君たちはどう生きるか

ジブリで好きな作品は紅の豚、コクリコ坂から、千と千尋の神隠し。初映画感想noteを怖いですが書こうと思う。が、その前に前提として面白かったし十分に満足した!これは言っておかなければ。。

東京での火事のシーンから始まった前半では眞人の生活が描かれている。母の死、第二の母、父との確執、同級生との不和、得体の知れない住み込み婆達、血縁。対人関係における現状を見た。そして寡黙な少年として描かれる主人公の眞人。母を思う以外の個人が分かる描写はほとんど無くどんな奴なのかよく分からなかった。この眞人、個人的にはジブリ史上最も現実に即した聡明な子であるように感じた。青鷺を弓で撃退したナツコを見て同じように自作の弓を作る眞人。試作と実験、交渉によって知識と経験を得、納得の武器を作る過程が千尋の雑巾がけよりも水沼と風間の各勝負よりもリアルだったからかもしれない。個人的には自傷の場面よりも眞人のことが分かる瞬間だった。さらには冒険が始まると眞人の子供っぽさが垣間見えることで、子供の張る見栄が浮かんできたことも一層リアルさに拍車をかけていた。後半部分が始まるころには「あ、過去の俺じゃん。というかどこにもいる男の子だ。」と眞人のことが少し分かった気がした。
後半は地獄と呼ばれる世界での冒険が始まる。(地獄に組み込まれていた羊水やDNAなどのイメージが瞬発的に分かった時こういう見方を身に付けられたんだとちょっと嬉しくなった。)禁足地と墓、キリコさん、ワタワタとペリカン、インコ王国、ご先祖様、石と積み木……。色々場所を冒険した後にいくつかの山場があったけれど、どの場面も最大瞬間風速としては物足りなさがあった。それでも色鮮やかに描かれる不思議の世界は飯も美味そうで、石垣の上を走ってみたくなるし、未知の世界を冒険してみたくなる。改めて思うがジブリの飯ほど美味そうな飯は中々無い。それだけで十分なのだ。
冒険が終わると意外とあっさりしたものでナツコさんは無事出産し弟が生まれ東京に戻るシーンで映画は終わる。冒険の最後で消えた青鷺はその後一切影を見せることもなく正に立つ鳥跡を濁さずでエンドロールが始まった。

どういう映画か?と聞かれたら「ジブリの詰め合わせ的な映画」だと答える。これはもう間違いなくそう。”少年”が”相棒”と共に”おかしな世界を冒険する”。本当にそれ以上でもそれ以下でもない。『母が必要』『自己犠牲で世界を救うか、世界を壊してでも日常へ帰るか』『人間関係への悩み、葛藤を冒険と時間とで紐解いていく』というあらすじ。相変わらず美しいアニメーションではあるが圧倒される画は少ない。いい映画だけど衝撃度は小さい。青鷺の可笑しさに惹かれるけれど個性的なキャラはいない。舞台設定がぼんやりとしていた事も含めてジブリに共通していた『憧れを抱いてしまう情景』が見られなかったことは本当に残念である。良く言えばシンプルな、悪く言えば新規性は無いジブリ作品。

友人は「何を伝えたいのか分からなかった」「トトロやポニョに見られる『冒険』も耳をすませばやコクリコ坂からなどの『青春』『恋愛』が無く、○○の話というのが分からない」と言う。それが正しいのだろう。強いて言うなら『宮崎駿のジブリ作品』の話だろうか。君たちはどう生きるかというタイトルに反して説教じみた台詞や描写は無い。出てくるテーマや描き方などは非常に分かりやすいもので、ただひたすらに『ジブリ』を描いていた。今までの全てを描いたという事はもう描くことは無いという事だ。最終的には満足で面白くて物足りなかった。そして私を含めた誰かがジブリに求めている何かが無い、足りないと思う事こそがこれまでの、今作の凄さだろう。

君たちはどう生きるか。私は映画の感想noteを時々書きながら生きることにしようかな。

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