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成瀬の続編『やすらぎハムエッグ』

本屋大賞2024に選ばれた『成瀬は天下を取りに行く』と『成瀬は信じた道を行く』を読破し、聖地巡礼もしてきた。それから数日すると、これらの続編である新作が載った雑誌を見つけた。

小説新潮5月号

小説新潮5月号。この中に宮島未奈さんの新作『やすらぎハムエッグ』が収録されている。この作品には成瀬あかりも登場している。

物語をざっくりと

高校卒業して神奈川を離れ、京都大学理学部に進学した「坪井さくら」。小学校から高校まで一緒だった初恋相手「早田くん」と離れ離れになった喪失感で俯いていた。入学式で転んでケガしたさくらに同じ理学部の成瀬が声をかけ、そこから仲良くなる様が綴られている。
ちなみに、作中には京大が立地する出町柳周辺の描写や実在のスーパーが登場する。

誰々がいたから頑張れる

さくらの失恋模様はどこか僕によく似ている気がしてきた。感じることは似て非なるかもしれないけれど、

誰々がいるから頑張れる

っていうのは共通するかもしれない。

早田くんとさくら

早田くんに支えられて、夢中だったさくら。京大受かるってなかなかできないことだし、本当に勉強しないと辿りつかない。それを恋の力で結果を出していってるのはすごいもんだ。それでも、早田くんは東大だったと聞いたときは全てが無駄だと思うし、さくらの人生から見ると、これからどうしていいかわからなくなるのはそんなもんだとは思う。

そのことを分かってくれるのも成瀬ぐらいなのではないだろうか。恋愛したことないとて、大親友と離れ離れになったことを紐付けて理解しようとするのは本当に心が広い人だと思う。成瀬がいなかったらと思うとさくらはこの世からいなくなってもおかしくないレベル。

僕の喪失感

僕自身もとてつもなく恋をしてきて、喪失感はあった。しかし、その後にしつこいことしてきたし、言ったとて「そんなの忘れろ」だの笑うだの「言っても無駄」やと抱え込んだ。成瀬のような救世主は現れることも見つかることもなくずっと燻ってる。そのせいなのか

自分が本気を出すと周りから迷惑される

というネガティブ思考も身についている。「もっと自信持って!」と言われることもあるが、こういうところなのだろう。恋愛のせいではないけど。

あの人がいて世界が広がった

それでも、あの人がいたから頑張れたというのはそうかもしれない。鉄道以外に興味がない僕にしては珍しく人に一番興味持てた瞬間だった。あのときも世界が広がったのかもしれないと思う。だが、成瀬の言葉を引用すれば「そういう役目は終わった」のなのかもしれない。もうそういうもんだとして忘れたいし、そんなことはとっくに記憶の隅に追いやられてる方が自然なはずなのに。


さくらの失恋を勝手に自分ごとと紐付けてしまってはいるが、やっぱり、成瀬はあの感じだし、さくらに対しても優しかった。恋愛の話になったとき、「(200歳のうち)人生の後半にしようと思う」ていう旨の話もしてただけに興味なさそうにも思った。だが、どんなことでも共感しにいくのは成瀬は想像力が広い。
今回もまた「成瀬イズム」が躍動していた。

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