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日本型CVCプログラムによるイノベーション促進と産業育成の可能性

前回のNoteでは「正しい選択と集中」のお話しをさせて頂きました。

さて、これが私達が広めようとしている日本型CVCプログラムの話しと、どう結び付くかですが、それをイノベーションの視点からこれから何回かに分けて、順次述べていきたいと思います。

まず、私達が提案している日本型CVCプログラムでは、大企業がスタートアップに対して、大企業が保有する技術や量産能力や、販売やマーケティングの能力を提供することで、スタートアップの成長とExitを促すことを推奨しています。その際の大企業からの資金の提供は、株式投資か、業務提携契約のどちらか一つだけでも良いですし、または関係を強化したければ、その両方の組み合わせでも良いと思います。

なぜ大企業運営のCVCが、日本型VCとしてベターかというと、日本の大企業は資金を潤沢に持っているにも関わらず、自社のクローズドのR&Dの効率が落ちてきており、スタートアップとは異なり、なかなか新規事業が産まれづらい体質になっていることが挙げられます。

しかしながらスタートアップの視点から見ると、日本の大企業は、スタートアップが保有していないリソースを沢山保有しています。

そこで私達は、これらの異なる事情を持ち合わせる大企業とスタートアップをマッチングさせることは、まさしくイノベーションを産み、加速させることになると考えています。

したがって、「正しい選択と集中」のNoteでお話しをした、正しい集中をするための武器として、大企業によるCVCプログラムが、日本のGDPの成長を促すことになると期待しているのです。

世の中には、日本にはシリコンバレーに存在するような有力なVCが存在しないので、スタートアップが育たないという議論があります。事実私のところにも、日本の政府関係の方々から、韓国のように、シリコンバレーの有名なVCの支店を設けてもらいたいと考えていると相談が来たことがあります。所謂海外VC呼び込み施策の検討についての相談でしたが、私は反対しました。

理由は、海外VCへのLP出資は日本経済にとって有効だとは思いますが、他方で海外VCの拠点を日本で作ってもらっても産業育成にはなかなかつながらないのではないかということです。VCは一般的に投資と売却の利ザヤがないと成り立ちません。そこで、アーリーステージよりも、POCが出来て特許が取れているとか、FDAの認可が下りているとか、顧客がついているという段階でないと出資しないものです。日本の産業育成にかけているアーリーステージへのリスクマネー投資には、大企業のR&D投資か、大企業がやらなければ政府系ファンドによる大学発ベンチャーへの投資の方がより効果があると主張させていただきました。したがって政府はもっと大企業のCVCプログラムや大学への支援策を考えた方が良いというのが私達の主張です。

ドイツではアーリーステージは政府が、エクスパンジョンからはVCが出資するというのが一般的になっているようです。これに加えて大企業のCVCプログラムも、それぞれの会社の戦略のもと展開されています。 日本の大企業は、技術の目利きも、顧客の洞察もできますし、資金もあります。ビジネスを展開する際には、約束もきちんと守り、相手を思いやることもできます。これらの強みを生かした、日本型CVCを展開していくことが、私達の夢です。

それでは次回は、私が現役のサラリーマン時代に、経産省からの依頼で委員の一人を務めてまとめた、「CVCの手引き書」について、次回以降紹介させていただきたいと思います。


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