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台湾有事よりも朝鮮半島が危ない!?

朝鮮半島の最近の動き

2024年1月5日に北朝鮮が約200発の砲撃を韓国の島周辺へ行ったと韓国軍が報道した。これに対し、韓国は400発の砲弾射撃訓練を行い対抗。北朝鮮の砲撃は、2023年12月29日から2024年1月4日の米韓合同射撃訓練の挑発行為を受けてのものであったと言われている。金正恩は、戦争は望まないが、避ける考えもないと発言している。

北朝鮮製ミサイル


また、米国のカービー戦略広報調整官は記者団に対し、ロシアがウクライナに対して使ったミサイルの中に北朝鮮製弾道ミサイルが含まれており、国連安全保障理事会に報告すると表明。北朝鮮によるロシアに対する兵器提供は「重大、かつ懸念すべきエスカレーション」だとしたが、その証拠は今のところ一切提示されていない。

米国軍産複合体の思惑


ここ最近、こういった反北朝鮮を煽り、朝鮮戦争が間もなく始まるかのような報道が目立つ。恐らく米国の軍産複合体の利益を拡張させるためのネタの仕込みであろうと推察される。米国は露宇戦争、ハマス・イスラエル戦争と手を広げすぎて、武器や資金が枯渇しかかっており、台湾中国の戦争の誘発は上手くいきそうにないし、現状の米国にとっては規模が大きすぎて現実的ではないので、丁度よい規模感の朝鮮戦争をやらせたい意向もあるように思われる。

泥沼のウクライナ支援


韓国が北朝鮮と戦争をする為には、米国は韓国にウクライナ支援を強要し、ロシアに対する敵対関係を維持する必要がある。そして、その企みは現在、順調に実施されている。韓国政府は2023年5月に1億3000万ドルのウクライナ向け金融支援に合意。また、2023年12月にワシントンポストは韓国が米国を通じて155ミリ砲弾を「迂回支援」し、その量は欧州全体の支援した物量合計より多いと報じた。韓国には戦争地域に対する殺傷兵器の供給を制限する法律がある為、ウクライナに直接韓国が砲弾を供給しない「間接的方式」であれば米国の提案を受け入れるとして砲弾を提供したようだ。ただ、同紙は韓国が送った砲弾がウクライナに直接提供されたのか、米国を経由したのか、米国が自国保有分をウクライナに送り、韓国が提供したもので在庫を満たしたのか、など具体的な内容については言及していない。

この韓国の事例は日本にとって非常に参考になる話だ。なぜなら、日本は韓国同様、多額のウクライナ支援(121億ドル(約1兆6,900億円)世界銀行の15億ドル融資の保証)を行っているし、2023年末には日本が地対空ミサイルシステム「パトリオット」を米国に輸出することを決定し、ロシアからウクライナに供与されれば日本は「明らかにロシアへの敵対行為と解釈され、二国間関係において日本に重大な結果につながる」と警告されている。日本政府は武器の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」を改正(改悪)し「パトリオット」を米国に輸出する方針を決めた。改正後も、国際紛争の当事国への武器輸出は認めていないが、韓国同様、米国を通じたウクライナへの間接的な武器供与につながる可能性はある。つまり、韓国のおかれている状況と酷似している。こう見ていくと日本も朝鮮戦争に米国の代理戦争の主要プレーヤーとして韓国と一緒に巻き込まれる可能性があるのではないかとも思えてくる。だからこそ、韓国の今後の動きを注視する必要がある。

ロシアは朝鮮半島の安定を企図


一方で、ロシアは朝鮮半島の安定化を企図しており、簡単に朝鮮戦争勃発を許さないだろう。ロシアはウクライナ戦争が一段落した2022年6月頃から、北朝鮮に協調関係強化を提案し、欧州に輸出しなくなった豊富な石油ガスや穀物などを大幅割引で北朝鮮に売っている。(北朝鮮経済が活発化か、ロシアとの秘密取引で財政潤う - Bloomberg) 当時これら資源は国際価格3倍に高騰していた為、ロシアは北朝鮮にとって恩人のような存在になった。2023年に入ると北とロシアの同盟は更に深まる。2023年7月はロシアのショイグ国防相が訪朝した。訪朝の目的は、ロシアがウクライナ戦争で使う兵器を北から買い、見返りにロシアが北に軍事技術を供与する案件の推進だったと思われる。9月にはプーチンがボストチヌイ宇宙基地で金正恩と面会。12月にはコロナで停止していた中朝貿易が復活。ロシア沿海州の経済代表団が平壌を訪問し、貿易・農業・観光など露朝間の経済活動の活発化について話し合っている。ウクライナ開戦後、経済制裁されたロシアは逆に経済発展しており、人手不足の状態である為、北朝鮮はロシアに労働力を輸出する集団出稼ぎを再開している模様だ。ウクライナ戦争で破壊されたドンバスの街々の再建工事に労働者を派遣する準備があるとも表明している。ロシアの資源と北朝鮮の労働力のバーター取引が行われる。

これまで米主導で行われてきた北朝鮮を敵視し、経済制裁を課すやり方は、北に貿易を禁止しして困窮させ、北がますます好戦的に振る舞って朝鮮半島の軍事緊張を恒久化し、北を孤立させ、日韓を対米従属させ続けるためのものだったといえる。ロシアもウクライナ戦争が勃発するまでは、北朝鮮の外貨収入源を直撃する国連安全保障理事会の制裁決議案に賛成するなど、北との関係改善に慎重な姿勢をとってきた。だが、北制裁は極東を安定させず、米覇権がこれから崩壊していくことを考えると、北制裁でない戦略が必要になる。北が経済発展して安定すれば、米国や韓国の挑発に乗り、無茶な軍事行動に出ることもなくなる。万一、そのような事態になれば、ロシアは資源提供を止めて北朝鮮をコントロールできると考え、ウクライナ戦争勃発以降、北朝鮮との協力関係強化に乗り出したと言える。

冒頭に述べた2024年頭の朝鮮半島における北と韓国のミサイルの応報に対して、ロシアは素早く反応し、ラブロフ外相が北朝鮮外相とモスクワで面会し、ロシアは朝鮮半島でのエスカレーションにつながる手段を放棄するよう北に促した。ロシアの極東における戦略から推察すると、恐らく、今回の米韓側の挑発に北朝鮮が乗らないようにロシアが警告したと思われる。警告を破れば、ロシアの石油ガスや穀物が入らなくなるので、北朝鮮は自らの金政権を維持する為に攻撃的なポーズを取り続けるだろうが、戦争につながる直接的な行動は起こさないと推察される。但し、米韓日がどう露北を刺激するかで今後の状況は変わってくるため、引き続き注視する必要がある。


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