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宇宙がくれた秘密【ショートショート】

あ~、今日も眠いなー。


授業前、まぶたの開き具合から眠いことを再確認する。

「朝6時から1時間も走れば、眠くもなるよね。」

そうつぶやき、私は机の上に形ばかり教科書を準備する。

今日の朝練もハードだった。念入りなストレッチから始まり、ジョギングし、最後は筋トレだ。高校生の有り余る体力をもってしても、一日中元気で授業を受けるには運動量がハードすぎる。


今日は、前期最後の登校日。

みんな、夏休みに入るのがうれしくてそわそわしている。

そんな中、私はため息をつく。

放課後は暑い中また練習だし、来週からは合宿が始まる。憂鬱なことこの上ない。

今は、この授業の後の昼食だけが楽しみだ。

「売店でクッキーメロンパン買おっかな、それともやっぱり学食でカツ丼かな~」

脳内が食べ物で一色になったところで、教室に先生が入ってきた。


「遅くなってすいません~、授業を始めます」

地学の梨木先生は、おっとりとした、小さな熊みたいなおじいちゃん先生だ。

急いで来たのだろう、ふうふういいながらハンカチで汗をぬぐっている。


「今日は、ビデオを見ます~」


先生がそう言うと、教室には小さな歓喜の声が広がった。

もちろん私もその一人だ。


寝れるやん!!!


本当に失礼ながら、「ビデオ学習」と聞いた瞬間、この授業で寝ることが確定した。女子高では、寝ることは恥ではないのだ。


午後に備えて、体力を蓄えることにしよう。

そう思って寝る態勢を整えると、5秒も経たないうちに、眠りに落ちた・・・。


****************

ふと目が覚めて画面を見ると、何やら緊迫した状況。

どうやら、大事故に見舞われた宇宙飛行士のドキュメンタリーらしい。

回想シーンでは、寒さに震えながら、懸命に対処を試みる宇宙飛行士たちの様子が再現されていた。

さっきまでの眠気はすっかり吹き飛び、画面に釘づけになる。


酸素や水も少なくなり、どんどん絶望的な状況になる機内。

そんな中でもリーダーシップをとり、軌道修正を続ける船長。


「どうなっちゃうの?!」ハラハラしながら、行方を見守る。


そして・・・ついに海上に着水。地球に帰還した。


その後インタビューで、泣きながら当時を思い出す船長。

「あきらめなかった・・・最後まで・・・」


感動で、私は涙をこらえられなくなっていた。あたりをふと見渡すと、なんと全員寝ている。いつも真面目に授業を受けている子までだ。

後ろを振り返ると、一人だけ起きている子と目が合った。

普段はあまり喋らない、菜穂ちゃん。そして、私と同じように涙を流している。

もう一人目頭を熱くしている人がいた。梨木先生だ。

菜穂ちゃんと私、そして梨木先生。

じりじりと暑い夏の、3人だけの秘密。




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