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沖縄「やんばるのテーマパーク」に注目

2021年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部及び西表島」として世界自然遺産に登録され、昨年(2022年)には、朝ドラ「ちむどんどん」の舞台にもなった沖縄の「やんばる」にテーマパークを作る計画があるのをご存じですか?

「V字回復のカリスマ」森岡毅氏が手掛ける「やんばるのテーマパーク」

2023年2月7日に、
沖縄本島北部のゴルフ場跡に建設が計画されている
「沖縄北部新テーマパーク」の起工式がありました。
手掛けるのは、
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や丸亀製麺の業績をV字回復させた著名なマーケターの森岡毅氏です。

実は、やんばるのテーマパークは当初、森岡氏が執行役員をしていたUSJの事業として、2014年頃に構想されていましたが、親会社が変わったUSJ の方針転換で2016年に断念した経緯があります。

その後、USJを退職、独立した森岡氏が再チャレンジ、
まさに捲土重来です。

USJの沖縄進出検討をスクープした沖縄タイムス紙面=2014年7月

「沖縄北部新テーマパーク」の概要は?

起工式は済んだものの、テーマパークの概要はまだ何も公開されていません。わかっていることは…

「沖縄の自然をパークの随所に取り入れた体験づくりを提供する」
「例えば都会に住む人が、システムから解放され人間らしく本能に刻むような体験ができる」    …運営主体のジャパンエンターテイメント 加藤健史代表

建設地は、今帰仁村と名護市にまたがるオリオン嵐山ゴルフ場跡地
「空と自分の目の前しか見えないという没入感を演出しやすい奇跡的な場所」で、沖縄の森を存分に楽しめる立地

開発に必要な資金は 600億~700億円で 国内企業を中心に調達済み
沖縄を代表するオリオンビール、リウボウ、ゆがふホールディングスの3社や近鉄グループホールディングスなどが事業参画

今回、着工するのは、ゴルフ場跡地の敷地面積120ヘクタールのうち、56ヘクタールのみで、第1期工事という位置づけ

沖縄タイムス 23年2月8日朝刊の記事より抜粋

と、中身が全く分からない状態ですが、

昨年4月、ホリエモンとの対談では、

沖縄にはハワイに勝てるだけのポテンシャルがある」

「沖縄を中心とした飛行機で3~4時間の円の中には、
3億人
が住んでおり、しかも経済発展が著しい地域がたくさんある」

外国人は森のある自然の風景が好きで、沖縄は自然資源が豊富」

やんばるの森は外国人にとって魅力的だが、まだまだ未活用」

「今の沖縄は3,4日で充分、お金持ちがお金を落とせるところが少ない

「コンクリートの見える施設ではなく、自然を体験したい
でもサバイバルがしたいわけではない…というニーズ
に応える」

「沖縄の北部にもう一泊したくなり、沖縄の地元が儲かる構図をつくる」

といったような話が出ていましたから、
豪華なホテルを中心とした人工的なリゾート施設ではなく、
自然を活かした体験型の施設になるのは間違いないと思っています


日本のアドベンチャーツーリズムの試金石になる予感

2023年2月6日の日経新聞に
「自然で稼げぬ 過保護な日本 アドベンチャーツーリズム、70兆円市場に出遅れ」という記事が掲載されました。

記事によると…

自然や文化を体験する「アドベンチャーツーリズム」の全世界の市場規模は、18年で70兆円、コロナ前の推計では 23年には130兆円と試算
100人のクルーズ客の経済効果を4人で達成できるとされ、今では世界の観光の大きな潮流のひとつに育った。

一方、日本は、観光庁資料で、主要9カ国中7カ国が「アドベンチャーツーリズムで一番訪れたい国」のトップに挙げた日本にもかかわらず、
そもそも試算できるだけの市場がまだできていない
最大の原因は、自然を活用する発想の欠如
自然の「保護」を重視するあまり、観光資源として生かせていない

2007年エコツーリズム推進法が成立したが、
所管する環境省は観光のノウハウがなく、推進派の観光庁は逆に自然保全の知見を持たず、「縦割り」が活用を阻んでいる
安全確保や自然保護などのルールも不備で、若いガイドや外国語が話せるガイドも常に不足(国内ガイドの平均年齢は66.7歳)

2023年2月6日 日経新聞朝刊 17ページより抜粋・引用

記事にある通り、日本のリゾートは、

せっかくの自然の中に、コンクリートで作った異国の街や近未来的な街をドーンと作り上げ、都会的なリゾート気分を味わうか、

逆に「貴重な自然を守る」という錦の御旗の下で過保護にされた自然に、極端な入山規制などの中、修行僧の様な心持で恐る恐る入らせていただく的なものが多く、

我々が海外のリゾートで体験するネイチャーアクティビティようなフランクで心から楽しむような体験は、なかなかできない気がします。

今回のやんばるのテーマパークは、
「アドベンチャーツーリズム」というワードは出てきませんが、
物見遊山的な短期滞在型ではなく
「沖縄の自然、森を存分に楽しむ、体験づくりを提供」
「都会に住む人が、システムから解放され人間らしく本能に刻むような体験ができる」というコンセプトは、
まさに「アドベンチャーツーリズムそのもの」の気がします

地元が潤うアドベンチャーツーリズム

都会的なリゾート施設は、
たいていが中央資本(または海外資本)であり、
修行僧的?体験型リゾートは、なぜかたいていが
民宿かそれに毛が生えた程度のホテルに泊まり、
ささやかなガイド料やおにぎり弁当程度のお金しか地元に落ちない

一方、先の日経記事によれば

アドベンチャーツーリズムの旅行消費額が地域に残る割合は65%
クルーズ客などのマスツーリズム(14%)の4.6倍に上る。 

2023年2月6日 日経新聞朝刊 17ページより引用

その意味で、アドベンチャーツーリズムを指向した今回の「やんばるリゾート」に注目しています。

ステレオタイプな沖縄観光である
2泊3日、恩納村のリゾートホテルに泊まり、
日帰りでの美ら海水族館が北限で、
あとは2つ3つの観光スポットを巡って、
グルクンの唐揚げとゴーヤチャンプル、沖縄そばを食べて、
紅芋タルトをお土産に買って帰る
(2,3回行ったら、沖縄はもういいかな)…から、

恩納の関?!を越えて
北部に泊まって、やんばるで体験型のリゾートを楽しみ、お金を落とす(非日常を味わうためにまた来たくなる)…
そんなスタイルが広がるかどうか?

沖縄の中でも雇用が少なく、所得水準が低く、高齢化が進む北部地区の活性化につながるか?

森岡氏の構想では、今回は第1期工事という位置づけで、
ここで成功し、新たなコンテンツも投入したテーマパークの拡張も視野に入れているそうです。

アドベンチャーツーリズムに、地方再生の可能性を感じる

日本の課題のひとつが、
東京集中の構図から、自立した地方創生であり、
その延長線上に、少子高齢化による歪の是正など諸問題解決の道筋があると思います。

政府は地方移住支援として子育て支援金の増額をしたり、地方自治体も移住者に無償で住宅を貸与したりと様々な手を打っていますが、一時的な援助や支援だけでは、効果は限定的ではと思っています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230108/k10013944471000.html

なにより大切なことは、
地元に多様な雇用が生まれ、地方で多様なライフスタイルが実現でき、
その結果として地方経済がきちんと循環できる構造を再構築することだと思っています

国土の2/3が森林で、様々な自然資源と、歴史的遺跡や伝統的な文化、風習があり、その土地でなければ味わえない食があり、なによりおもてなしの心がある日本にとって、アドベンチャーツーリズムは地方再生、地方創生のカギを握っていると、私は思っています。

そして、誰も振り向くことも無く、見捨てられていく「地元」ではなく、
世界中から訪れてくれる人がいる「地元」であれば、
地元にプライドを持てるようになり、それが何よりの地方再生のモチベーションになるのでは…と思っています。

その意味で、やんばるのテーマパークには注目しています

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