4/5『これが愛じゃなくてなんなんだ、べつになんでもないよ』

酒を飲んで、飯食って、吐いて、これが3000円か、と吐瀉物を見る。3000円がトイレで流されていく。さようなら3000円。あれだけ飲んだなら安い方か。飲み放題にしておいてよかった。いや、飲み放題にするから飲みすぎてしまうのだろうか。ずいぶんと気持ち悪くなったものだ。吐き気。私は気持ち悪さがわりと突然くる。途中までどこまで酔っているかの把握ができない。こういうことばかりだ。自分の現状位置が把握できない。だから急に気持ち悪くなって、トイレにかけこんで、ずいぶんとすっきりとした顔で戻ってくる。なんとなく周りに吐いたことはバレたくないから、吐くときはできるだけ早く、スピーディーにする。でも、バレる。だいたいバレる。気持ち悪い。それでも飲みたい。そんな気分だったんだ。

 飲んで、吐いて。私はそんなに酒が強くない。めっちゃ弱くないけど、普通か、それより弱いか、その程度くらいしか飲めない。今日だって七杯、八杯くらい飲んだだけだ。そしたら急に気持ち悪くなった。頭がぐわんぐわんした。
 飲んでも後悔はしなかった。3000円、と一瞬浮かんだけど、必要経費だと思った。一緒に飲んで楽しかったし、夕方はだいぶ嫌なことがあったから、こういうストレスの発散でもまあいいかとなった。
 
 もっとたくさん後悔がしたい。後悔が足りない。俺はもっともっと過ちを犯す! 足りなり足りない、こんなんじゃ足りないよ。もっと自己嫌悪でいっぱいになるくらいの自分にならないと、ダメだ。まだ法律さえ守ってしまっている。30年間生きて、法をずっと守って捕まってないなんて、なんていい子なんだと私は思っているけれど、他の人に言ったら「あたりまえやろ」と言われるし、そういうことを言われると「えへへ」とはにかむしかない。
 自己嫌悪でいっぱいになって、誰にも相手にされなくなって、それでも自分は自分を愛したい。憎しみでいっぱいの自分をぎゅーっと愛したい。そうすることくらいしかできないだろう。自分が自分でできることは。愛で満ち溢れないと、いけない。
 
 愛が溢れ出る。それは愛ではないよ。そんな声がする。じゃあ、なんだこれは? エゴか? なんでもない。それはなんでもないよ。そんなことあるか? これは愛じゃないのか? うん、少なくとも愛ではない。じゃあ、なんだこれは?

 これがいったいなんなのかわからない状態で私は愛を自分にぶつける。愛しているぜ自分! さいきんまた脂肪がついてきたな、また三桁になっちまうぜ。髪色はピンクでかわいいね。前より表情がやわらかくなったね。かわいいよ。愚かで、かわいい。また人に嫌な態度とって自己嫌悪になったね。でもそういう自分も好きだもんね。知ってる。そして自己嫌悪に陥ったことも、好きな人には知ってほしいんだよね。わかってる。それくらいはわかってるよ。だから、そんな自分を愛しながら、もっと周りに愛される人間になっていこう。俺は、ずっときみの味方だよ。

 これが愛じゃなくて、いったいなんだってんだ。そんなことを思いながら、お前らを愛しながら、私は二度寝をする。

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