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読書初心者にもオススメな本

さて、今回の内容は本を日常的に読む習慣がない人に対してのお話です。

読書とは案外難しい趣味です。様々なジャンルに難解な漢字、特徴的な文体、その他の要素が複雑に絡み合うことによって、読んでいて腰を折られる感覚を覚えてしまうものです。

ライトノベルは本の中でもとても読みやすいジャンルで構成されています。これは主に小中学生を読者層に置いているからですね。しかし、ライトノベルは作品の方向性は似たり寄ったりで読んでいるとマンネリ化してしまうこともしばしば。

そこで今回はライトノベルも一部含めた初心者の人が読みやすい小説をジャンル別に紹介したいと思います。

青春モノ

『氷菓』

最初に紹介するのは米澤穂信著の『氷菓』です。米澤穂信は直木賞を獲得した事で話題の中心に立っている人です。この『氷菓』は彼のデビュー作です。

この作品の凄いところは、洗練されすぎて不純物が見えない程に繊細な表現力です。作家において、会話文以外の表現力に富んでいる人は珍しくありません。情景描写に優れていて、その光景が脳裏に浮かぶ文章を書く人は相当数居るのです。彼の情景描写もとても洗練されていて感嘆の息が漏れる程です。

しかし、彼の真髄はやはり会話文でしょう。彼の小説の中ではキャラクターが生きている、恐らく『氷菓』を読んだ人は皆一様にしてそう感じるはずです。キャラの特徴が際立っている、というだけではありません。もちろんそれも多分にしてありますが、それ以上にキャラクターが“生きている“。

セリフ回しやテンポ感、そして妙にくどくないユーモア。学生の取り止めのないお喋り、日常に見え隠れする淡い出来事、誰しもが憧憬の念を抱くような眩しすぎないそんな青春がこの小説には息づいています。

また、『氷菓』は「古典部シリーズ」の第一作に当たっている小説です。2022年現在では計6巻まで続いているので、ぜひ読んでみてください。ちなみに京都アニメーションからアニメ化もされているので、小説と見比べるのも面白いですよ。

『響け!ユーフォニアム』 シリーズ

分かる人には分かりますね。また京アニ(京都アニメーション)関係か、と思った人もいるでしょう。しかし、待ってください。選んだのには理由があります。

この小説は武田綾乃著の高校吹奏楽を舞台とした作品です。ユーフォニアムというマイナーな楽器を弾く主人公が吹奏楽の大会を中心として人間関係や環境に対する苦悩を抱えつつ、それでも前向きに楽器と向き合っていくという内容です。

この作品は、それはもう読みやすい。その理由は過去から現在まで擦られ続けてきた形式を採用しているからです。その形式とは、「友情・努力・勝利」です。皆さんも1度は耳にした事があるのではないでしょうか。そうです、某有名少年雑誌の表題ですね。

この作品は基本的にこの表題に沿った展開が繰り広げられています。団体競技である吹奏楽では様々な人間模様が存在しており、時に衝突する事もあります。しかし、その苦難を乗り越え、より強い絆を育む内容は読んでいて引き込むモノがあります。

また、情景描写にも富んており、中でも比喩表現、暗喩は何度も読み返したくなる部分があります。まるで五感を刺激してくるかのような表現は、読み手を小説の世界に引き込む事は間違いありません。

今回は初心者向けということもあり、アニメ化されているという点も大きな評価ポイントとなっています。最初から本はちょっとキツい、という人はアニメから入って、その後に小説を読んでみると情景が想像しやすいと思います。

SF

『マーダーボット・ダイアリー』 シリーズ

次はマーサ・ウェルズ著のSF小説である『マーダーボット・ダイアリー』です。この作品は先に紹介した2作よりも若干読みづらい気があるかもしれません。しかし、硬派なSFの中では相当読みやすい部類の作品なのでここで紹介したいと思います。

この作品の特徴は主人公の濃すぎる性格でしょう。自我が芽生えた警護ロボットである主人公が、守りたい人のために戦いに身を投じていく、という内容の作品です。

題名にもあるように、これは主人公の備忘録的な進行をしていきます。日記を書いたことのある人なら想像しやすいかもしれません。多くの人は日記を書くと、当然私や僕が主語になってきます。省略することも度々ありますが、概ね自分の視点から書かれるものが日記です。

しかし、この主人公の一人称は私でも僕でもないのです。それでは何か。弊機、です。元々企業に属していたロボットである主人公は自らを会社の所有物として認識していました。そしてその状況から皮肉の意味を込めて一人称を弊機としているのです。

なかなかなブラックなユーモアですね。そのユーモアのセンスは何も一人称に留まらず、作品内で至る所に高頻度に出現してきます。これが相当に面白い。

SFとしての完成度も高く、SF小説の最高賞であるネビュラ賞やヒューゴ賞も獲得していることから、面白さは保証されているもの同然です。硬派なSFを読んでみたいと思った人はぜひ読んでみてください。

ホラー

『闇祓』(やみはら)

辻村深月著の作品である本作は、純然たるホラーを爽やかでもありつつ、ベットリとした気色の悪さで書かれた異色の作品です。

この作品、スゴイです。何がスゴイって、恐怖という感情がどのように煽られるのか、その造詣の深さが異常です。全く“理解”に苦しむほどです。これ褒めてます。

小説において表現が豊かな作品と難しさにはある程度の相関関係があります。表現の意味を理解しようとして試行錯誤してしまう事もしばしばあるでしょう。

表現は物語の深みを作り出す一方で、一部の感性を切り捨ててしまっています。理性で理解しようとする過程によって感性が疎かになってしまう。このような現象が起こってしまうのです。

では、この小説はどうでしょうか。この小説は一見するととてつもなく淡白な文章で構成されています。一文一文を読んでみると、小学校の国語の教科書のお話かな?と感じるほど。物凄く綺麗で、簡潔に表現されているのです。

しかし、だから良い。この簡潔さはホラーとの親和性がとても高い。本能的な恐怖、直感的な危険、それらは人体の反射現象です。理性は介在の余地がありません。難しい言葉をつらつらと並べられても、恐怖心は薄まるだけです。

そう考えると、この簡潔な文体は恐怖心を煽るのにはもってこいなんです。読んでいて背筋が凍る感覚を与えてくるこの作品は、読む劇物とも言えるでしょう。

一度淡白な文章と言いましたが、物語を通して見てみるとその印象はガラリと変わります。緻密に計算されたその闇ハラ(闇ハラスメント)に、きっと読者の心にも闇をもたらすでしょう。

ライトノベル

『狼と香辛料』

最後に紹介するのは、支倉凍砂著の『狼と香辛料』です。言わずと知れた名作ですね。しかし、読んだことのある人は多くないかもしれません。その理由は、いい意味でラノベっぽくないからです。

ファンタジーをジャンルとして据えているこの作品は、しかし、剣や魔法はほとんど出てきません。転移転生の類でもありませんし、主人公最強なわけでもありません。主人公は一介の行商人なのです。

行商人である主人公はひょんなことから愛麗しい少女の姿をした狼の化身、ホロを同行者にしてしまいます。彼女は何百年も前に残していった故郷に戻りたく、主人公の旅に同行させて欲しいと言いました。そうして物語が進んでいきます。

起こる事件の多くは商売に関する話。金貨の鋳潰しであったり、為替を使った儲けであったり、その事件によって主人公たちは経済的に命の危険に晒されてしまいます。しかし、商人という者は機転が効くもので、2人でなんとか危機を掻い潜っていきます。

そんな事件の中で2人は衝突する事もあります。しかし、雨降って地固まるといった言葉もあるように、2人は絆は何者にも壊せない程に強固となっていきます。

今作の魅力はやはりメインヒロインであるホロの可愛さでしょう。筆者の主観が入りますが、魅力的なヒロインランキング堂々の一位です、はい。閑話休題。

『狼と香辛料』の良さは他の作品では得られない話の展開にあるでしょう。唯一性とでも言いましょうか、この一風変わった切り口から展開される物語は、他の作品には見ることができません。小説としての完成度も高く、非常に読み応えのある作品です。

一昔前にアニメ化もされた背景があります。そして、なんと!現在では完全リメイクのアニメ化も決定しているそうです。これもこの作品が愛されている証左ですね。皆さんもぜひ読んでみてください。

まとめ


さて、あんまり挙げすぎても困ると思うのでこの辺にしておきましょう。

本を読むという行為には技術が必要です。本を楽しむ技術ですね。やはり技術というものは研鑽なくして身に着くことは出来ません。しかし、本来は小説を読むという行為は娯楽です。楽しみながら本を読む技術が身に着いたら一石二鳥ですね。この記事がその一助になれたらとても嬉しいです。

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