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引用日記㊵

ぜんぶのぜんぶは、いっぺんに。

 関西から出てきて神奈川県の大学にかよっていた頃、住んでたアパートは坂の途中にありました。その建物は二階の廊下からも橋のようなものが伸びていて、そのまま前の道へ渡ることができます。いや、そこまで珍しい風景というわけでは別にないんですけどなんか、へぇーって感じがするかなーと思って書いてみました。  ひさしぶりにそれを見にいったらちゃんとまだあったので写真に撮り、ついでにかつての近所を歩いてみると何度も買い物したなーと生活がおもいだされるスーパーや、一度だけ入ったことのある洋食

つづけること、まとめること。

 僕は2016年の秋から短歌を作りはじめました。今でもまだこの趣味には飽きていなくて、7年も続いているのは自分でも驚きです。ここまで趣味が定着するとやめることもあんまり想像できない感じになってきますが、逆に目標みたいなものはあまりなくて、1首できるごとにInstagramやnoteに載せて満足。という生活を送っているうちに1000首を超えるくらい短歌が溜まってきていました。  自分の作品が溜まってくると、ふつうはアルバムとか作品集を作ろうというやる気がみなぎるものなのかもし

連作川柳「幽閉」

ブレストから逃げてここまできた海だ 不実行したくない からだまっとく 延びに延びそのものになるリハーサル

連作俳句「無音」

茄子の味あつまれそうでむずかしい 夕凪に黒糖パンをあたためて 短夜はカオマンガイのなかにある  

庭、あるいは保坂和志論②

二〇二二年四月二十九日(金・祝) すごく雨  もう長いこと、日記を書けてなかった。ひさしぶりにこの青いノートを開いてみると最後のページは、今日と同じ四月二十九日の日記だった。ちょうど一年前の。すごく忙しかったわけでも日記を書くのが嫌になったわけでもなかった。でもいつのまにか中断してしまっていた日記を再開するには何か理由のようなものが必要な気がして、今日は一日じゅう強い雨がずっと降っていて、たぶんこの一年間で私はさびしいという気持ちを一度も抱いたことがなかったんだ。それはとて

転職、あるいはアケルマン映画祭

 9月2日、金曜日。仕事が終わって、私は勤務先の最寄駅からの最終電車には乗らず、すこし歩いたところにあるネットカフェ快活CLUBに泊まった。四角く区切られた空間で黒い座椅子に凭れながら、画面が明るすぎるデスクトップPCで「アケルマン映画祭」について調べる。2022年4月に東京で始まったシャンタル・アケルマン映画祭は日本各地を巡回し、そのほとんどはすでに終わっていた。しかし金沢市にある映画館シネモンドでは、まさに明日からアケルマン作品のいくつかが上映される。それを確認した私は、

連作川柳「替え歌」

開発のあとに引っ越してきた街 手で書いたのがだめだったみたいです 突然にやってきますよ腰痛は

連作川柳「展開」

褒められたのでやめたんだ 君もそう? どんな今日だってありえるのに歯医者 やわらかいものがきらいで海もきらい

連作川柳「Word On The Water」

乾いたらまた洗う布 才能の雨 みずくさい言葉で唯一無二を乞う さようなら具体的にはまたここで

連作俳句「ニューポピー」

とりあへず月のモノマネを見せてよ 義務教育として赤い羽根を捨てる 共感もひややか静電気をのこす

連作川柳「君の九」

おべんとう開けてフレンドパークⅡ 特別な感じ たのしい消去法 コンビニがうつくしいって教えないから このひとはうまくわくわくできるひと 吉祥寺いかないままでもよかった そのうちのひとりにいれてみてもらう

連作川柳「オープンマインド」

真似されている発声がちょっとでぶ 川柳は忘れた頃にやってくる ドリルっていうか薔薇です黙ります 起きながら寝ている きみにおしえたい。

連作俳句「待ち遠しい」

青蜻蛉そろそろ変化が必要だ ともだちの多さ かかとの爽やかさ ケインズか秋思のせいにしてしまえ