見出し画像

推しが一人で行ったポルトガルに、私も一人で行った

ポルトガルに一人旅をしたことあります!
って言うと、決まって「なんでポルトガル!?」って聞かれる。

逆の立場だったら、絶対に私も聞くから気持ちはわかる。
でもちょっと答えにくい。
だって、私の大好きな坂本真綾さんが、37日間のヨーロッパ一人旅をした最終目的地がポルトガルだったからって単純な理由なので……。

「私、この仕事いつまで続けるんだろう……。」
あの頃、社会人になって2年半。
たった2年半。なんて忍耐力のない人間なんだろう、と自己嫌悪しつつも耐えられず退職を決意した。

退職する時、悩みに悩みすぎてどうせ辞めるんならどっか行きたい。
そうだ、海外一人で行っちゃおう!
女子一人旅ならなるべく治安がいい場所がいい。
それならば、真綾さんが行ってたポルトガルしかないでしょう!
と、仕事を辞める勢いで一人旅を決めた。

坂本真綾さんが一人ヨーロッパ旅をつづったエッセイ「from everywhere. 」はボロボロになるぐらい何度も読んだし、オーストラリア留学にも持って行った、お守りみたいな本。
「一人で海外旅行するなんて真綾さんすごいなー!! 留学に行けるなんて思ってもみなかったけど、さすがに一人で海外に行くことはないんだろうな」
と思っていたのに、まさか行くことになるとは……。

留学では同級生たちと助け合い、優しいホストファミリーに支えられてなんとか生活できた。
私の英語力は、中学生以下かもしれない。
不安しかない。
不安すぎて不安すぎて、見送りに来てくれた友達に「行きたくない〜!!!」って泣きついて苦笑いされたっけ。

入国までにいくつもの試練を乗り越え(英語力のなさでつまずいた。原因はそれしかない)ようやくホテルに着いたものの身も心もクタクタで、しばらく部屋から出られなかった。

一人旅やっぱ怖すぎ!
なんで一人旅なんか来ちゃったんだよ!
命知らずの大バカもの!
まともに英語喋れないくせにー!!!!
と後悔の嵐。

チキンな私は接客されるのが怖くて4泊7日の旅行中、まともにレストランでご飯を食べられなかった。
「旅の恥は掻き捨て! もうすでに恥ばっかかいてんじゃん! レストランぐらい入りなよー!!!」と過去の私に言いたい。
現地のおいしいもの食べるなんて、旅の醍醐味なのに!!!!

初日はホテル近くのケバブ屋でケバブを頼み、店員さんが英語で「日本人!? 日本に行ったことあるよ〜ナントカカントカ」と話しかけてくれたけど、当然のことながら全く聞き取れず苦笑い。
店員さんも察して気まずそうな顔。
会話終了。

もおおおおおお申し訳ないいいいいい!!!
英語喋れない自分に自己嫌悪……。
ホテルに帰って落ち込みながらケバブを頬ばる。

ケバブ。おいしかったけど緊張して胃が痛い。食べきれなかった。

別の日、カジュアルなレストランに入ったら客が私だけ。ゴクリ。
緊張が走る。
メニュー表にはハンバーグのシリーズがいろいろ載っていたので、とりあえずベーシックっぽいやつ頼んだら、コ!! レ!!!

ハンバーグとポテト。シンプルイズベスト……?

必死だったから記憶がないんだけど、ケチャップとかもらえなかったのかな……。
英語がわかんない奴はこれでも食っとけってこと……? そんなことないよね?
昨日のことのように思い出せる、素朴な肉とポテトの味。

やってけるのか!? もう帰りたい!と自信喪失しまくっていたものの、行きたかった場所にはなんとか行けた。

リスボンから電車とバスに揺られて約1時間半。
たどり着いたのは、ユーラシア大陸の最西端にあるロカ岬。
ここは真綾さんも言ったので外せない場所だ。

青い空と青い海が美しいロカ岬

バスに乗っている間はちょっとどんよりしていたのに、着いたら晴れ間が見えてきた。
こんな景色を見たら「私のこと歓迎してくれてるってこと!?」って都合よく解釈する。
多分、全員感動する。

観光客でにぎわうロカ岬

広島で生まれ山口に住んでいる瀬戸内育ちの私にとって、島が並ぶ海が当たり前。
でも、今目の前に見える海はどんなに目を凝らしても、その先に陸地は見えない。
壮大で悠々と広がる海が新鮮で、不思議だった。
地球って本当に丸いんだな。

こんなとこまで一人で来ちゃった。
どうせ私にはできないだろ、って思ってたことができちゃた。
私だって勇気出せば一人で海外行けるんじゃん!!!!

ポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスはロカ岬を「ここに陸終わり海始まる」と詠んだ

ウロウロしていたら観光客たちの波が引き、数人だけが残る。
この景色を目に焼き付けたくて、ぼーっと海を眺めながら真綾さんの曲を聴いていたら2時間がたっていた。

今は懐かしのウォークマン

その後も、ホテルのベッドで寝ながら日記を書いてたら寝落ちしてしまって枕に万年筆のインクの池を作ったり(怒られなかった!)、コルメシオ広場でリュックに手を突っ込まれたり(何も取られなかった!)、ホテルで「Free Wi-Fi」が聞き取れず何度も何度も聞き返したり(優しく何度も言ってくれた!)。
色々あった。主に私のせい。人の優しさが沁みた……。

感動してキョロキョロしてたらスリにあいかけた
コルメシオ広場

さすがにもう一人でヨーロッパに行こうとは思えない。
仕事をやめた勢いとは言え、推しパワーとは言え、普通に危ない!
私レベルの英語力での海外一人旅は、人にも手放しでおすすめできることじゃない。
何かあったら危ないから! 命大事に。

リスボンの町

でも、本当に一人でポルトガルに行けてよかった。
別に一人旅したからって劇的に人生や価値観が変わるわけじゃないけど、「一人で海外旅行できる行動力があるんだな」って思ったら、ちょっと勇気が出せる気がする。

それに、こういう経験を繰り返して人生が肉付けされていき、死ぬ前に「私の人生も悪くなかったじゃん」と思えるんじゃないだろうか。

苦い思い出もたくさんあるけど、それ以上に楽しかった。

サン・ロッケ教会

あと心残りがデカすぎるから、またポルトガルに行って今度はおいしいご飯をお腹いっぱい食べたい!!
そんで誰かと「おいしいねー!!!!」って分かち合いたい!!
国内はどこでも一人で行けるし、一人が大好きな私でも海外で一人は心細すぎた。それもまた学び。

一人で行った国ポルトガル
誰かと行ってみたい国ポルトガル

この記事が参加している募集

#人生を変えた一冊

8,031件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?