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53歳のリベンジ⑤(両親の介護生活の中で英検1級に合格した話)

“Should elderly parents be cared for at home?”

コロナ禍の中、身体の調子が決して思わしくな母を思いやってのことなのでしょう。地域の拠点大学病院で骨髄穿刺、そして、骨髄移植や化学療法を行うという選択肢を自ら放棄した父は一日のうち20時間を以上寝て過ごす毎日を送っていました。コロナ第三波が収束しつつあるちょうど2年前の9月に肺炎を起こし、一時生死をさまよいましたが、その後、自宅で完全寝たきり状態となりました。

30年以上前に一度椎間板ヘルニアの手術をしていた母は、腰が痛い、首が痛いと言いながら、必死に寝たきりの父のおむつ替えや定期的な着替えをさせていました。令和3年12月に父が永眠するまでの2か月半、老々介護の奮闘が大分身体への負担となっていたようで、この2年ほどは会うたびにふらふらとして歩行が困難になっていくのが分かりました。

82歳というのは微妙な年齢で、それまでの人生の病歴や生活習慣、そして、何よりも日々の行動や周囲の関係性というものが身体症状にもろに表れてくる頃なのだと思います。人によっては旅行したり犬の散歩をしたり働き続ける人もいますが、私の母は身体に無理をしてしまった分、自律した一人での外出や歩行はもはや困難と言わざるを得ない身体症状を呈しています。

自宅の中で転倒したり、バス停で転んだこともしばしばで、母の介護について姉とともに真剣に考えなければならないね、と話し合いを始めた矢先、週に一度実家に通う電車の中で、1級Writingのある過去問に遭遇しました。

“Should elderly parents be cared for at home?(年老いた両親は自宅で介護すべきか)”

リアルに母の自宅介護(home-based care)の方策を検討していましたので、雷に打たれたような切実さで、1級Writingの答案として Affirmative(自宅介護すべき)の立場から3つのBodyを準備しました。

①  financial burden of institutional care

② staying at home is more comfotable and familiear to them

③ long-term socila care insurance system (LTCI) in Japan


① 介護施設への入居費用は高くつく(financial burden of institutional care)

遠隔地に住む家族にとって、介護施設(care homes)への入居はもっとも安心な選択肢なのかもしれません。しかし、介護保険の適用を受けていたとしても、民間施設での介護には様々な諸費用が発生し、チラシやネットで謳う入居費用と月額以外の家族の持ち出しも増えるといいます。

The cost of care homes for elderly parents could be a finalcial burden for families. Nowadays, care homes are extremely expensive, thus, as long as circumstances allow it, it is financially more reasonable to have elderly parents live at home.

② 自宅以上にくつろぎが得られる場所はない(staying at home is more comfotable and familiear to them)

介護施設と云っても縁もゆかりもない人たちとの集団生活で共同で施設設備を使用することとなりますので様々な制約やルールがあります。反面、慣れた自宅で自分の寝床で寝ることができるというのは何物にも替え難いくつろぎが得られることでしょう(もっとも、使い慣れた洗面所や浴室というのが最も転倒事故が起こりやすく、寝たきりの状態を招きかねない場所でもあります)。施設に入居したとたんに、環境の変化から認知機能の低下が進む方もおられます。

If elderly people are cared for at home, they are able to stay in a place that is comfortable and familiar to them. They can sleep in their own bed, use thier own bathroom, and continue thier daily routines. Staying at home means that they are surrounded by the familiar environments, which help to create a sense of security and freedom.

③ 日本の介護保険は制度設計上、デイケアや短期入所も可能である(long-term socila care insurance system in Japan)

日本の介護保険制度は時期こそドイツに7年程度の後れをとったものの、万人に開かれた平等かつ公平な公的保険として開始されました。(この制度が存続できる限りは…)世界でもっとも優れた制度の一つだと思います(Long-term Care Insurance in Japan (mhlw.go.jp) )。公的介護保険は区分ごとに保険の適用を受けられるサービスの内容が決められており、デイケアサービスや短期入所サービスも適用対象となっています。介護の需要レベルによってさまざまなサービスを選択できることは在宅介護を選択した家族にとって、大きな力となります。

In Japan, there is a user-oriented long-term social care insurance system (the LTCI system), which provides benefits for the long-term care of elderly persons. The LTCI system covers a wide range of services including home-based care, community-based care, institutional care and respite care (短期入所サービス). This is a mandatory program, but affordable for everyone, because the premiums are based on income level. With support of the LTCI system, elderly people could receive fair and reasonable benefits for long-term care at home. Therefore, it is not always necessary to have institutional care for elderly parents as long as they can lead independent lives at home.

介護保険の重要性を意識するあまり、テキストや参考書に書かれていない3つ目のBodyがやや厚めになってしまいました。

介護保険の区分は1年おきに見直されます。地域の包括支援センターで申し込むと、医師の診断書の提出を求められるほか、役所の介護保険審査の方が自宅を訪問されて多岐にわたる質問を受けます。

身体症状から母は要介護1を認定されてもよい程度の健康状態ですが、区分認定は身体症状のみならず、認知機能からも総合的に判定されます。

インタビュー形式で質問をされると気合が入ってしまい気張ってかくしゃくとし過ぎるきらいがあり、父の存命中に受けた2年前の審査では要支援1、今回、夏に受けた区分変更申請でも要支援2になり、なかなか要介護の認定を受けることができません。

英検の答案のように、介護保険があるから在宅介護も可能だ、という訳にはものごとが簡単に運ばないのが現実であり、理研は理屈で首尾一貫としたBodyを整えさえすればよい試験は現に母の介護の方向性で悩む家族にとってはむしろ解決しやすい問題に思えました。

(続く)










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