なぜ会社を設立したのか。

私が”なぜ会社を設立したのか"についてお話ししたいと思います。

突然ですが、あなたは犬や猫を殺したことはありますか?

おそらくこれを読んでくださっている方の多くは“NO”と答えると思います。しかし、私の答えは“YES”です。なぜなら、私は 獣医師 だからです。

獣医師は動物のいのちを救うことができる唯一の職業であり、同時に動物を殺すことが認められている唯一の職業でもあります。獣医師になれたことを私はとても誇りに思っています。

私が獣医師になろうと思ったきっかけは、小学校3年生の誕生日から飼い始めた犬でした。

「どうしてもトイプードルが飼いたいんだ!」とずっと母にせがんでいたけど「どうせ飼っても世話しないでしょ」と断られ続けていました。しかし、誕生日に母が連れてきてくれたのは子犬のシェルティでした。

初めてあの子と会った時、一瞬「あれ?母さん間違えた?」って思ったのは今でもよく覚えてますが、本当に可愛くて可愛くて、そんなのはすぐにどうでもよくなりました。あの時わが家に来てくれたのがあの子で本当によかったと心の底から思っています。あの子が来てくれたおかげで、動物が好きなことに気がついて獣医師になろうと思いました。

私には、ずっと後悔していることがあります。

それは、大好きだったあの子の最期を看取れなかったことです。

私の犬は、体調に異変を感じ、念のため、動物病院に検査入院をさせたのですが、翌朝獣医師が出勤した時には亡くなっていたとのことでした。

帰ってきた時には冷たくなっていて、目を閉じてすらもらえていませんでした。動物病院のシステムを知ってからは特に動物病院に恨みがあるとかではないのですが、

"最期はやっぱり大好きな家族に囲まれながら安心した状態で死なせてあげたかった。"

捨てられたと思わなかっただろうか?

冷たくなってしまったあの子が少しでも孤独な気持ちにならないように一晩中ずっと抱きしめて、、何にもできなくてごめん。大好きだよ。大切にできたかな? と問いかけて続けました。

その後、無事、獣医師になることができました。獣医師になってからの日々は忙しく、あっという間に月日は流れていきました。私は保健所の獣医師として1頭でも殺処分を減らしたいと思い、引き取りの相談電話への対応や捨てられてしまったペットを1頭でも多く譲渡に回すなどの仕事をしていました。

私にとって保健所での獣医師の仕事は衝撃の連続でした。動物を好きな人ってみんな良い人で、みんな大切にペットを飼っているものだと信じて疑っていなかったんですね。

保健所でたくさんの劣悪な環境で飼われているペットやそれを全くひどいと思っていない飼い主達を見てきました。

特に衝撃だったのは、やはり多頭飼育崩壊でした。家の中は10cm以上ゴミの層が家全体に敷き詰められ、クモの巣が張り巡らさせる中、小型犬が20頭程飼われていました。その内3頭がすでに亡くなっていました。

残りも全頭ガリガリに痩せ細っていて、かなり衰弱していてほとんどが譲渡できませんでした。

こうなってしまったのは、高齢者が2人暮らしをしていて、病気が悪化したために世話ができなくなってしまったのが始まりでした。

保健所に入ってくる引き取り相談のほとんどが高齢者が飼っていたペットです。(介護がひどくなり、世話をしきれなくなったなど)

どうにか高齢者でも安心してペットを飼い続けることはできないか、、自分に何かできることはないか、、

そう考えた時に、大学の先輩で往診専門動物病院を開業した2人のことを思い出しました。

"往診が当たり前になれば、飼い主が高齢者で動物病院に連れて行くのが大変になっても、世話をし続けられ、ペットも自宅で安心してケアを受けられる。"

"獣医さんが気軽に診察しに来てくれるようになれば、終末期の治療を自宅でできるようになり、私みたいに最後を看取れなくて後悔する人達を減らせ、大好きな家族に見守られながら温かいベッドで安らかに最期を迎えられるんじゃないか"

誰でも往診を始めやすいような環境を作り、日本中で往診獣医師の数を増やし、往診業界を盛り上げる。

ペットの往診が当たり前になり、日本中に往診を行う獣医師が増えることで、足腰の悪い高齢者が多い農村部で本当に困っている飼い主、ペットまで往診が行き渡り、安心して暮らせる。そんな社会を作ろう。

自分が本当にやるべきことはこれだ。これは自分にしかできない。

そう決意し、この会社を設立しました。




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