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28歳独身女性による“Z世代”体験レポ

「Z世代」とは。
日本では一般的に、1996年から2015年の間に生まれた世代と定義される。
特徴として、デジタルネイティブ・スマホネイティブでSNSの利用頻度が高く、モノよりも体験価値を重要視し、プライベート優先でタムパ(タイムパフォーマンス)が悪いことは避ける傾向がある。と、言われている。

Z総研が2021年6月に発表した『Z世代が選ぶ2021上半期トレンドランキング』によると、流行語は「はにゃ?」、流行った食べ物は「地球グミ」、流行ったモノコトは「TikTok」だそうだ。

正直、なにがなんだか、分からない。

日本人が会話の中で「はにゃ?」と発言するイメージが持てない。それどころか、スマホをフリックするこの指で「はにゃ?」と打ち込むことにすら抵抗感を覚える。なんだか、赤ちゃん言葉を話しているかのような感覚に陥る語感である。

地球グミはYouTubeやInstagramで見かけて、存在は知っていた。食べてみたいと思ったことはない。青々として巨大な、マシュマロを思わせる質感のグミの中から、どろりと溢れる赤いペースト状のソース。美味しそうとは思えない。むしろ、食欲減退効果すら感じる。

TikTokの縦長短尺動画には、面白さよりも「気忙しさ」を覚える。長年の動画プロデューサー経験により、16:9以外のアスペクト比に違和感を感じてしまう。

要するに。
Z世代の「おもしろいこと」が、まったくおもしろくない。分からない。
「こんなん、何が良いの?」と本気で頭を捻ることばかりだ。己が、間違いなく大人だ、と主張したい時の「今どきの若い子は」をから始まる皮肉ではない。本気で分からない。わかれない。

はにゃ?とか、わたしが10代の頃は、そんなこと恥ずかしくて言えなかったけどね。地球グミとか、まじマズそうだし。TikTokでバズって、将来何になんのさ?

理解不能だ。理解不能すぎる。
しかし、これから日本を担っていくのは間違いなくZ世代であり、そしてわたしが仕事で取り扱っている商品を買ってくれるのも、Z世代である。

「時代が違うから」「もうわたしは年取ったから」「だから、分からない」そんな大人のフリをした言い訳で片付けたくない。知らないことは何でも知る努力をし続けられる人間でありたい。

だから、Z世代に人気なモノコトを身をもって体験してみることにした。
以下は、わたしが実施した「Z世代体験」のレポである。

サンリオピューロランドで地雷系ファッションでTikTokを撮ってみる

『SHIBUYA109 lab.』が2021年9月に発表した「Z世代のファッションに関する調査」によると、Z世代は「体験」から逆算してファッションを選ぶ傾向があるそうだ。
遊ぶ場所や相手に合わせて着回しやテイストを選び、SNSに投稿したい写真や動画をから逆算してコーディネートを決める。男女で比較すると、女性の方が特にその傾向が強い。Z世代にとって、ファッションは自己表現であると共にコミュニケーションツールのひとつであるということが推測できる。

この感覚を味わうべく、以下の戦略・戦術を立ててみた。

目的:Z世代の感覚を体験する
戦略:イベントから逆算してファッションを選ぶ
戦術:親友と、
サンリオピューロランドに、SNSに載せるための写真撮りに行く

早速、親友に連絡をしてみた。
「今年のハロウィン、今時の10代コスしてピューロ行こうや」と連絡すると、30秒後には、「今時の10代」の写真が大量に送られてきた。流石わたしの親友である。大好きだ。

各SNSで #サンリオピューロランド と検索してみたところ、どうやら属性としては「地雷系」「量産型」とカテゴライズされるファッションを好むユーザーが多そうだということが判明し、親友とわたしの今年のハロウィンのテーマは「地雷系・量産型女子」に決定した。

「地雷系」と「量産型」は、どちらも10代を中心に支持されているファッショントレンドである。
まず「地雷系」は、「一見可愛いが、中身は病んでいる人」を表現するスタイルで、モノトーンを中心とした黒系アイテムに、網タイツやシルバーアクセサリーなどを組み合わせるゴシックなスタイルである。髪はブルーブラックやピンクなど派手な色、メイクは黒・赤色を基調とし、垂れ目と涙袋を強調する。サンリオのキャラクターでは「クロミ」が支持されている。

一方「量産型」は、「歌舞伎町界隈に存在する女性」が由来と言われている。白やピンク系で、フリルやレースの付いたアイテムに、白ソックスやリボンをを組み合わせるフェミニンなスタイルで、メイクはブラウン・ピンクを基調とし、こちらもまた、垂れ目と涙袋を強調する。サンリオのキャラクターでは「マイメロディ」「シナモロール」が支持されている。

アラサーヴィジョンで見ると、「地雷系」は『デスノート』のミサミサや『NANA』のナナ、「量産系」は『けいおん!』のあずにゃんや『シュタインズ・ゲート』のまゆしぃを彷彿とさせるファッションである。しかも、「量産型」は、大学1年生の前期に学内で見た記憶がある。確かに、量産されていた。

これらの情報をもとに、InstagramやTikTokで写真をかき集め、どんな「地雷系」「量産型」スタイルがサンリオピューロランドに映えるかを親友と考察した。
どんなワンピースを買うか、ネイルはどうするか、ウィッグは被るか否か、なるべく安価でゴツいシルバーアクセサリーを買えないか・・・など、約1か月かけ、検討・検証し、完成したのが以下である。

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普通に、めっちゃ可愛くね?と思った。
まだまだイケんじゃん。と、謎にモチベーションも上がった。
人生で初めてつけたリボンのアクセサリーは、頭にボリュームが出て小顔効果を感じた。ピンク色の髪の毛は、肌がワントーン明るく見えた。普段なら絶対に着ない白のワンピースは、お腹周りがスリムに見えた。
何よりも、「いつもと違う自分」新しくて、楽しかった

サンリオピューロランド内では、至る所で、何も無いはずの場所に行列ができていた。何事かと見てみると、おしゃれな壁の前で撮影をしているらしかった。
正直、壁とのツーショットごときに並ぶなんてバカバカしいと感じたが、何事も経験である。「壁待ち」の列に並びながら、スマホを向けられている被写体を分析する。
壁に向かって斜角に身体を寄せ、顔だけ前を向き、やや指を曲げた状態で両手を顎に添えるポーズが多い。カメラマンは、レンズが下に来るようにスマホを逆さまに持ち、加工アプリを使って撮影している。
それらのすべてが、なんのために行われていて、どんな効果を発揮するのか理解できぬまま、「物は試しだ」と取り敢えず真似してみた。

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これは…インスタ映えだ

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何も考えずにいつも通り撮った写真と比較すると、その差は圧倒的である。「壁待ち」の彼女たちは皆、「自分を可愛く見せる」プロなのだ。

初めは、ただの壁の前で写真撮るという行為に恥じらいがあったものの、30分後には「壁待ち」の列に並ぶひとりになっていた。そのうち、めちゃくちゃ愉しくなってきて、Z世代だらけのゲームセンターでプリクラも撮った。

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はにゃ?めっちゃ盛れて、きゃわなんだが〜〜〜〜〜〜🥺🥺🥺

サンリオピューロランドで親友と遊ぶために、いつもと違うファッションでおしゃれをした「可愛いわたし」を、もっと写真に残したい。せっかくなら、多くの人に見て欲しい。そんな想いに自覚した頃には、既に撮った写真の数は500枚をゆうに超えていた。
感情の赴くままに、普段は滅多に更新しないInstagram Storiesをリアルタイムで更新しまくった。勢いに任せて、TikTokにも転載した。

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あれだけ抵抗感があった縦長動画。投稿してみると、思いの外、わりと、バズった。

これは・・・気分がいいわぁ!


親友と一緒に笑い転げたこの1日、わたしは「デジタル(スマホ)ネイティブでSNS利用頻度が高い」「モノより体験価値」「プライベート優先」「タムパ重視」を、己の身をもって体感することができた。

コロナ以降、「友達と会って遊ぶ」という行為自体が「一大イベント」で、何ものにも代え難い「体験価値」となった。時々しか許されないイベントであれば、その貴重な一回を最大化したいと考えるはずだ。
だから、その「体験」から逆算してファッションを楽しもうとする。しかし同時に、ただ「友達と会って遊ぶ」ために莫大な予算を割くのは勿体無いという事も判っている。だから、気軽に手を伸ばせて、着回しなど使い勝手の良いアイテムを揃えたいと考える。良いモノよりも、使い勝手の良いモノを。

こんなに準備したのだから、「素敵な私」をもっと多くの人に見て欲しいと感じる。もっと多くの人に褒めて欲しい。だから、SNSでバズりたい。そしてもし「素敵な私」がバズったら、それは、日常生活で得られるどんな感動よりも刺激的で、同時に「素敵な私」になるための努力が認められた「成功体験」に繋がるのである。

一度この刺激を味わったら、もっとそれを味わいたくなる。だから、SNSでのバズという成功体験のためのイベントを欲して、より「バズる工夫」を凝らしたくなる―――

だから、
「SNSで人気のあの子」が輝かしく見える。「あの子」の模倣をしたくなる。「あの子」みたいになりたくなる。「あの子」の投稿で見たモノが欲しくなる。インフルエンサーのPR投稿から、モノが売れる。

このロジックを、初めて、感覚的に理解した。

「あの子みたいに、バズれたら。」そう願うのは、単なる承認欲求などではなく、Z世代なりの成功体験の蓄積の結果なのかもしれない。

もし学生の頃だったら。「バズる」というその感覚は、とんでもない快感だったかもしれない。アラサーの今となっては、週末のビールに勝るパワーは、ないけれど。

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