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森を傷つけないように伐る、とは?

2024/4/28 にアップした「木を伐るときに考えたい優先順位」では、安全性と品質の優先順位をどう考えればよいのかについて、ひとつの考え方を示しました。

優先順位の3番めに「Keep quality of forest(森を傷つけないこと)」を挙げましたが、ここをもう少し掘り下げてみたいと思います。

例えば間伐作業の際には残存木の保護や土壌の保護に配慮することになりますが、全ての樹木・林地を傷つけないで施業することは不可能です。これは「コストをかければできなくもないが林業経営のなかでは現実的ではない」という意。

建物や道路などの側で伐採する場合、保全対象の保護のために特殊伐採(高所伐採)のコストをかけることができます。しかし、純粋な林業(木材生産)のためにそのコストをかけたとしても、リターンは見込めません。

リターンの見込めない人為の介入の繰り返しは森林経営を圧迫し、結局何をしたかったのかわからないまま破綻してしまいます。

では「全ての樹木・林地を傷つけないで施業することは不可能」なのであれば、どうすればよいのか?

そこで提案したいのが、施業前に傷つけてはいけない優先順位を決めて、リストを関係者間で共有しておくことです。

例えば、その林分の管理目的の優先順位が「1生産・2生物多様性・3防災・4景観」なのであれば、傷つけてはいけない優先順位リストは以下のようになります。

1.将来木(良質の大径材を育成したいとき)
2.その林分で稀少な種類の樹木
3.亜高木層の木(林分安定性のために構造を複雑化したいが、現状はほとんど高木と稚樹しかないという場合)
4.その他の残存木

つまり1を保全するためには、2以降は場合よっては傷をつけても仕方がない、2を保全するためには(〜以下同様)、とするのです。林地については、更新を期待したい樹種によっては多少の林地の撹乱は必要な場合もあったりします。

結論:粗放か保護かという二者択一に陥らず、コストバランスと常に相談しながら保護の優先順位を決めましょう。ただし、管理目的(我々はその森から何を得たいのか、複数あるのであれば優先順位はどうか)が決まらないと、これらのことは決められません。

このような設定と準備もフォレスターの役割と言えるでしょう。

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