ゲームデザインドキュメントを書きはじめて、思ったこと。
「わたしは天才なので、ゲームデザインの本なんて読まなくても、デザインできる」と思ってから、はや10年。結局自分のデザインしたゲームは存在していないので、謙虚に本を読んでいる。
この本では、ゲーム制作において、ゲームデザインドキュメントを書くことを強くすすめている。
しかし、ゲームデザインドキュメント……、名前が長い。呼びにくい…。
だから、現場ではGDDと省略して読んでるらしい。なおさらわかりにくい……。
どんなものかというと、企画書と仕様書と設定集とかを全部合体させたものらしく、めちゃくちゃ長い辞典のようなテキストのことらしい。
宮本茂のゲームデザインドキュメントは書類1枚
宮本茂さんの天才っぷりがよくわかるエピソードだと思うけど、宮本さんのゲームデザインドキュメントは書類1枚。
『辞典』VS『1枚』の差には笑ってしまうが、インタビューを読んでいくと、ゲームデザインドキュメントが1枚のかわりに、宮本さんは現場に付きっきりで指揮をとっていることがわかる。
最初にデザインを決めちゃうんじゃなく、必要なものがでてきたら、その都度、担当者と対話してデザインしていく作り方なので、1枚で済んでいるようだ。
わたしもそういうゲームの作り方ができるなら、ぜひ1枚で終わらしたいところだけど、わたしは一人で色々やらなくちゃいけないので、おそらく作っておいたほうがいいんだろうなと思い、ちまちま書いてる。
一人カキフライこと、ゲームデザインドキュメント
書いてて、まず思ったのは、「たぶん自分以外誰も読まない」だ。
つまり、他に読んでもらうあてがないので、かなり好き勝手に書いている。
今回のカードゲームは、わたし一人ではなく、イラストレイターと、アートデザイナーに手伝ってもらうのだけど、イラストレイターには、イラストレイター用の資料を用意してるし、デザイナーに頼むときも、おそらく別途用意することになる。
だって、長い文章なんて読みたくないでしょ…。
そもそも「このゲームのイラスト(デザイン)をお願いします」って、一冊の本を渡したら、引かれない?
だから、なるべくテキストは少なくして、作る。
これが会社だったら、気にせず、「仕事だ、おらぁ! 読書タイムのはじまりだぜ」と一冊分を押し付けるんだろうけど、個人が個人にお願いするとなると、一冊分を押し付けるなんて、怖くてできない。
もったいないとか、無駄なことだとか、思わなくもないけど
YO-KINGの「遠い星と近くの君」という曲に、すてきな一節がある。
誰にもわかるはずないだろ
君にだけは味方でいて欲しい
僕の言うことに耳を傾けてくれ
誰にもわかるはずがないこと
もったいないとか 無駄なことだとか
僕は思わない 決して思わない
重たい、重たいけど美しい。
いま作ってるゲームを、どうして作りたいのか、どこがおもしろいのか、何が新しいのか、言語化できないわけじゃない。
でも、言語化したからといって理解してもらえるわけでもない。
やっぱりそれは作って遊んでもらって、わかってもらうしかないのだ。
ただ「理解してもらえなさそうなことを、形にしてみたら理解してもらえるかもしれない」というスケベ心は、ゲームに限らず、小説でも、絵でも、音楽でも、なんでもそうだが、創作の原動力になる。
だから、カイヨワの遊びの4類型から考えるパーティーゲーム論からはじまるゲームデザインドキュメントなんて、誰も読まないだろうと思いながら書く。
書けば書くほど、重たくなって、誰も読まなくなる。
饒舌になるほど、無駄が増え、より使い物にならなくなっていく。
孤独の長文だ。なんて、わびしさだ。
そもそもゲームデザインドキュメントの方向性を間違えているのかもしれない。
ドキュメントは何に書くか、何を目的としてるかで、ぜんぜん違うものになる
今回書いてる無駄に長いゲームデザインドキュメントは『ゲームメカニクス』に書いてあった要件を満たすために、グーグルドキュメントで作っている。
・ゲームデザインを変えたり、追加するごとに更新すること
・デザインプロセスを文章化していくことが重要
・デザインを文章化する習慣を身につける
以上の要件から「とにかく書け」というニュアンスを読み取ったので、一番文章を書きやすいプラットフォームを選んだ。
ただ、実は『ゲームメカニクス』を読む前から、ゲームデザインの文章化は行っている。
まず最初に作ったテキストは、Googleスプレットシートだ。
Google版のエクセルみたいなアプリで、電卓として使えるので、最初の予算組がしやすかった。
どれくらいの予算が必要で、どれくらい売上があれば、赤字にならないのかを計算してからはじめたので、初動がスプレットシートになった。
そのあと、アイディアごとにタブを作って、箇条書きで書き連ねていった。
正直、ゲームデザインのおおまかなところは、ほとんどスプレットシートに書かれてある。
進捗管理なんかも、スプレットシートで行うので、もう実はスプレットシートでいいんじゃないか、という気もする。
次にGoogleスライドで、いわゆる企画書というものを作った。
Googleスライドは、Google版パワーポイントみたいなアプリ。
個人制作かつ自費制作だから、企画書なんかいらない! 俺は誰にもゴマをすらないぞ! と思ってたんだけど、イラストレーターに仕事の依頼をするために、即行でゴマをすった。
今回、お願いしたイラストレーターは、別にゲーム業界の人でもないので、なるべくオタク臭くならないように書いた。
こんな感じのを5枚。
一応、イラストレーターは仕事を受けてくれたので、企画書としては、機能したようだった。
最初、スライドを100枚作れば、ゲームデザインドキュメントになるのでは? と思ったんだけど、やっぱりスライドはテキストに向いてないので、Googleドキュメントに移行した。
まとめ
ゲームデザインドキュメントは、ゲームのあらゆることが書かれたテキストで、書類1枚のこともあるし、数百枚のこともある。(一般的には数百枚のことのほうが多い)
ゲームデザインドキュメントについての詳しい解説や、便利なテンプレートはこの本↓に書いてあるらしい。(なお、日本語訳はない)
ゲームデザインドキュメントで、自分にしかわからないようなマニアックな部分を書いてると、わびしさがすさまじい。
他人向けにわかりやすく書くと、内容は薄くはなるけど、実用的だし、気分も楽。
何で書くかで、結構内容が変わってくるので、使いやすいものを選ぶこと。
(そういえば、わたしが最初に入ったゲーム会社では、ゲームプランナーが、スタッフにゲームシステムや、世界観を話しながら、スケッチブックにイラストと文章で説明してたのを、あとでまとめてテキスト化していたな)
でも、結論から言えば、スプレットシートに書いた計画書のおかげでわたしはゲームを作りはじめることができて、スライドで作った企画書のおかげで、好きなイラストレーターに、イラストを発注できた。
ゲームデザインドキュメントを書いて手に入れたことは、いまのところ、わびしさだけである。
ただゲームデザインドキュメントが生きてくるのは、もっと先のことなのかもしれない。
たとえば、いま話題の『天穂のサクナヒメ』なんかは、制作に5年半かかったそうなので、そこまで長期戦を考えるなら、確実にゲームデザインドキュメントは書いておいたほうがいいだろうなとは思った。
以上。
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