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すべての政府は嘘をつく(映画)

放送 2017年上映(ドキュメンタリー映画)Amazon Prime Videoほか
制作 制作総指揮:オリバー・ストーン
   監督:フレッド・ピーボディ
概要
アメリカの現代ジャーナリズムを問う映画。オリバー・ストーン氏は、ベトナム戦争を描いた映画「プラトーン」の監督・脚本を務めた人物で、アメリカ政治に批判的な立場をとっている。この映画では、政府だけでなくアメリカのテレビ局をはじめとする大手メディアを痛烈に批判している。

アメリカの大手テレビ・新聞が政府やスポンサーに気をつかい、問題から目を背ける商業メディア化しているという。あるジャーナリストは、「メキシコ国境のアメリカテキサス州で200人もの移民の遺体が埋められていた問題を追いかけ、テレビ局に持ち込んだがメディアは取り上げない。彼らが重視するのはエンターテインメント性。企画を持ち込むと「美人はいるか?」「英語が話せるか?」を聞かれる。視聴率がとれる企画でないと取り上げようとしない」と嘆く。

そんな中、 故I・Fストーン氏が個人で創業した新聞「週刊I・Fストーン」に注目が集まる。風刺とユーモアを交えながら堂々と政府・企業にモノを言う姿勢はマイムル・ムーアをはじめとする世界のジャーナリストたちに大きな影響を与えている。

感想
今でこそインターネット上には無数の放送局があるが、戦後間もないころから市民が立ち上げた放送局が現在も続いていてるという稀有な例が紹介されていた。「パシフィカ・ラジオ」という名前だそうだ。「デモクラシーナウ!」というニュースが看板番組で、フリーランスを中心としたジャーナリストたちが世界中から発信する記事を集約し、放送している。企業や政府などからお金をもらっていないので、誰にも臆することなく意見が述べられるそうだ。
調べてみると、インターネット上にその歴史を紹介したPDF(http://democracynow.jp/sites/default/files/briefcase/booklet/018_PacificaRadio.pdf)を見つけることができた。その概要をここに紹介したい。

①創業者
パシフィカ・ラジオは、70年前の1949年、創業者のルイス・ヒルが第一声を電波で発した。ルイス・ヒルは兵役拒否者。平和主義のラジオ局を作ろうとしていた。そんな彼が疑問を感じたこと。
ラジオ放送のアナウンサー: さてさて、このマクタビシュ社の「皮なしウインナー」。大き さといい、色つやといい、香りといい、もう最高!
ESSOニュース: みなさまのESSO、E-S-S-O、ESSO石油ニュースが、最新の、超ホットな ヘッドラインニュースをお伝えします。
…商品ではなく、思想を広める放送局を目指したいと考えた。

②資金難
企業広告収入ではなく市民からの会費でまかなう形でスタートしたので、資金繰りは常に課題。当時会員は39人で資金的に続けられず、いったん放送を中止することに。そのことを放送で告げると、リスナーから電話が鳴り始め、「この努力が無駄になるのは許さない」と会費を申し出てくれる人が相次いだ。

③現在(ここは映画の内容から抜粋)
「デモクラシーナウ!」の制作指揮でMCのエイミー・グッドマン(ベテラン女性)。「私達がインターネットで配信を始めたのは、通信衛星を使う資金がなかったから。それが今や1300以上のラジオ・テレビ局に配信するようになりました。市民が運営するテレビ局、公共放送など。目指すのは、世界各地の声を届けること。いくら批判しても大手メディアの体質は変えようがない。だから企業にたてつく、自由なメディアが必要なんです」。
運営は視聴者からの寄付金と財団からの助成金のみで、広告や企業の資金提供は一切受けていないという。2003年のイラク侵攻も主流メディアの論調に反して批判的に報じた。

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週刊I・Fストーンやパシフィカ・ラジオのようなメディアのことをオルタネイティブ(代替)メディアと呼ぶらしい。自動的に流れてくる主流メディアに対して、市民が自ら手を伸ばすメディアということくらいに理解しておけばよいのだろう。両代替メディアの骨格にあるのは、「経済活動や政治活動に巻き込まれず、市民目線を貫いて自由に報道をするメディアであり続ける」ということだ。この問題については、また機会を改めて考えてみたい。
ただ言えることは、社会主義の国でこのような動きは生まれない。市民が自由に発言・発信できるメディアを持てるということ、それこそ民主主義の象徴ではないだろうか。
アメリカという国は色んな意味で、考えるきっかけを与えてくれる。そして今年の日本アカデミー賞で注目されたのは「新聞記者」だった。ジャーナリズムのあり方が問われているのは、もちろんアメリカだけではないのだろう。

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