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「緊急地震速報」って、連続で出たことあったっけ?【2021/10/7更新】

【はじめに】
この記事では、気象庁の発表する「 緊急地震速報(警報) 」が、2日連続など発表されるケースを振り返っていきたいと思います。

1.「緊急地震速報(警報)」の発表状況について

まず「緊急地震速報」について軽く触れておきましょう。今回の記事で取り上げるのは、「一般向け」とか「警報」とか呼ばれるもので、テレビなどで【緊急地震速報】として大々的に報じられるヤツです。

この記事を書くキッカケとなったのが、2021年10月6日の午前と午後に1回ずつ、全く異なる震源地で「緊急地震速報」が発表された事例です。過去にもあった記憶はあるけど、実際どれぐらいの頻度で起きるものなんだろうと纏めたことがなかったので、今回、記事にしてみたところです。

(↑)気象庁の公式ページなどに、過去の発表状況は一覧となっているのですが、私のような地震に興味のある人間でなければ紐解こうとは思わないと思うので…… 過去にはこんなこともあったよーぐらいに捉えて下さいませ。

(参考)警報の「平年値」は1~2か月に1回

今年5月に私が書いた記事で、「地震の平年値」なるものを考えています。

このページの中から、1つ画像を引用すると、過去13年での『平年値』は、『7~9回(~15回)』あたりとなりました。これに基づけば、大体1~2か月に1回「緊急地震速報(警報)」が出るのが普通という計算です。

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ただそう考えると、『多い』の上位では、かなり頻繁に緊急地震速報が発表されていたことが数値からもわかります。この前提を共有したもとで、過去の事例を見ていきましょう。

1.全く別の震源で、1日に2回「警報」

「全く別の震源で、1日に2回『警報』」というのは、2011年に2例あり、その後は、2013年と2021年と計2度発生していました。

(1)2011/04/19:秋田→茨城

04:14 4.9 5弱 秋田県内陸南部
06:33 4.8 3  茨城県沖

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(2)2011/05/11:千葉→宮城

04:22 4.2 2 千葉県東方沖
04:58 4.0 2 宮城県沖

(3)2013/04/17:三宅島→宮城

17:57 6.2 5強 三宅島近海
21:03 5.9 5弱 宮城県沖

「ニュース9」で、PM6時前の地震を報道していた時に「緊急地震速報」が発表されたことでも、当時話題になりました。

(4)2021/10/06:岩手→鹿児島 ←New

02:46 6.0 5強 岩手県沖
17:12 5.5 4  大隅半島東方沖

2.全く別の震源で、2日連続で「警報」

似たデータで「全く別の震源で、2日連続で『警報』」というのも合わせて調べてみました。2日連続5弱以上という例も2度あったことを、今回の記事を書きながら思い出しました。

(1)2011/07/31福島→08/01静岡

11/07/31 03:53 6.5 5強 福島県沖
11/08/01 23:58 6.2 5弱 駿河湾

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(2)2011/09/25福島→09/26北海道

11/09/25 03:12 3.2 2  福島県浜通り
11/09/26 16:49 4.2 4  日高地方中部

(3)2018/06/17群馬→06/18大阪

18/06/17 15:27 4.6 5弱 群馬県南部
18/06/18 07:58 6.1 6弱 大阪府北部

(4)2018/10/04千葉→10/05北海道

18/10/04 00:15 4.7 4  千葉県東方沖
18/10/05 08:58 5.2 5弱 胆振地方中東部

(5)2019/12/18沖縄→12/19青森

19/12/18 08:35 5.1 4  沖縄本島近海
19/12/19 15:21 5.5 5弱 青森県東方沖

(6)2021/10/06岩手他→10/07千葉

21/10/06 02:46 6.0 5強 岩手県沖
21/10/06 17:12 5.5 4  大隅半島東方沖
21/10/07 22:41 5.9 5強 千葉県北西部

2021年10月の事例では、「1日2回」を6日に記録していて、その翌日にも「警報」が出され、「2日連続、2日で3回」の発表となりました。そしてその3例とも過大評価ではなかった点も評価できると思います。

3.一連の地震活動で、1日に2回以上「警報」

(1)2008/06/14:3回「岩手・宮城内陸地震」

08:43 7.2 6強
09:20 5.7 5弱
12:27 5.2 4

(2-1)2011/03/11:3回「東日本大震災」

14:46 9.0 7
17:40 6.0 5強(出し遅れ)
19:35 5.1 4

(2-2)2011/03/12:15回「長野県北部地震」

「東北地方太平洋沖地震」に加え、「長野県北部」(栄村)などで最大震度6強を観測した地震も発生、1日では最多「15回」の警報が発表。このうち4時・6時・22時台には1時間で3回も警報が発表されました。

その後も、複数の地震を適切に処理できないことなどで、3月16日まで連日の様に「警報」が発表され、3月中だけで数十回を数えました。

(2-3)2011/03/13:2回
(2-4)2011/03/14:3回
(2-5)2011/03/15:4回「静岡県東部地震」
(2-6)2011/03/16:3回
(2-7)2011/03/19:5回
(2-8)2011/03/23:4回

(3-1)2011/04/11:4回「福島県浜通り地震」

福島県いわき市付近で起きた「福島県浜通り」の大地震(M7.0、震度6弱)は、夥しい余震が起き、警報が何度も発表されました。

17:16 7.0 6弱
17:26 5.4 5弱
18:05 5.1 4
20:42 5.9 5弱

(3-2)2011/04/12:5回「福島県中通り地震」

その翌日にかけても、福島県での地震活動は極めて活発で、14:07には、M6.4、最大震度6弱の地震が起きました。

この日の午前中、「千葉県東方沖」を震源とする震度5弱の地震が発生しましたが、それより先(14秒前)に起きた「福島県浜通り」の地震と分離がうまく行かず、「最大震度6強~7」という過剰な警報が出たりもしました。

(3-3)2011/04/14:4回(いずれも最大震度4以下)

(4-1)2016/04/14:3回「熊本地震(前震)」

2016年4月に起きた1回目の震度7の「熊本地震」では、翌日深夜に最初の地震とほぼ同規模(M6.4、6強)のものが起きるなど極めて活発でした。

16/04/14 21:26 6.5 7
16/04/14 22:07 5.8 6弱
16/04/14 22:38 5.0 5弱
16/04/15 00:03 6.4 6強

(4-2)2016/04/16:12回「熊本地震(本震)」

最初の震度7から28時間後の4月16日午前1時25分、2回目の震度7である「熊本地震(本震)」が起きました。

マグニチュード7.3ということもあり、震源地が複数にまたがりながら、合計12回もの「警報」が1日に発表されることとなりました。しかも、本震から僅か3時間(しかも午前1~4時という深夜)に6回(うち5弱以上5回)という頻度は、心身の疲労を高めるものだった事は想像に難くありません。

(5)2016/10/21:2回「鳥取県中部地震」

熊本地震の半年後に起きたものの、取り上げられることは殆ど無い「鳥取県中部」の地震でも、計2回「警報」が発表されました。被害は比較的軽微だったかも知れませんが、M6.6、最大震度6弱というスケールは、大きな被害が出てもおかしくないものでした。

14:07 6.6 6弱
14:53 5.0 4

(6)2018/09/06:2回「北海道胆振東部地震」

厚真町での大規模な土砂災害や北海道全島のブラックアウトが印象的な「北海道胆振東部地震」でも2回、警報が発表されています。

03:07 6.7 7
06:11 5.4 5弱

(7)2020/12/18:2回「新島・神津島近海」

18:09 5.0 5弱
20:36 4.6 4

4.「緊急地震速報」導入前の事例

ここまで見てきたのは「緊急地震速報(警報)」が導入された以降の十数年です。しかし、歴史地震の時代も含めれば、こうした事例は無数にあったと想像が付きます。今回は、時代を問わず、上記事例を大きく上回る様な事例をご紹介します。

①1707年「宝永地震」

1707/10/28 14時頃 7 巨大地震 「宝永地震」
1707/10/29 6時頃 7 大地震  「宝永富士宮地震」

3連動地震とされる南海トラフ巨大地震「宝永地震」の翌日には、静岡県の富士宮市付近で震度7相当、M7程度と想定される内陸地震が起きています。

②1858年「安政東海・南海地震」

1858/12/23 09:15頃 「安政東海地震」
1858/12/24 16:30頃 「安政南海地震」

いわゆる「半割れ」の過去のケースとなる「安政東海・南海地震」地震は、M8.5前後の巨大地震が「2日連続」で発生した事例となります。

③1923年「関東大震災」

1923年9月1日に起きた「関東大震災」は、観測網や観測データが完備されていない部分もあるため、全容を把握するのは容易ではないですが、

9月1日11時58分の本震(M7.9)からの半日だけで、関東一円を中心とした地域(半数以上は内陸)で、M6超の地震が10回以上も発生したそうです。

有志の方がYouTube上で「再現(訓練)動画」をアップしています。当時の地震の頻発ぶりを見て頂ければ、その地震活動の激烈さがお分かり頂けるかと思います。

④1965~1970年「松代群発地震」

ウィキペディアをして“世界的にも稀な長期間にわたる群発地震”と書かせた「松代群発地震」は、総地震数71万回、有感地震6万8千回、旧震度5が9回あり、地震によるノイローゼを発症する方まで居たといいます。

1966/04/17 10:21、15:46、20:28 いずれもM4.7、最大震度5

などであり、現在の「緊急地震速報」が当時もしあったならば、直近例とは桁違いの回数の警報が発表され、大混乱に陥っていただろうと思います。

⑤2000年「伊豆諸島北部群発地震」

2000年の夏に伊豆諸島で起きた群発地震で、総地震数は14,200回、気象庁の観測で、約2か月の間に6弱が6回、5弱以上で30回という極めて活発な地震活動が認められました。

当時はまだ緊急地震速報はなかったですが、三宅島の噴火活動などと共に、この地震のニュースは、連日のように繰り返し報道されていました。やはりこうした「群発地震」において、「緊急地震速報(警報)」は、その対応や取扱に注意が必要になるだろうと感じますね。

【おわりに】

「緊急地震速報(警報)」が1日に2回(以上)とか、2日連続ということは時折発生するものです。ただ大抵の人は数年前のことなんで覚えていないので、『最近起きていない』から不安に思ったりすることは往々にしてあるのだと思います。

偶然か必然か、関連性の有無などは現代の科学では分からないことが多いですが、だからこそ「そんなに極端に珍しいことではない、時々あることだ」と冷静に考えつつ、しっかりと物心両面から備えていくことが大事ではないかなと改めて思いました。


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