ロシア- ウクライナ戦争とは何だったか?

ロシアとウクライナの戦争も終焉を迎えようとしている。「戦争は経済」とよく言われるが、戦前はロシアとウクライナで8:1だったGDP比は戦争中にウクライナのGDPが半減したことにより16:1にまで差が広がっている。そして、ゼレンスキー大統領が必死になって集めようとしている外国からの資金援助も遂に底尽きを見せている。アメリカのバイデンは600億ドルのウクライナ支援のための追加予算を議会に申請しているが、議会の反対で年内承認は断念しておりこのまま2023年12月30日には資金が尽きることになる。また、EUも2024年から2027年にかけて合計500億ユーロの追加資金を検討しているが、加盟国であるハンガリーのオルバン首相の反対にあって頓挫する様相となっている。
G7においては、日本のみが45億ドル(6,400億円)の復興支援を含めた追加資金援助を表明している。アメリカ・EUから資金が捻出できない為、日本にお鉢が回ってきた形だ。そして、「復興」という項目名も挙がっていることから察するにウクライナはかなり追い詰められた状況にあるといえる。
実際の戦況を見てもウクライナの東部ドネツク州は既にロシア軍により制圧され、ウクライナ側は兵員及び弾薬不足が深刻化している。兵員に関してはウクライナの平均寿命は69歳であるにも関わらず、50代60代のいわゆる高齢者も数多く徴兵されている事実から深刻な兵員不足の様子が窺い知れる。
未だに西側諸国においては偏向報道がされており、ロシアがあたかも何もしていないウクライナに一方的に侵略したと伝えられている。だから日本人の多くもロシアは悪と信じている人が多いのではないか。だが、エネルギーの自給がままならない日本人こそ、客観的に物事を分析して、ロシアと上手に付き合うべき時が来ている。なぜなら、ロシアへの経済制裁をアメリカやEUに右に倣えで行ったおかげで、日本の中東へのエネルギー依存は90%から97%へと高まっている。そして、中東の紅海でイエメンフーシ派による船舶への攻撃が行われ、バブ・エル・マンデブ海峡の航路を多くの海運業者が停止することで、以前の石油危機のようなエネルギー高騰が避けられない状況になりつつあるからだ。日本のような資源のない国こそ隣の資源国との関係を見直す必要があるのだ。客観的に物事を見るには、まずは歴史を振り返る必要がある。
1990年10月ドイツ再統一の際に当時のアメリカ大統領ブッシュ父やアメリカ高官などはNATOは1 inchたりとも東ドイツから東へ拡大しないとゴルバチョフへ約束した。但し、これは口約束に過ぎず、実際にはNATOはその後拡大され、約束は反故にされている。NATOに加盟国が増えるたびに、米国と二国間交渉で圧力を受け、兵器システムが配備されることとなる。そうなるとロシアは対抗措置をとるしかない。放っておけばロシアに向けられたミサイルに囲まれることになるのだ。
また、ウクライナとロシアの歴史についても触れておきたい。2014年ウクライナで民主的に選ばれたヤヌコビッチ大統領がクーデターで追放される。ヤヌコビッチはEUとの政治・貿易協定締結を延期しており、このクーデターはアメリカ・EUによって支援されたものである。クーデターによって成立した新政権が最初に実施を試みたのはロシア語の使用を制限する法律を作ろうとしたことである。これによりロシア語を使用する住民の多い、クリミア半島やウクライナ東部のドンバス地域は大いに反応した。ドンバス住民はクーデターを容認せず、警察も住民側に立ったため、ウクライナ中央政府が特殊部隊を派遣し、内戦状態となった。平和的にデモしていたドンバスのロシア系住民を虐殺したオデッサの悲劇はあまりにも有名である。その後政府軍とドンバス地域の衝突が激化したため、ドイツ・フランスの仲介の元、ミンスク合意によって停戦した。このミンスク合意はドンバスの自治を認める内容であったが、約束は今日まで履行されず、2022年12月に当時ドイツ首相のメルケルはウクライナにロシアに対抗できる勢力を作るための時間稼ぎとしてロシアを騙すための合意であったことを認めている。ミンスク合意以降もアメリカ、EU、NATOによるウクライナでの秘密裏に行われた活動は多岐にわたる。アメリカの当時のビクトリア・ヌーランド国務次官補はウクライナ政権交代を積極支持し、ジョン・マケイン上院議員はネオナチの集会に参加し、全米民主主義基金(NED)もウクライナ独立を支援する活動をしていた。また、ジョージ・ソロスもウクライナ組織支援を行っている。さらにアゾフ大隊のような暴力的ネオナチ軍組織をアメリカが支援していたことは明るみに出ており、一時は米議会も資金援助や軍隊の訓練を禁じる法律を可決させたが、驚くべきことにその後、同法律を撤回している。
このようにNATOは約束に反し、拡大され続け、ミンスク合意も守られずロシア-ウクライナの対立が増していく一方の状況の中では、ミンスク合意を破棄し、ドンバス地域の独立を承認するような形で軍事行動に出る他、ロシアの選択肢はなかったのだろうと思う。
冒頭で述べた通り、この戦争がロシア勝利という形で停戦を迎えるのは時間の問題であり、戦況から察するに長引けば長引くほど、ロシア有利の終戦合意となるだろう。その時、ロシアはより強大になり、米国覇権はより弱体化する運命をたどることになる。なぜなら、アメリカはウクライナへの資金援助や武器援助などで、軍事的に弱体化していることもあるが、それ以上にウクライナを支持するアメリカや日本、欧州が世界的にマイノリティになってしまっているという点である。この戦争が始まってから、中露が中心になっているBRICsプラスに新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦の6か国が加わることを表明したり、BRICsの中で独自の経済圏を作り、米ドルを使わず貿易をするようなシステムを構築することで脱米ドルの流れができつつある。米一国覇権の時代はこの戦争によって終わりを迎えるのが早まったように思える。そして世界は中露を中心とした多極化の時代を迎えるだろう。日本も米追従主義から頭を一刻も早く切り替えて、ロシアや中国と対等に付き合っていけるように世界でいかにプレゼンスを発揮するか考える時期が来ている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?