【山梨ワーケーションツアー体験記】自治体が主催のワーケーションってどんな感じ?を徹底解剖(前編)
ワーケーション体験記は今では珍しくないが、映える写真とワークスペースの紹介がほとんどだ。
なのでこの体験記では、日本型ワーケーションの原点、行政主導型ワーケーションの最新事例について、実際に山梨県のワーケーション事業を体験してきたので「前編」「後編」に分けて紹介する。
この記事はこんな人向けの記事です。
自治体が主催するワーケーションツアーの参加を検討している企業担当者
企業向けワーケーションツアーの様子を知りたい自治体担当者
企業向けワーケーションツアーに興味がある人
山梨県のワーケーションや面白い地元企業に興味がある人
前編
ワーケーションとは
Workation OR Workcation ?
ワーケーションとはWORK x VACATIONの組み合わせによる造語である。
モバイルブロードバンドとリモートワークが進展した2000年代に欧米から始まり、WokationやWorkcationと表記されるが決まっているわけではない。
ちなみに、Wikiなどでは海外ではWorkcationの方が主流という記事を見かけることもあるが、Googleトレンドを見る限りそうでもなさそうである。
まあどちらが正しいというものでもないが僕は色々な組み合わせの可能性を秘めるWorkation表記の方が好きだけれどその理由は後述する。
ワーケーションの歴史
日本では、地域行政の企業誘致がワーケーションの発端となっている。
2010年、徳島県神山町にSansanがサテライトオフィスを開設し、ITベンチャーだった株式会社あわえの本社移転は「波乗りオフィスへようこそ」というタイトルで映画化もされた。
続いて2015年にセールスフォースドットコムが和歌山県白浜町にサテライトオフィスを開設すると、和歌山県はIT企業誘致の入口策として2017年から全国初のワーケーション事業を開始している。
つまり、海外では勤勉なビジネスパーソンが休暇中に業務を行うことや家族を伴った出張で業務を行うことなどからワーケーションという概念が生まれたが、国内においては自治体による企業誘致や移住政策の一環として始まったのが特徴と言える。
ワーケーションは機会と成長の新結合
最近では、働く時間や場所が自由な企業や個人も増え、ワーケーションのスタイルも多様化してきた。
ワーケーションをする目的も、もともとのWORKとVACATIONというものだけでなく、
WORK x Innovation
WORK x Collaboration
WORK x Education
WORK x Motivation
など、企業や個人の成長、地域や人との新たな関係構築を目指すものも増えてきた。
僕が冒頭でWorkationという表記推しと言ったのも、上記のような新しい意味性をワーケーションに期待するからである。
山梨県ワーケーションツアーの概要
今回、僕は山梨県が主催し、パソナJOB HUBが企画・運営する8月3日〜4日の山梨県ワーケーションツアーに参加してきた。
ワーケーションツアーのタイプは3種類
今日現在、全国のあちこちで地方自治体が主催するワーケーションツアーが実施されている。地方自治体の最終目的は移住であり企業誘致だが、その手前のゴール設定によりツアーの中身は大きく3種類に大別される。
関係人口創出を目的としたワーケーション体験のモデルツアー
事業創出を目的とした人材交流や地域課題の発見・体験ツアー
企業移転やサテライトオフィスの誘致を目的とした人材交流・体験ツアー
それぞれの種類によってツアーに組み込まれるプログラムが変わってくる。
例えば1点目のモデルツアーの場合は、企業や個人が休暇や会議・研修などをする際のワーケーション先に選ばれることを目的とするので、食事やアクティビティ体験など比較的、観光寄りの(VACATION色が強い)プログラムになることが多い。
2点目のツアーの場合は、短期的なワークショップからワーケーション前後のオンラインも含めた比較的期間の長いプログラムを組むことになる。
最後の3点目のツアーは企業に移転やサテライトオフィスの誘致をすることをゴールとしているので企業の経営課題と地域課題・ニーズのマッチングが重要となってくる。そのためオフィス見学や課題体験、課題マッチングのためのビジネス人材交流が主なプログラムとなってくる。
今回の山梨県のワーケーションツアーは、この3点目「企業移転やサテライトオフィスの誘致を目的とした人材交流・体験ツアー」にあてはまる。
ワーケーションツアー公募内容
今回のツアーは二拠点居住企業誘致マッチング事業の一環だったので、前年度に公開されている公募のワーケーションツアーの仕様部分を見てみると、やはり交流プログラムや事業創出が目的となっていた。
ちなみにこの公募はパソナJOB HUBが受託していて、今年度のワーケーションツアーも企画・運営している。
こういった公募を受託するのはパソナJOB HUBのような人材系会社、JTBや近畿日本ツーリストといった旅行系会社、または地元の地域密着型事業者などだ。
ワーケーションツアーの成功の秘訣
パソナJOB HUBは「JOB HUB LOCAL」という複業人材と地域企業のマッチング事業もやっていて、今回のプログラムもその得意領域を存分に活かし、ビジネスマッチングに特化したツアーとなっていた。
1泊2日のスケジュールで、地元3社の企業訪問をして意見交換をする。
アクティビティ体験も温泉も特に無し。企業訪問以外はバスの移動時間という、観光要素ゼロのひたすらストイックな内容だ。
訪問先企業は、産官学を巻き込みながら地元の起業家・創業支援をしている企業や、半導体製造とワイナリーの新規事業にチャレンジしている企業などで、とても面白い話が聞けたし参加者は皆、真剣にビジネスの可能性を探っているようだった。
今回の参加者は東京・神奈川等に拠点を持つ9社13名で、ほとんどが経営者や事業責任者だ。
そして訪問先も全員が地元企業の経営者なので、それぞれ決裁権もあるし自分事として質問や意見を出し合う。
パソナJOB HUBが強みとする、この人選こそが今回のツアー成功の最大の秘訣だったと思う。
魅力的な地元企業の経営者と、熱量の高いツアー参加者をぶつけて化学反応を起こし今後の関わりしろにする、とても充実したプログラムだった。
もう少し余白があっても良かった
ところで1泊2日というのは、結構な弾丸スケジュールだ。
参加企業の参加者は東京などの都市部に住んでいることがほとんどなので、1泊2日だと工程の半分くらいが移動時間となってしまう。
僕はこれまでいくつかのツアーに参加したことがあるけれど、大体2泊3日〜3泊4日であることが多かった。
適度に対話会や見学会を盛り込みつつ、リモートワークの「作業シミュレーション」をしようと思うと最低2泊3日はないと厳しい。
都心から3時間〜4時間ほどかかる地域でのワーケーションの場合は、往復の移動だけで合計1日は必要になってしまうので、
企業訪問や意見交換会を3、4件セットするともうほとんど自由時間がなくなってしまうからだ。
別に自由時間にバケーションをしたいわけではない(してもいいけれど)。
日常業務としてのリモートワークをする時間があると精神的な余裕ができるし突発的な業務にも対応しやすい。
またその土地の風景の中で普段通りのWORKをしていると、よりリアルにその土地の日常が感じられるのではないかと思うのだ。
なお、語弊がないように補足しておくと、今回のツアーでも日中2時間ほどのリモートワークタイム(フリータイム)はあったことを付け加えておく。
電源はワーケーションの生命線
ちなみに今回、企業訪問と昼食時間以外の日中時間はほぼバスの移動時間だったので僕は普段の日常業務をバスの車内でなんとかこなした。
観光バスだったので全席にUSB充電口がありスマホやWi-Fiルータの充電が出来るのは良かった。でもノートPCの充電が出来なかったのは痛かった。
僕は基本、メモは全てPCで取るので企業訪問時の意見交換などもずっとPCを使う。出来るだけコンセントがある壁際やOAタップの近くに座るようにしていたが、充電できない時は残りのバッテリーを気にしながら仕事をする必要があるのでヒヤヒヤした。
ワーケーションを企画される方におかれましては、
出来るだけ参加者のPCやモバイルデバイスが充電できる環境作りを心がけていただけると嬉しいです笑
一方、参加者の心得としては、
モバイルバッテリーを持参するのはもちろんのこと、PCも充電できるタイプのものを選んでおく方がよいと思う。
現代社会において電源はマズローの欲求五階層の下から3番目くらいに1階層追加したほうがいいくらいに重要なんです。
ワーケーションツアーの持ち物
1泊2日分の着替え
マスク、アルコール等の感染症対策グッズ
折りたたみ傘(徒歩移動などは必ずある)
PC、スマホ、ポケットWi-Fi(地方・山間部でもつながりやすいもの)
モバイルバッテリー(出来ればPC充電も出来るもの)
イヤホンマイク(充電不要の有線タイプもあるとベスト)
電源延長コード(コンセント遠い場合に便利)
電源タップ(同時充電に便利)
実はあると超便利でおすすめなのが電源延長コード+電源タップです。100円均一などでも売っているので数百円で揃うけれど、これがあるとかなり便利。
ワーケーション先はコンセントや電源口が少ないことが多いので、どんな時でも電源を確保できるように準備しておくと良いです。
一番良いのは本気のOAタップを持っていくことだけれどさすがにかさばるし重いので僕は1mの延長コード+4個口の電源タップを持ち歩いています。
DAY1(午前) 甲府
甲府駅前の圧倒的ハイクオリティなコワーキングスペース、CROSS BEに集合
山梨県ワーケーションツアー初日はCROSS BEから始まった。
CROSS BEは甲府駅前にあるコワーキングスペースだ。
駅から徒歩3分の場所にあり、コンセプトは【あなたの「なりたい」「やりたい」が交差する】。
オフィスビル1Fの路面店で、外から中の雰囲気が分かるのも初めて訪問する人には安心感があるだろう。
実は僕は前日に甲府入りしていたのでCROSS BEに現地集合したが、他の参加者は新宿駅からバスで一緒に移動していた。
ちなみに僕の前日は、清里でワーケーションをしていたのだけれど、それはまた別の話。
今回の滞在では、CROSS BEで仕事をする時間はなくツアーのチェックインにしか利用しなかったのだけれど、とても機能的かつ居心地の良いハイクオリティなコワーキングスペースだったのでぜひまた甲府に来たら利用してみたい。
というか甲府駅でリモートワークするならオンリーワンでここ一択ではないだろうか。
今回のツアーに僕を誘ってくれたパソナJOB HUBの平元さんが「まるで東京のコワーキングスペースみたい」と事前に教えてくれていたのだけれど、
なるほど言わんとすることは分かった。
CROSS BEは、1フロアの広さ400㎡、90席もある結構大きめの店舗だ。
最新のモダンなオフィスデザインが取り入れられていて、仕事内容やその時の気分に合わせて最適な席を自由に選ぶことが出来る、ABW(Activity Based Working)な設計となっている。
普段はフリースペースで作業し、オンライン会議の時は個室のテレワークブースに移動し、リラックスして作業したい時はソファ席でカフェのようにくつろいで仕事をする、など多様な働き方に対応できる。
また植物がふんだんに配置されていて、どこの席からも緑が視界に入るような設計になっている。
「人間は本能的に自然とのつながりを求める」というバイオフィリア(Biophilia)の考え方を取り入れたオフィス環境は、心身ともにリラックスすることから生まれる効果が期待できると言われている。
(生産性が6%、創造性が15%高くなるという研究結果もある)
こういったABWとバイオフィリックなデザインは都内のオフィスでもトレンドとなっていて、おそらく平元さんはそのイメージから東京のコワーキングスペースみたい、と言ったのだと思う。
ちなみに、都内のコワーキングスペースでも、この広さ、スペックを備える機能的かつ快適性の高いハイレベルなコワーキングスペースは少ないです。
あってもこのレベルだとドロップイン料金が1時間あたり1,000円くらいはするのではないだろうか。
それがCROSS BEだと1日いても最大1,760円である。
早速、山梨の良いところである「オフィスのコスパの高さ」を実感した。
CROSS BEのコミュニティマネージャー桐山さんの熱い想い
新宿からの移動組参加者と、今回の主催者である山梨県二拠点居住推進課の方達もCROSS BEで全員合流。
ついに、山梨県ワーケーションツアーが始まった。
まず最初にCROSS BEコミュニティマネージャーであり甲府への移住者でもある桐山さんから施設紹介。
桐山さんはもともと浜松のベンチャー会社でコワーキングスペース事業をしていたが、縁があってCROSS BEの立ち上げに関わることになったという。
今年4月で丸2年、3期目となるCROSS BEは、もともとは起業支援目的でオープンしたが、現在は移住や山梨県に関心がある人にも積極的にアプローチしている。
山梨県は移住が昨年初めて超過となった(総務省の2021年人口移動報告で、山梨県は転入者が転出者を上回る「転入超過」。 転入者数の対前年増加率は13.2%で全国1位)。
「初めて山梨に住む人や住みたい人たちへの入門編として、まず甲府にきて、CROSS BEで人とつないで、さらに甲府から他の地域へつないでいきたい」
と桐山さんは語ってくれた。
山梨県はコワーキングスペースが少ない地域なので、CROSS BEがハブになって人と人をつなぎ、縁をつくる交差点になる、そんな熱い思いが伝わってきた。
ツアー目的と、よくあるツアーとの違い
続いて今回のツアーの企画・運営をするパソナJOB HUBの山口さんからツアー目的の説明やスケジュールなどについて説明があった。
ワーケーションツアーは、山梨県二拠点居住企業誘致マッチング事業の一環だ。テレワークが普及し地方への拠点移転やサテライトオフィス開設が加速していることを背景として、二拠点居住を推進するために開設された山梨県二拠点居住推進センターが事業を展開している。
都心の企業に対し、サテライトオフィス開設などでの多様な働き方の推進やUターン・Iターン人材の確保、地域企業との連携による新規事業創出などの経営課題解決を目的として、各種の補助金や情報提供、コミュニティの紹介をしている。
ワーケーションツアーの主な目的は大きく3つある。
山梨県で事業開発や多様な働き方に関するアイデアを見つける
会社や事業を通じて山梨県での今後の活動を検討する
SNS等で発信し、山梨でのワーケーションの魅力をPRする
特に、このツアーで予定されている3社の企業訪問を通じ、事業者のビジョンや事業取り組みを聞いて意見交換で終わるだけでなく、参加者各自が事業者との関わりしろの提案をしてほしい、と説明があった。
ただ視察や話を聞くだけのワーケーションツアーも多い。
でもそれだけだと行って良かったね、で終わってしまう。
山梨県のワーケーションツアーは、そこからさらに関係作りまで踏み込んで、今後の活動につなげようとしているところがよくある自治体ワーケーションツアーとの大きな違いではないかと思う。
参加者は主に経営者や事業責任者
参加者9社13名(※3名は午後から合流)の自己紹介をしてチェックインは終了。
医療AIのスタートアップから不動産事業、データ解析やオンラインスクールまで参加者の企業規模や業界・業種は様々だ。
企業向けにデジタル化やDX推進をソリューションする事業の会社経営者や責任者が多く、地域企業の課題解決とのマッチングを意識した人選なのかもしれない。
(おまけ)甲府駅周辺のおすすめランチ情報
今回のワーケーションツアーはバケーション目的ではないとはいえ、やはりその土地の美味しい食べ物やお店を知ることはひとつの楽しみだ。
好むと好まないとにかかわらず人は食事を取らないと生きていけないし仕事もできないので、どうせだったら普段あまり食べることのないものや行くことができないお店を発見しておきたいものだ。
甲州といったらほうとうが有名なので、観光客に人気のお店「小作」でランチを食べることにした。ちなみに現地の人はほうとうはめったに食べない。
僕はほうとうを前日の夜に食べていたし、この日も記録的な暑さ(昨日は39.5度で全国一暑かったらしい)だったので、僕は冷たい平手麺でのどごしがよくてつるっと食べられる、おざらにした。
小作の平手麺はボリュームがかなりあるので満腹感もちょうどよい。
小作はCROSS BEからとても近い(店前の平和通りを渡った向かい側だ)が、密にならないように参加者は各自バラバラにランチに向かった。
パソナJOB HUBさんのおすすめグルメ
美味しいお店は地元に詳しい人に聞くのが一番、ということでパソナさんに教えてもらった情報をご紹介します。
甲府駅周辺でランチをすることがあったらぜひ行ってみてください。
【甲府駅前グルメ】
ちよだ
ほうとうのつけ麺バージョンの「おざら」が楽しめるお店。
おざらは冷たい平手麺に温かいつけ汁をつけて食べる山梨の郷土料理です。
具材も豊富なことから現地の方もこぞって食べに来るとのこと。
https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19000336/
奥藤本店 甲府駅前店
蕎麦と名物鳥もつが食べられる場所。
鳥もつは注文を受けてから作るスタイルなので出来立てを食べることができます。
おすすめは鶏もつセットか信玄御膳。https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19005771/
一刀斎
県庁の職員さんがお薦めするカレー屋さん
人気のためランチタイムは少し混む場合がある。https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19004155/
若鮨 甲府駅前店
パソナさん行きつけのお寿司屋。
ランチセット、海鮮丼などネタも新鮮でコスパ◎
https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19004030/
スルメ
雑貨屋と思わせるような外観、内観。
ランチは日替わりプレートや定食での提供ですが、夜は創作料理とワインが楽しめるお店。
https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19010419/
楽
(パソナさんの)山梨県の知人曰く、駅前でパスタを食べるならここ。おすすめは明太子、クリーム系。
席数はそこまで多くないですが、タイミングが良ければスッと入れます。
https://tabelog.com/yamanashi/A1901/A190101/19000318/
※おすすめコメントは全てパソナJOB HUBさんより。
前編はここまで
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