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『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP〈シーズン1〉』感想

お気に入り度: ★★★★★ 5 / 5 

同名の画集を原作としたオムニバス形式の群像劇。地下に「ループ」と呼ばれる研究施設がある田舎町を舞台に、毎回異なる登場人物が謎めいたループの研究成果によって不思議な体験をしていく。

本作は並行世界や人造人間といった題材を扱っているものの、SFという感じはあまりしない。なぜなら、作中の先端技術や超常現象に理屈的な解説がされないから。最も重要なループの設定ですら「宇宙の謎を解き明かそうとしている」と大雑把なものである。危険な機械がその辺に放置されているのなんて、どうにもおかしい。

しかし、そんなツッコミは野暮だ。本作が描くのは、恋愛や孤独、劣等感、意地など、普遍的な人間の様である。現実には到底ありえない出来事を通して、現実と同じように生きる人間を描いている。そこからは哀愁とともに「完璧な人生などない」という価値観を感じ取れる。

ある回では脇役の人物が別の回では主役という独特の構成によって、作品の世界観は一層奥深く思えるものとなっている。また、原作が画集なだけあって映像は流石美しく、透き通った静かな不安さから目が離せない。

ある意味、人生も一つの宇宙の謎だ。『ザ・ループ』を観たことで、今一度そんな宇宙の謎について考えてみたりする。

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