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連作短歌

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2022年7月の記事一覧

連作短歌「最近はもう床」

忌憚なくと言われてほんとに忌憚なく言ってしまってススるラーメン 休憩に一瞬見れた夕空がきれいなだけでもういいんだな 説明をしてみるのならあなたから依存されたいという欲望

連作短歌「ガレージ」

スケジュール通りいかない性格で植えて育てるアボカドの種 わがままを言うのがうまい同級生みたいな一人旅を目論む ギャグみたいに言ってしまうのが悪い癖 « 生きすぎて三人になりたい »

連作短歌「ひとの」

秋なのにタルタルソースの味がして私は離婚しようと思う 出遅れてしまってずっとそのロスを海へ放ってしまえずにいる 破茶滅茶になりたいような金曜に誘ってほしいと思ってるだけ

連作短歌「気が合わない」

八月になった時点で八月はもう埋まってるそういうドラマ もうすでにめんどくさくなる気はしてる いつもならここで身を引いている お気に入りの椅子に名前をつけて呼ぶ 君の恋人と君の生活

連作短歌「気が合う!」

きんきんに冷えた液体ならなんでもいいから相手に流しこみ合う まえ会ったときとは逆の価値観をお互いに言い合った気がする 自分から他人を誘うなんてこと一年前にはなかったのにな

連作短歌「崖」

なんとなく近くに住んでいるような感じでとけてゆくかきごおり 強引をわざとやってるはずだったけどそれは普通にただの強引 わかってる何年いても同じことダイイチインショウ命ってこと

連作短歌「数歩前」

二年後になったら全部忘れてるくせにそんなに笑うなよって 好きになる人がバーテンダーなのかバーテンダーを好きになるのか 前提が違う会話になっていたことに六日後の夜に気づいた

連作短歌「ミラーリング」

よし決めた数年前のようにまた関係ないと思って生きよ 片方はニセモノですと漫画ではありえなそうな声が可愛い 間違えて座ってしまわないように立っている、いや、君に会いたさ

連作短歌「髪を伸ばす」

今はもうねまきになっているかつてとても褒められていたパーカー あのよるのぼくはたしかによっぱらいだったけどうんよっぱらいだね ひさしぶりに会うと見た目が変わってて気づかなかったと言われる聖夜

連作短歌「よれよれ」

とても気をつけながら会いにきてくれた、あるいはぜんぶ見当違い 思い出すときの快感に似たもの君がときどきくれるやさしさ エスコートされてるなって思うとき地元の火山灰の手ざわり

連作短歌「28.29.30」

もう最後なのでなんでもいいような気分がたぶん功を奏した 長い目で見ればって君は言うけどさその目はどこを飛んでいるのさ なぜこれでどうにかなるって思ってたのかも今からすれば謎だし

連作短歌「ゆるしすぎてる」

ゆるゆるのワンピース 愛 紙袋コレクションだけ見に来てほしい 保土ヶ谷にまだ住んでいる安心を今ならお金を出して買いたい 秋だから秋になったら秋までは あなたはいつも言い訳にして

連作短歌「里」

舞っているものをなんでも好きになる夢のなかでの自分が聡い 思いつかなくなってきた台詞にも隠されている本音とうなじ 結局は自分のためになるからとしていた我慢、致死量となる

連作短歌「そういうところ」

俺もそうだからわかると励ましてあげられるなら近づけるのに 意味のない番号を振る窓の下、祭りの赤が通ってく昼 ふだんなら言うまでもない悶々がその日はすこし漏れて、しまって、