台湾有事・米中戦争はありうるか?


2022年8月に米国ペロシ下院議長が台湾を訪問して以来、中国が台湾に侵攻する台湾有事が起こるかも知れない、そして日本も他人事ではおられず、台湾を巡る米中戦争に下手をすれば巻き込まれるかも知れないという空気が醸成されつつあった。露宇戦争、イスラエル・ハマス戦争に続き、まるで東アジアでも同様に戦争を起こしたい勢力があるかのようである。
果たして、このような状況の中、本当に台湾有事や米中戦争はあり得るのか。個人的には可能性は限りなく低いと考えている。
まず、第一に米中戦争は起きない。なぜなら安保理(P5)核保有国同士は戦争しないという不文律があるからである。米国が中国にミサイルを撃ち込むと戦争は始まるが、そうなると核戦争となるので、それは起こらない。また、中国が台湾に自ら侵略戦争を仕掛けることも可能性が薄い。なぜなら米国覇権の衰退は中国にとっては周知の事実であり、米国は待っていれば覇権崩壊し、台湾を支援できなくなり、後ろ盾を失った台湾は中国との敵対をやめて、政治交渉しつつ中国の一部になるからだ。将来手に入る資産を中国がみすみす自ら攻撃を仕掛けて破壊するはずがない。また台湾は、米国にけしかけられても中国を軍事攻撃しない。攻撃したら中台戦争になり、台湾は諸都市を中国軍に破壊され、膨大な死者が出ることになる。もちろん、米軍や諜報界が台湾軍の中に、台湾軍の上官のいうことを聞かずに中国を攻撃する勢力をこっそり作り、その勢力が中国を攻撃して中台戦争を誘発することはありうるかもしれないが、台湾政府は米国を妄信せず、その手の準備をしてあるはずだから大丈夫だろう。
また、米国自身が中国を悪者にして戦争の大義名分を得る舞台作りにこれまでのところ失敗しているように見える。例えば2023年8月の日米韓のキャンプデービッド共同宣言においても中国の脅威を全く描けていない。1978年の米中共同声明から米国は一貫して、「一つの中国の原則を尊重する」としており(この点日本・韓国も同様)、今回の共同宣言においても「台湾に関する我々の基本的な立場(台湾は中国の一部であるという中国の意図を尊重)に変更はなく、我々は両岸問題の平和的な解決を促す」としている。つまり、理屈上、中国の台湾併合は何が問題なのかという問題になってくる。米国は何も反対していないということになる。(100541771.pdf (mofa.go.jp)
キャンプデービッド宣言の中では、南シナ海問題を挙げ、中国を「危険かつ攻撃的」としており、この問題で中国と対立するASEAN諸国との関係強化を謳っている。しかし、中国経済がASEAN諸国に対して与える影響力が既に大きく、ASEANは中国との対立を避けたい意向を持っているため、この問題も茶番に過ぎない。
2023年11月台湾総統の蔡英文「中国の台湾侵攻はない」と発言している。その理由として中国は内部の経済、金融、政治的な課題の対応に追われていることを挙げた。また、11月の米中首脳会議において習近平が「2027年、2035年に中国が軍事作戦を行う計画はない」という趣旨の発言をしたことも引き合いに出している。(中国、国内問題多く侵攻考えられない状況 台湾総統が見解 | ロイター (reuters.com)
 
その一方で米国は台湾軍に戦闘機の部品を供給したり、数十人規模の米軍を軍事顧問として駐留させたり、台湾フェローシップと称して米政府職員を台湾の立法機関に派遣している。(【解説】 アメリカが静かに台湾を徹底武装させていく - BBCニュース)
アメリカはこういった動きを対中挑発として行っている。中共はこれを共同声明違反として怒り、正当防衛として中国軍が台湾近海で軍事演習をする。このような一触即発の事態が進むが、実際には戦争は起こらない。ではなぜ、アメリカはこのような挑発を繰り返すのか。
それは、アメリカ側に中国の多極化を推し進めたい人間がいるからだと推察する。米国が台湾を使って中国を挑発し続けると、中国は苛立ち、早く米国覇権を崩壊させようとする。米国を崩壊させるのは戦争ではなく、ドル崩壊の誘発とか、プーチンが始めたBRICS+の新経済圏の確立を急ぐのがよい。だから、中国はロシアとの結束を強めつつ、サウジアラビアとイランの和解を仲介するなど、多極化の流れを強化しようとしている。中国は米国が債権崩壊する前に米国債も静かに売っている。中国は戦争なんかしない。米国から敵視され戦争を挑発されるほど、多極化と米金融崩壊の誘発を加速させる。米国の一部の資本家は米国崩壊を早め、世界を早めに多極化させることで自分たちの利益が最大化すると信じて、敢えてこのようなことをしているように感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?