4/7『俺はいつも俺に寡黙で、まったく仕方がないヤツで』

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   疲れて布団に倒れこむ。ギリギリ外では生活ができた。家に着くと限界だった。俺はもう耐えられなくて、荷物を放り投げて、すべてをそのままにして横になる。身体のすべてが痛く感じる。だるい。生きているのがしんどい。そう思う。すべてが雑になっていく。一体化していく。身体は鉛のように重たい。感情は憂鬱という言葉に埋め尽くされる。あるいは、それさえもうかばない。ただ、消えたいと思う。


   20分が経つ。身体が細分化していく。細部が動きだす。違いがわかる。差異が出てくる。ああ、ここは足だな、ここが手だな、という感覚が浮かび上がる。頭が重たい。上にあるのが頭で、重たい。そういうことがわかってくる。身体が一つの大きな塊から、鉛から、細分化され、何がどうきついかがわかってくる。楽な部分があることも知る。楽な体勢があることを知る。様々な体勢をとり、部分部分を癒していく。



   30分が経つ。身体は急速に、一時的にだが楽になる。細分化されたものが、一度また一つになっていく。収束していく。不思議な感覚だ。身体が身体として自覚されていく。雑味は増えるが、しかし動きやすくなる。生活に特化した身体になる。ある一定の体勢を保ち、しばらく休憩する



   60分が経つ。身体の感覚が軽くなる。身体を自覚するとともに、身体が消えていく。透明化されていく。ようやく身体を動かすことができるようになる。気分がマシになる。ずいぶんとマシになっている。生きる気力が湧いてくる。なんだ、自分はちょっとした休息が必要なだけだったんだ、俺は強い、なんてすぐに調子に乗ってくる。起き上がる。


 
   しばらく活動する。身体は軽い。いろんなことができる。帰ってきたときの疲れがウソのように動ける。たった一時間の休憩が、俺を簡単に回復させるんだなあ、人間、ちょろいものだと思う。疲れたときには酒なんて飲まずに寝るべきだ、そう思う。


   三時間後、急激にふたたび疲れがやってくる。帰ってきたときと同じくらいの疲れだ。時間ももうだいぶ夜遅くなっている。布団に入る。ああ、疲れた。なんで俺はこんなすぐに調子に乗ってしまうんだと後悔する。一時間寝ただけで、一日の疲れがとれるわけないじゃないか。そもそもここ数日ずっと寝不足だったのに。いつになったら学習するのか。そんな自分にあきれてしまう。眠りたい。それなのに疲れすぎてか、もはや眠れない。帰ってきたばかりみたいに、いろんな体勢をとろうとするが、もはや、そんな気力もない。身体はもう完全に終わっている。眠りたいのに眠れない。休みたいのに、横になっている状態さえきつい。そんな最低な状態になって。気づけば夜の三時。眠れない。そう思いながら、ようやく三時間くらい眠れている。もう朝だ。一日がはじまる。そんなことを繰り返していたら、もう身体はバキバキで、さいきんの私は疲れてしまっている。


   もっと眠れたらいいな、と思いつつ、まあでもなんとかやれてるからと、ごまかしごまかしやっていく。人間の身体って不思議だんと思いつつ、自分ともっと仲良くなれたらいいなと、しみじみと思う。俺、もっと俺と仲良くなりたいな。俺はどう思う? 返事はない。俺はいつも寡黙で、返事をしてくれないから、いつまでたっても調子さえわからない。そんな具合だ。

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