見出し画像

ガッツポーズと残心

東京2020オリンピックの柔道で共々金メダルを獲得した阿部一二三選手と詩選手兄妹。勝った瞬間、妹の詩選手がガッツポーズして喜びを爆発させている反面、兄の一二三選手は冷静だった。このリアクションのギャップは一部気になった人もいるかもしれない。特に武道経験者は。

上で紹介している「ロザンの楽屋」のトークでは剣道経験者である菅ちゃんが試合で「1本取ってガッツポーズをしたら取り直しになった。」というエピソードを交えて、詩選手のリアクションがアリかナシかを議論している。このように詩選手の弾けるリアクションは目立った反響はないが、違和感を感じてる人は多いのかも。

こちらの記事で僕は弓道を高校時代経験したことを綴った。阿部兄妹2人のリアクションで言うと一二三選手のほうが武道をやってる人間本来の姿であることは思った。ただ、、詩選手のガッツポーズに違和感を感じることはなく、「アカン!アカン!」と思うこともなかった。素直に喜んでる姿に幸せを感じただけだった。

武道においては「残心(残身とも言う)」の作法が共通してある。弓道においては「射法八節」という基本的礼儀の1つとして書かれ、重要なことだ。たしか、弓道の昇段審査の際にこれに関する記述問題があると聞いたことがあり、周りの同期が先輩方にあるいは後輩が同期に攻略法を教授されてるところを何度も目にした。それぐらいこれを無しにいい射などできたもんじゃないということ。

自分なりにざっくりまとめると、弓道は矢を放った瞬間後も射の反省をしたり、一呼吸置いたり、姿形はどう見られているかなどを考える必要がある。妥協できないことだから、雑な「残心」を顧問がキツく注意することもよく見たものだ。それぐらい、大切な基礎中の基礎だ。他の武道によって解釈に大きな違いはあるが、本質的には同じことだろう。

弓道は弓を持ってるのと、周りや前の人の動き、普段の見取り稽古を普通に見ていればガッツポーズはまず起きない。剣道も竹刀持ってるからやりづらいと思うが、なぜ菅ちゃんやっちゃったのだろうか…
少し逸れたが、一方道具のない柔道だと詩選手のように思わずやっちゃうこともあるだろうし、海外勢だと日本よりその点緩かったりするだろうから、なんとも分からない。ロザンの2人も「スポーツ(オリンピック)としての柔道と武道としての柔道の違い」を指摘してるから尚更。

とはいえ、勝っても負けてもフィールドを出るまでが試合だと思う。だから残心もそうだし、弓道でも、射場を入ってから出るまでの所作はきちんとするのは必要最低限。兄妹で金メダルの快挙は素晴らしいし、評価しない理由が無い。詩選手は何を言われたか知るよしもないが、1つ武道の重さを痛感し、大切なことを教えられたようだ。

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,685件

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。