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作品解説 ver.1

 こういうの、そんなに好きじゃない人も結構いる気がします。どうも灰染よみちです。じゃあなんで書くって、僕はこういうの読むの割と好きなタイプだからです。身勝手だね。というわけで作品解説の方をさせていただくわけですが、今回は #色彩染まる物語 の作品を取り上げさせていただきます。
 と言いつつ、作品の内容というよりは、どうしてその色でそのテーマの内容を書いたのかという話がメインになっていくと思います。ver.1では『枯れない観葉植物』『アプリコットのタルト』『秘匿』の3作品に触れていきます。どうぞよろしくお願いします。


◯『枯れない観葉植物』

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 こちらの作品のテーマは「代わりの存在」。Xの方で投稿しましたの後に書かれているのが人物像となるのですが、そちらは「身代わりが欲しくて」です。
 さて早速ですが、小学生の頃、図工の授業でみなさん絵の具を使ったと思います。その時に絵の具セットの中に入っていた色、恐らく緑ではなくビリジアンだったのではないでしょうか。どうやら絵の具セットには「混ぜて作ることの出来ない色」が優先的に入れられるらしく、ビリジアンから緑は作ることが出来るけれど、緑からビリジアンは作ることが出来ないそう(もちろん別の色からも作れない)。聞いた話ではあるので実際にどうなのかは分かりかねますが、そういう意味で「代えの効かない色」のひとつと言えるでしょう。この作品はそういった要素から着想を得ました。合わせて、代えが効かないことを気にしてそうという主観も合わせています。確か白とかも作れなかったはずですが、白で代えが効かないよねはちょっとあからさま過ぎるかなと。
 そして、この作品で重要な役割を持たされているのが「フェイクグリーン」です。「都合が良い存在」である一方で「代わりの多い存在」として、主人公の視点で描いています。ただあくまでも自分自身としては、その考えを否定したく最後に「他の物よりも少し色が濃かったことに、……気がついた。」の文を入れています。どういう解釈をするか人それぞれで良いと思っていますし、答えをこちらで明示するのは良くないとも思っていますが、本当にフェイクグリーンは「代わりの多い存在」と決めつけていいのか、考えてもらえたらなと思います。これは何をもって「代わり」とするのかによっても変わってくる気がします。

(R0G137B105)


◯『アプリコットのタルト』

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 こちらの作品のテーマは「偽物」、或いは「本物と偽物」。人物像を表す文が「偽物に縋りたいだけ」です。
 杏って見た目が桃と似ているよね、から着想を得ました。色の名前からテーマを決めてかかるのは良くないなと思っているのですが、流石に杏の色だとされている以上、杏そのものに触れないのは失礼でしょう。杏という果物、先ほど述べた通り小ぶりの桃と言えるくらいには桃と似ています。ただそれはあくまで見た目上の話。杏そのものの持つ働きを見ると、ちゃんと別物だと言えると思います。杏は桃の類似品でも偽物でもない、先ほどの「フェイクグリーン」の役割と似たような立場を持たせています。
 そして杏色の色味自体の話もしましょう。今回この作品の主人公はアイドルです。アイドルにはおおよそイメージカラーというものが存在しています。推しのイメージカラーのペンライトを持って応援する、推しのイメージカラーの物に推しを見出してグッズと一緒に飾る。ある意味アイドル側にとってアイデンティティとも言えるでしょう。基本こういうのって赤とか青とかピンクとか一般的な色であることが多いですが、今回の主人公はそのイメージカラーが杏色です。杏色自体凄く可愛らしい色で、衣装がこの色を基調に作られていても違和感はない、お似合いでしょう。ただ、先ほど並べた色と比べるとパッとしない、人数の多いグループの後の方の色であるようにも思えます。もちろんこれは実際がどうとかは置いておいて、イメージでの話。杏色がイメージカラーのアイドルは実際にいる訳ですし、その人を悪く言いたい訳ではありません。今回の主人公がそう言ったイメージに、しがらみに縛られてしまっているだけ。でもそれを含めての人間性ではないでしょうか。
 長くなりましたね、最後にまとめましょう。この主人公の人物像は「偽物に縋りたいだけ」でした。そう、「縋りたいだけ」なのです。杏色は言い訳に過ぎません。ですが言い訳でも、彼女の色です。

(R247G185B119)


◯『秘匿』

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 こちらの作品のテーマは「秘めごと」。人物像を表す文が「私の人生秘めごとばかり」です。
 今回この作品についてはGlueさんの楽曲、『シイクレット・フィル』から少しインスピレーションを受けて制作しました。秘色の解釈を秘めている色として作品を書いています。元々の名前の由来は神秘的な色って感じだったりするのですが、秘めるということを絡めた方が書きたいものを書けるかなと思い、秘色=秘めている色でいきました。その上で秘めるとは何かの部分でオリジナリティを出せたらという魂胆です。ちなみに、秘色という色を知ったのもこの曲のおかげだったりします。頭が上がらないですね。良い曲なので、そちらも是非聴いてみてください。
 さて、作品自体についてもう少し詳細を。この作品の主人公の人柄は、冒頭に書かれているもので説明しきっているところがあります。「私には隠しごとがある。隠しごとだらけだ。多すぎて、私からこぼれる言葉のどれが真実でどれが虚実なのか、どうにも判然としなくなっている。」隠しごと、秘めごとをするということは本当のことを言わないということであり、それは同時に嘘をつくことでもあります。作品中で主人公は気を遣って嘘をつく描写もあります。ただその一方で、どちらかと言うと「あれこれ考えてしまって言えない」って場面の方が多いです。主人公は意図的に隠しごとをするというより、正解に、真実に固執しすぎるあまり分からなくなって秘めてしまう。感覚的にはどうも生きられない人物なのです。そういった意味では他の登場人物、後輩と部長は主人公の全く逆、感覚的に生きている人物です。主人公の怖がる「嘘をつけない人」なのかはともかく、「秘めごとをする必要のない人」ではありますね。
 最後に、作品の終わりの「私はたまにはカフェに行きたいです」の言は後輩のものという意図で書きました。投稿してからちょっと分かりにくいかもなぁと思い、少し反省しています。解釈は人それぞれで、主人公の発言だったり、主人公の心の声だったりと捉え方は様々で良いと思いますが、取り敢えず私は後輩の発言という意図で書いたとだけここに記しておきます。後輩が主人公と違って如何に物怖じしない、思ったことをすぐ発言する存在なのか、そしてそんな存在が主人公にとってどれほどのものなのか、示めそうと思った形です。もちろんどっちが正しいとかそういったものではありません。あくまでも、それぞれの個性でしかないのだから。

(R199G221B216)



 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
 ver.1とありますが、また作品解説をするとは限らないので、そこはご了承のほどお願いします。作品自体はまた投稿していくつもりですが、自分が気分屋であることをつい先日証明してしまったばかりなので、自信のないところではあります。期待せず、お待ちください。
 それでは。