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雪と楽しむ三重県内ローカル線

「近鉄全線フリーきっぷ」2日目は三重にある3つのローカル線を巡る旅に出た。図らずも大雪でけっこう良いタイミングに出くわしてラッキーだった。

四日市あすなろう鉄道

近鉄四日市で降りて、まずはこの路線。

四日市市内をトコトコ走る緑の電車。線路幅762㎜の「ナローゲージ」と呼ばれるいわば「軽便鉄道」。鉄道黎明期には多くの地方で見られたが、今やこの路線とこの後乗る三岐鉄道北勢線、富山の「トロッコ電車」黒部峡谷鉄道しか残ってない貴重な存在だ。

車内は路線バスのような座席で、1×1列が限界なぐらいの狭さで屋根や扉の高さも僕の身長より軽く高いぐらいしかない。「マッチ箱」とはよく言ったもんだ。しかしながらリニューアルが施されて明るく広々さがある。バリアフリーもバッチリだ。

この時乗った電車は車輪下をガラス窓にした「シースルー電車」。こんな観察できるのはここだけ。すごいアイデアだ。

四日市を発車。新しいながらも路面電車のような低音モーターを響かせて、原付程度の速さで住宅街を駆ける。雪の降りしきる中というこんな貴重かもしれない光景で楽しめるなんて夢にも思わなかった。

三岐鉄道三岐線

四日市から近鉄の急行に乗って近鉄富田で下りる。ここから乗るのは三岐鉄道三岐線。ここから西藤原までの全線を乗り通す。

三岐鉄道の乗り放題パスは三岐、北勢両線共通で、近鉄を使えばちょちょいと行き来できる。

近鉄富田駅の片隅に止まっている黄色い電車が三岐鉄道。改札は共通で名の通り近鉄の管理だが、西口には三岐鉄道の駅員さんが常駐している。

車両は西武鉄道から譲渡されたもので車内の「シルバーシート(優先席)」はかつて都市部で多く見られたが、今では絶滅危惧種。会社独自のものに差し替えられていてもおかしくないが、特に変えない意味はなさそう。でもオールドファンには嬉しいことだろう。

近鉄富田を発車し、ガタゴト揺れながら進んでいく。近江鉄道ほどではないが、ローカル線らしい。大雪の最中でも元気に駆けていく。

途中の保々ほぼ駅に到着すると車両交換が発生。向かいに止まっている電車で改めて向かうことになる。ごくごくたまにあることで僕も学研都市線で同じことを経験したが、不定期っぽいからいつ出くわすか分からない。

その交換した車両はというと先ほどよりもさらに先輩の車両。同じく元西武で三岐鉄道では比較的長いこと走っている。

改めて西藤原へ向けて走る。先ほどよりもさらに古めで車輪上の座席は山奥のオフロードかってぐらいに揺れが激しく、軽く酔ってしまった。

進んでいくと雪はさらに強まって

終点西藤原はこんな雪国だった。故郷滋賀湖北を彷彿とさせる。「えらいとこ来てしもたなぁ」そんなことをボヤきつつ、再び近鉄富田へ戻る。

ちなみに三岐鉄道ではセメントの貨物を取り扱っている。東藤原からJR関西線富田駅へ向かう茶色い機関車がけっこう走っていて、帰り道でも途中で行き違った。トラック輸送にシフトしたことで貨物を取り扱う大手私鉄は東武を最後に全廃し、地方私鉄でもその数は数えるほどで、貨物専門の私鉄も廃止が相次いだ。それでも、「カーボンニュートラル」で排気ガスを出さない電気機関車による貨物列車が見直されている。そんな時代にマッチしそうな三岐線貨物列車はまだまだ活躍が期待できそうだ。

三岐鉄道北勢線

富田まで戻り、近鉄で桑名へ。そこから5分あるいたところに“離れ”のような駅からまた電車に乗り込む。

三岐鉄道北勢線の始発西桑名駅。三岐線と同じ会社の路線で黄色いカラーも共通だが、大きさや雰囲気は全く違っていて、別会社の雰囲気もある。(かつては本当にそうだった)

「あすなろう鉄道」と同じく762㎜で幅は一緒。ただ北勢線はちょっとだけ背は高く、網棚もある。扉も近鉄のとどこか似てる。

やってきたのは楚原行き。終点の2つ手前で折り返す電車ではあるが、手っ取り早く少しでも乗りたいから楚原まで乗ることに。

車内の機械室からは「あすなろう鉄道」以上の低音モーターや金属の軋みが激しい。壁も黄ばんでるから外観とは裏腹に超レトロ。その一方で、近鉄からの経営移管されたのを機にリニューアルされた東員駅や星川駅など新しく賑わう駅といった真逆さもある。

30分で楚原に到着。駅名に由来する駅員萌えキャラ「鉄道むすめ」の「楚原れんげ」が駅名標にデザインされている。

開いている踏切の線路で762㎜で足幅と比較もしてみた。僕の場合は肩幅ちょい広めってところか。それぐらい狭い線路の上を走ってきたのだ。

三重県のローカル線3つを雪の中で巡ってきた。そのうち「ナローゲージ」という貴重な列車に乗れたのだが、雰囲気は普段着的な地域の足。たくさんの乗客で賑わっていた。いずれも近鉄という大組織から離れて、より地元に根ざして細々頑張っている感じだ。一方で普通サイズの三岐線も貴重な西武の通勤車やセメント輸送などで地域や産業の支えになっている姿が見えた。近鉄でスピード感を堪能してから、こういうローカル線ののんびりさでメリハリある旅はいいもんだ。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。