長細い女(叔父の不思議体験談)

母から聞いた叔父の体験談です。

叔父の若い頃の体験談ですので約70年ほど前の出来事です。
当時は、木造平屋の家が多く生活道は砂利道だったそうです。
今も 福岡では有名な公園の近くを夜道1人で歩いていると電柱の様に細く家ほども背が高い女性が着物を着て歩いているのが見えたそうです。

明らかに人ではないと感じた叔父は走って逃げたかったそうですが、砂利を踏みしめる 音が 気になったので
近くの家の敷地に入り女が過ぎていくの を かがんでやり過ごしたと言っていました。
それが何だったのかは分かりませんが とても怖かったということです。


叔父の仕事

叔父は海外航路の船に乗っていました。
何ヶ月も海の上で過ごす生活です。
通信士というのでしょうか
当時はモールス信号での情報通信をしていたそうです。

長い間、船の上にいるとやはり地上が恋しくなるそうで、ノイローゼになる若い船員さんもいたそうです。

どこの海という名前は忘れましたが とても穏やかな波の海域があり、日本人には その海が畳のように見えてしまい、乗船歴の短い船員さんはフラフラと海に飛び込んでしまうそうなんです。
なので その海域に差し掛かると乗船歴の短い船員さんは甲板に出さないと言うことでした。

家のルール

親戚間に1つ ルールがあります。
もしも 親戚の誰かが亡くなった時に
遊びで旅行に行っていても
仕事で遠くに行っていても
すぐに帰ってくることができない時間と場所にいる人には、危篤の知らせや亡くなったという知らせは伝えてはいけないというものです。

それは、船に乗っていた叔父が決めたことでした。
長く 船に乗っているとたまに船員さんの家族の訃報や危篤の知らせが入ることがあり
叔父がそれを伝えると 訃報を聞いた船員さんは 船から降りることもできない、帰ることもできない、ただ ただ船の上で どうする事も出来ない悲しみに涙を流し、心配に苦しむことしかできない。
そんな姿を見てきて
一族にそのような思いをさせてはいけないと、どうすることもできない状況下では苦しみを与えてしまうだけだと、叔父はすぐに帰れないところにいる人には、たとえ親でも危篤の知らせや亡くなったという知らせも伝えてはならないというルールを作りました。


数年前 祖母が亡くなり
葬儀に叔父の娘(従姉妹)の姿が見えなかったので叔母に聞いてみると、海外旅行に行っているということでした。
ルールに従って 危篤であったこと 亡くなった事は伝えてはいないということで親戚一同 納得していました。

叔父も数年前に亡くなりましたが、叔父の優しさ思いやりのルールは伝えて行きたいと思います。

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