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陰陽の法則その2 ~頭寒足熱・天地相交の道~

「陰陽交感」

新しい命が誕生するには、男女の精が交じり合うことから。なんてシンプルで神秘的な宇宙の法則でしょう。

男は陽、女は陰に属しますが、陰陽が交じり合うと「新しい命の創造」というものすごい変化を起こします。

7000年前に易経の作者である伏羲が仰いで天の運行の状態を観察し、伏して大地の形勢を見ながら、宇宙にある二つの異なる勢力を陰陽と定義し、その符号、陽「― 」、陰「 - - 」を作りました。

天は陽、地は陰を象徴しますが、中国古代では天地陰陽に関する地球誕生の神話があります。
元々天地はそれぞれの形は持っていなく、鶏の卵のように、ひとかたまりで混沌としていたそうです。盤古という創世神によって天地が開闢し、天が益々高くなって陽になり、地は益々厚くなって陰になり、天地の気が交じり合っている間に万物生命が誕生したというお話です。盤古の左目が太陽に、右目が月に、吐息や声が風雨や雷に、肉が田畑に、血が河川に、髪の毛が草木に・・というように盤古神のからだから万物ができた興味深い話もあります。

神は自分のかたちに似せて、人間を創ったという説がありますので、宇宙にあるものがすべて私たちの身体にもあると言う訳です。こう観ると「我即宇宙」、「宇宙即我」というのは理解しやすくなるのではないでしょうか。
私たち人間が宇宙そのものだからこそ自己探求が、実は宇宙の探求だと思えば、なんだかロマンさえも感じます。

易経は宇宙の法則とも、神様による設計図とも言われています。その易経には天地否(てんちひ)と地天泰(ちてんたい)と言う卦があります。

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天地否は、天が上にあって地が下にあります。一見自然な状態に見えるかも知れませんが、卦名は否で「凶」を意味します。一方、地天泰は地が上で、天が下にあり、一見不自然に思えるかも知れませんが、これの卦名は泰で「吉」を意味します。

どうしてかと言うと、その答えは生命誕生の自然の摂理から悟ることができます。
天は陽気の象徴で、地は陰気の象徴です。火のような陽気は本来上に昇る性質を持っていて、水のような陰気は下に降りる性質をもっています。

天地否の卦では天の陽が上位、地の陰が下位にいます。すると陽気は益々上に上昇し、地の陰は益々下へ下るようになります。その結果陰陽が上下に分断してしまい交じり合わなくなります。これを「天地不交」と言い、閉塞、不和、不調、失敗を意味します。

一方、地天泰では天の陽気が下を向いて大地の万物を照らして、大地の潤いである陰気が天を目指して上昇していくことを現しています。天地が交じり合い、万物の命が芽吹き、成長・発展していくことを意味しています。これを「天地相交」とも「陰陽交感」とも言い、生命誕生の法則になります。

生命が誕生するのも陰陽両気が交じり合うことが条件ですが、誕生した命が生命活動を継続できるのも、絶えずに行われている陰陽交感の結果と言えるでしょう。

ある日公園で、両手を広げ、隣にある樹木になりきってみたら、陰陽交感を体感することができました。天に向けて伸び広げた枝葉は太陽のエネルギーをいっぱいに受け、そのエネルギーを根っ子まで届け、根っ子の活動をサポートし、根っ子は吸収した大地の陰のエネルギーを上の枝葉まで栄養を届けています。盛んに「天地相交」をしているのです。

この陰陽交感の結果が人間の身体で言うと、頭寒足熱の世界になります。


「頭寒足熱」(ずかんそくねつ)


人間が生まれてから死ぬまでの間はずっと陰陽の変化の連続です。稚陰稚陽から始まり、壮陰壮陽・衰陰衰陽、亡陰亡陽という生命の変化の過程を辿ります。

人間にとっての陰陽と言えば、陰は目に見える身体そのもの、血液や水分等の物質的な条件を言い、陽は物質である陰を動かす気(エネルギー)、身体の様々な機能を言います。

陽気は生命の象徴でもありますが、人生のスタートは足の陽気からです。そして、この陽気は一生かけて上に上昇していくのです。
赤ん坊は足が力強いものです。いつもパタパタと活発に動かしています。しかし年齢を重ねるに連れ、まず足の力が弱り歩き方にも変化が起きます。

私たちの臓器である心臓は上半身の上部にあり、陽の臓器ですが、下半身の足の末端までそのエネルギーを届け、動く活動をサポートします。そして、腎臓は上半身の下部にあり、潤いを蓄えている陰の臓器ですが、骨髄を通して、脳髄に栄養を提供しています。
人間も盛んに陰陽交感を行っているのです。中医学ではこれを「心腎相交」と言います。

「心腎相交」がうまく行っていれば、足腰は丈夫で、しっかり歩けて、走れます。
そして、記憶力に長けている、アイディアが湧く等の頭脳活動も潤滑にできて、睡眠の質も良くなります。何よりも気分も穏やかでいられるのです。


身体で地天泰の吉の状態は「頭寒足熱」とも表現することができます。少しオーバーな表現かも知れませんが、若さと健康の良い状態を意味します。

この地天泰の吉の状態がずっと続いて欲しいと願うところですが、物事は極まったら、反対に転じるというのも宇宙の法則です。

年齢を積み重ねるにつれ、足腰が段々弱り、思うように動かなくなります。そして忘れっぽい、白髪、ほてり、のぼせ、不眠等の頭の「熱」に関連する症状が出るようになります。これは頭寒足熱の反対で、「心腎不交」と言い、陰陽のバランスが崩れていることを意味します。

完全に陰陽不交になったら、陰陽が分離し「天地否」の状態になります。これは生命の特徴がなくなることを意味します。

人間のカラダの健康も、一つの会社と社会の健康も陰陽両方のエネルギー同士の交じり合いがあって、一瞬一瞬新たに創造しているのではないでしょうか?

いつまでも若くいたい、どこまでも安泰でいたいというのは人間共通の願いかも知れませんが、泰が極まったら、否になり、否が極まったらまた泰に向かっていくのもどうしようもない自然律です。

若さと言うのは、本質的には本来与えられた地天泰の時間を、人為的に短縮していない状態ではないでしょうか?

そして、長生きとは天地否へ向かっていく時間を人為的に加速させていない状態ではないでしょうか?

私たちの考え方、食べ方、生き方、そして感情すべてが身体の陰陽を刻々と変化させています。それを選んだのも、選び直すのも私たち自身なのです。

宇宙の法則を味方につければ、生きている事がもっともっと楽しくなります。
「楽しい」というのは私たちが主導的に生きているからこそ生まれて来る感覚ではないでしょうか?

陰陽の法則まだまだ続きます。


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