受け取り、
「もしもし、おばあちゃん」
と私も話し始めた。
すると電話口から聞こえてきたのは、
なんと…
「だから、おばあちゃんじゃないって笑」
と言う、男の人の声だった。
笑いつつも、ちょっと、困った声をしてたと思う。
その瞬間私は、背筋が凍った。
頭の中で、ぐるぐる、考えた。
「あれ、おばあちゃんじゃない!
間違い電話だ。
お兄ちゃん、普通に話してたのに。
お兄ちゃん、間違い電話かけたんだな。
どうして、こっちに回してくるんだよ!
どうしよう、電話切ろうか。
でも、ママも隣にいるし、
そしたら、間違い電話だってママにバレて、
私とお兄ちゃんまで怒られるかも。
どうしよう。」
考えながら、兄の方をチラッと見たが、
頼りにはならなさそうだった。
もう、どういう表情をしていたかまでは覚えてないけども。
考えた結果、
兄が普通におばあちゃんと話してるフリをしてたので、
私もおばあちゃんと普通に話してるフリをする事にした。
ただ、兄と私が、母に怒られると思い、
兄と一緒に共犯者になる事にした。
そして電話口の男の人に、苦し紛れに
「今日は、晩ごはん なに食べたの?」
と、いつもおばあちゃんに聞く定番の質問をした。すると、男の人は
「今日は、お弁当を食べたよ」
と答えた。
私は「ちゃんと答えてくれるんだ。」
と意外に思った。
そして、
「それじゃあ、またね」
と言って、電話を切った。
心臓がバクバクして、冷や汗をかいた。
その時は、うまく乗り切ったと思ったが
今思うと、かなり挙動不審になっていただろうなぁ。
母が、
「今日は、(話す時間が)えらい短いね」
と言った。私は
「おばあちゃん、晩御飯中だった」
とウソをついた。ごめん、ママ。
兄を見ると、私と目を合わせずに、
そそくさと自分の部屋に戻っていった。
「なんなんだよ、この人は」と思った。
その後、この間違い電話の事は兄とは何も話さなかった。
そのときは、
「すみません、間違えました。」と言って
電話を切ると言う選択肢が出てこなかった。
だってまだ、4、5歳だったし…笑
だけど、兄とは5歳はなれてるので、
兄は小学校3〜4年だったはず。
なのに、間違い電話を妹に渡してくるかね。
自分でかけた電話なんだから
間違えました、とか言って、切ってくれよ。
間違い電話をかけた相手の男の人が、優しく対応してくれてよかった。
夕方か夜頃に電話をかけて、晩ごはんに弁当を食べたということは、一人暮らしの男の人だったのかな。
なんにせよ、あの男の人が今でも元気でいてくれると嬉しい。
何年か前、大人になってから、
兄にこの事を話してみた。
こんな事があったけど、覚えてる?
って聞いてみたけど、
兄は照れたようなニヤニヤ顔で、
「覚えてない」
だってさ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?