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頸部の神経解剖が重要!頭痛の現代医学的な原因

こんにちは!浦和と自由が丘で鍼灸師をしている萱間です。
前回はお薬や鍼灸をはじめとする各種施術が対象となる一次性頭痛に分類される片頭痛と緊張型頭痛の特徴についてお話をさせていただきました。 特に、片頭痛の特徴としては、片側の痛みや脈打つような拍動性、視覚前兆といったものが一般的には認識されているのですが、実はそれらよりも重症度や過敏さが何よりも片頭痛を特徴づけるものなのでした。きっぱりと片頭痛と緊張型頭痛は分けられないという理解も鍼灸師の臨床上は重要です。詳しくはこちらをご覧ください。

さて、本日は一次性頭痛の代表である片頭痛の原因についてのお話です。

片頭痛は脳出血や脳腫瘍などのように、脳血管が破けたり、脳組織に異常な細胞が増えるというような、頭部の組織に形態的な異常があり痛みが生じているわけではありません。(脳出血や脳腫瘍などのこのような病変を器質的病変といいます。)

ではいったい、何が痛みの原因なのでしょうか?? もしかして本当に、「頭痛のタネ」となる悩みごとが原因だったり・・・ 2回に渡って東西医学から解説していきます!
本日は現代医学的に考えた原因についてです。


原因で有力なのは三叉神経の過敏さによるものであるという学説

一次性頭痛の原因は正直、よくわかっていません。 いきなり話の腰を折ってしまうような展開ですが、本当の話なのです。 ということで、今日のブログはここまでです(笑)。

というのは冗談で、原因ははっきりとはわかっていないものの、世界でも社会問題化している頭痛はその研究も日々行われています。

社会問題化とは具体的には下記のように現れています。


片頭痛は個人にも社会にもおよぼす影響は大きい

  • Global Burden of Disease 2016 において、片頭痛は障害生存年数(years lived with disability : YLDs 障害とともに生きる年数) の観点から全疾患中の 2 番目にランクされている。     (Lancet. 2017; 390: 1211-1259)

  • 日本での経済損失は年間2兆円(Shimizu T et al. J Headache Pain. 2021; 22(1):29.)


片頭痛そのものは死に至らしめるものではないとしても、月に何度も、人によってはほとんど毎日頭が痛いという状態はきついですよね。。

小見出しで上げた三叉神経について説明します。
私達のからだの感覚はすべて神経を介して脳に伝わります。

風が皮膚を通り抜ける感覚や、マッサージされて気持ちいいという感覚、熱々のポットの取手に触れて熱いという感覚などなど。

頭が痛い、という感覚も神経が伝えま す。頭や顔面の感覚は、三叉(さんさ)神経という脳から出ている神経(脳神経といいます)の一つが伝えます。したがって、頭が痛い、という感覚は三叉神経が確かに感じていることなのです。

それでは、片頭痛のように一次性頭痛では、頭の組織が損傷を受けていないにも かかわらず、なぜ痛みを感じるのでしょうか

現在では、理由ははっきりとはわかっていないのですが、何らかの理由により三叉神経が過敏な状態になってしまうために、通常は感じない、脳を包んでいる髄膜や髄膜血管に分布する三叉神経が、通常の血管の拍動による血管の拡張でも痛みとして感じてしまうという状態にあるのではないかと考えられています。
この学説のことを三叉神経血管説といいます。

頭痛を理解するための重要な解剖学的構造 三叉神経頸髄複合体(TCC)

その三叉神経を過敏にしている、はっきりとした原因はまだ不明ですが、真犯人と疑ってよさそうなものがあります。
なんとそれは首のコリです。

こちらの図で説明します。

私達の感覚は神経が伝えると先程お話しました。その神経が脳に情報を届けるとき、神経一本一 本が直接脳と連絡しているわけではありません。何箇所か中継地点を経由して、最終的に脳の大脳皮質というところに情報が届けられ、それぞれの感覚の種類として認識されます。
その最初の中継地点がいわゆる背骨に収められている脊髄です。


赤色で示されてるのが脳とそこからつながる脊髄。これらはそれぞれ頭蓋骨と脊椎骨(=脊柱)の中に収まり保護されている。脳と脊髄を合わせて中枢神経系ともいう。

頭や顔面、頭の骨の中にある髄膜の感覚を伝える三叉神経の情報は、首の部分にある脊髄(=頸髄:けいずい)で中継されます(正確には橋や延髄という脳と脊髄の間に位置する脳幹部から頸髄までの領域が中継地点となります)。後頭部と首の皮膚や首の筋肉の状態を伝える神経も、同じ様に頸髄へ情報を届けます

つまり首には、このように、三叉神経の情報と、首の皮膚や首の筋肉の状態を伝える神経とが中継地点で合流する構造が存在するのです。このような構造を三叉神経頸髄複合体(trigeminal cervical complex: TCC)といいます。

首がこっていると頭痛が出やすい状態にある

この構造は、なぜ首のコリが頭痛の真犯人となるのかということを説明してくれます。

首がこっているという不快な情報は、本来は首の状態に由来するものですが、三叉神経髄複合体という構造のため、脳は三叉神経の情報と認識してしまいます

そうすると、首のコリを三叉神経の情報(=頭や顔面、頭の骨の中の感覚情報)として認識するため、もともと三叉神経が過敏な状態であれば、その情報は痛み(=頭痛や顔面痛)として認識され、さらに過敏な状態を悪化させてしまいます。

あるいは、首のコリが慢性的にある場合は、首の状態に由来する不快な情報が三叉神経の情報として入力され続けるため、結果的に三叉神経が過敏な状態を生み出してしまうとも考えられるのです。

こういった理由から、そもそも三叉神経が過敏になる原因があるとないとに関わらず、首のコリがあることにより、頭痛が出やすい状態になっていると考えられるわけです。

こちらの動画では三叉神経頸髄複合体ついて解説してあります。頭痛に対しては結果的に頸部筋の過緊張を緩和させるというのが頭痛の鍼灸治療の超基本方針なのですが、三叉神経頸髄複合体はその根拠にもなります。

さて、それでは、頭痛のタネとなる悩み事は、原因となりえるのか。

これは現代医学では説明がなかなか難しいところですが、東洋医学では立派な原因となのです。次回は東洋医学で頭痛の原因をひも解いていきます、お楽しみに!

この記事の執筆者


萱間洋平 かやまようへい 1980年浦和生まれ
神奈川県立横浜緑ヶ丘高校卒業→慶應義塾大学理工学部物理学科卒業→製薬会社勤務→鍼灸あん摩マッサージ指圧師免許取得→鍼灸学校教員免許取得→慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了→慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師(鍼灸外来)→ヘルスケアデザインラボ代表
ランニングと料理とサウナが好き

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