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[存在記録#3]ある人間の話

人は言った。かの革命家は死後真面な世界に行かないと。ある少女は事故で亡くなった友を思い墓参りをした。死が当たり前に在って、けれども一度きりのそれの後に何があるかを知る者は生者で居ない。だから皆、死後の世界を好きに想像する。きっと私は天国に行く。きっとあいつは地獄に行く。きっと、きっと。そうして空想し、夢を見て、自己満足に人生を歩み。満たされたり、満たされずに死ぬ。知らないから、期待が膨らむ。悪い方にもいい方にも。神はきっと人間を愛している。でなければ創造などしない。そう言った奴もいた。そうして己は真っ当に生きたのだと、報われてしかるべきだと、厚かましかった人間もいた。だから、飽きてしまったのだ。呆れてしまったのだ。選別者は目を伏せ溜息を吐いた。選別者である自分を神だと誤認して縋りつく者、怒りをぶつけるもの。天使だと思いなぜか下に見るもの。様々なものがいた。ただ一度顔を合わせるだけ、そして生きてきた軌跡を見て選別する。そうしたらもう二度と会うことはない。そう思っていても、酷く疲れた。つかれてしまった。ああ、神よ。創造主よ、私にはこの役目は重すぎたのかもしれない。余りに多くを見すぎた。
「あの……」
閉じていた目を開けると小さな少女が居た。
「ごめんなさい、ここはどこですか?」
「……」
何も答えない私に少女は慌て始める。
「えと、えっと。ごめんなさい。お口ないから喋れないの、ですか?」
「……喋れるよ」
「わ、すごい。きれいな声ね、ですね」
くりくりとした瞳を輝かせ慣れないのだろうが丁寧に喋ろうとするのを頑張る少女に私は何となく、軌跡をみるのではなく。少女自身の様子を見てみる。傷だらけの体。きっと虐待死だろう。舌足らずな喋り方にボロボロの姿は今までの私なら躊躇することなく下に堕としていた存在。記録する価値はなく、寧ろ存在が負の遺産である少女を何となく、疲れていたから会話をした。
「君には綺麗な声に聞こえるのか?」
「うん、とてもすきとおって。ひくくて、おちつく!」
「そうか。君も元気で素敵だね」
欠片も思っていない事を言ってみると、これまた嬉しそうに笑った。
「えへへ、そんなこと言われたことがない。ありがとう、神様」
「私は神様ではない。何方かと言うと神様の部下とか、使いとかそこら辺が正しいかな」
「う~ん。むずかしい、ね」
「そうだね。君にはまだ早い」
「なら、めめさまってのは?めがとてもきれいだから」
こんなにも疲れているのに綺麗だと、そう言う少女が私には異様に輝いて見えた。羨ましい。この役目を持って生まれた時から、数々の人生を見た時から失っていた。嫌、最初から持ち合わせていなかった希望を持つ、期待をする、夢を見るという要素。酷く眩しい、眩しくて瞳を閉じる。
「あれ、めめさまどうしたの?」
「……さようなら、眩しい少女」
「なあに?」
ぽたりと一つの水滴の音がした。次に目を開けた時、少女の姿は既に無かった。