見出し画像

BS1スペシャル「ウイルスVS人類2 カギを握るワクチンと治療薬」


■放送
2020年4月25日 NHK BS1 

■視聴理由
WHOのテドロス事務局長は先週、新型コロナウイルスに関して「ほとんどの国でまだ流行の初期段階にある。ウイルスと長い間付き合うことになる」と話した。長期化しそうな様相は誰しも感じているところかも知れないが「どれくらい」「どのように」をはっきり答えられる人はまだいなさそうだ。そんな中、せめて「なぜ」を知りたいと思い、視聴してみた。

■どれくらい続くのか
番組中、「どれくらい」について、2人の専門家から発言があった。司会者の「ハーバード大学が、流行の上り下がりを繰り返しながら2022年までは続くのではないかと話しているが」というフリに対して、東京医科学研究所 感染症国際研究センター河岡センター長は、「ウイルスや公衆衛生の専門家はみんな思っていること。なぜならすでに世界中に広まってしまった。不顕性感染(症状がない感染)もある。このウイルスが地球上から消えてしまうことは、少なくとも数年はない。(中略)ただ、このウイルスが出てきてからどのように伝播していくのかということは分かっているので、常に非常に厳しい行動自粛をする必要はなくなってくる可能性もある。だからといってもとの生活に戻ることは、ワクチンか薬ができないと実現しない。数年以上、行動自粛と行動を緩めるということをしながら、付き合っていくということしかないと思う」といった趣旨のことを話した。
一方、川崎市健康安全研究所の岡部所長は「ウイルスは消えないけれどもできることも増えていく。早く診断ができて、注意する必要がある人と前線で接触しても大丈夫な人が分かったりと、付き合い方が分かってくる。治療法も、既存の薬の有効性や使い方など、近い将来、数か月後に分かるかもしれない。だからこの状態がずっと続くということではないと思う」という趣旨で話した。

■長期化する理由
なぜ長期化するのか。理由は単純で「未知のウイルスだけに、ワクチンも治療薬もないから」だそうだ。逆に言うと、専門家たちの見方では、ワクチンか治療薬が登場するまで元通りの社会にはならないということらしい。当然か…。

■ワクチンの開発状況
ワクチンに関して、WHOは「12か月から18か月でできる」と考えている。一方、前出の河岡センター長は「2年」と見ていて、いずれにしろ年単位の時間がかかりそうだ。さらにやっかいなことに…。新型コロナはRNAウイルスという「変異するウイルス」で、いったん有効なワクチンができたとしても、変異されると効かなくなる場合があるそうだ。同じRNAウイルスのインフルエンザ、その予防接種を思い出すと…。インフルエンザウイルスは、4種類に大別されるが、感染すると小変異を繰り返すので細かな種類はとても多い。だから接種したワクチンが流行するウイルスにマッチするかはギャンブル的な要素がある。新型コロナの場合も同じRNA型なわけだが、こちらの場合、「変異に対して自己修正する働きがある」という見方も示されていた。つまり、ほとんど変異しないRNA型という見立てもあるらしい。
ちなみにビル・ゲイツ氏がいち早くワクチンを完成させるべく、7種類のワクチンを製造する7つの工場の整備に取り組んでいる。

■治療薬・血しょう
新薬の開発にはそれこそ長い歳月がかかるため、短期で効果を求めるなら既存の治療薬の効果を確かめることになる。注目を集める既存薬のアビガンは、新型インフルエンザの薬として開発されウイルスの増殖を抑える効果があるという。ただ、胎児、精子への副作用の懸念が残るそうだ。番組とは別に雑誌記事などでは「承認は早ければ7月以降」といった専門家の声も紹介されているが、「ウイルスvs人類2」では、時期の予測は示されていたなかった。もし仮に現在行われている治験で有効性が裏付けられ、かつ副作用問題の対処法が分かり、今年夏くらいに承認が下りた場合、社会の再建に最速で寄与する薬となることが期待される。

血しょうに関しては、一度発症し回復した人の血液から免疫を含んだ血しょうを取り出し、感染者に接種するというもの。韓国やアメリカで回復に役だったという報告もある。先週の「ワールドニュース」が伝えたドイツのニュースでは、現地の大学病院の医師が「現在人類が持ちうる唯一の武器」として、積極的に活用していた。日本でも国立国際医療研究センターが今月中に臨床試験に入る。また量産に向けては、世界の製薬会社が製剤の開発で連携を決めていて、数か月以内に臨床試験を始めるという。

■期待と不安のアビガン
ここまで番組を概観してきた。結果、長期化の原因は「ワクチン・治療薬がないから」、また、最も早く世界を救える可能性があるのは「アビガン」。今もってそうであることを受け止める形となった。もちろん、アビガン以外にも有効な可能性のある既存薬は何種類かあり、そちらの治験も進められている。ただ、求められる焦りのあまり、治験の現場や承認者が判断をあやまり副作用から新たな薬害が起こる、なんてことはあってはならない。「なるべく早くお願いしたい」と思いつつ、やはり承認の可否の判断は、裁判と同じように浮世と離れたところで行われるべきだろう。私たちはそれができる環境を壊さないようにしなければと思うのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?